最強のオメガ勇者ですが、規格外のアルファ魔王に捕まって極上の溺愛魔力供給を受けています。〜絶対に屈しないはずが〜

水凪しおん

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第16話「王の陥落」

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 「死ね。魔族も勇者も、まとめて消え去れ」

 国王が絶叫すると、浮遊していた魔道具からどす黒い光線が乱射された。
 それは物理的な破壊力だけでなく、触れたものの魔力を腐らせる呪詛を含んでいた。
 床が溶け、石柱が飴のように捻じ曲がる。
 だが、その程度の攻撃で止まる二人ではなかった。

 「遅い」

 レオは残像を残すほどの速さで光線を回避し、壁を蹴って宙を舞った。

 「小僧が。ちょこまかと」

 王がレオに狙いを定めるが、その瞬間、視界が真っ黒に塗り潰された。

 「よそ見とは余裕だな」

 目の前に、魔王ベリアルが立っていた。
 防御魔法など展開していない。素手で光線を弾き飛ばしながら、悠々と歩を進めてきたのだ。

 「ひっ……」

 「貴様のその玩具、魔力の質が悪すぎる。腐った卵のような臭いだ」

 ベリアルは眉をひそめ、無造作に腕を振るった。
 暴風。
 ただの空気圧で、浮遊していた魔道具の半分が粉々に砕け散った。

 「なっ、馬鹿な。古代兵器だぞ」

 「兵器など、使う者の器次第だ。貴様のような小物が持ったところで、ただのガラクタに過ぎない」

 ベリアルの一歩ごとに、床に亀裂が走る。
 圧倒的な格の差に、王は腰を抜かして玉座から転がり落ちた。

 「来るな。来るな化け物」

 「化け物は貴様だ。民を捨て、土地を汚し、己の欲望のみに生きる。それを魔道では『外道』と呼ぶ」

 ベリアルが王の喉元に手を伸ばそうとした、その時。

 「ベリアル。待ってくれ」

 レオが空から舞い降り、二人の間に割って入った。

 「……レオ?」

 ベリアルの手が止まる。
 レオは聖剣を構えたまま、震える王を見下ろした。

 「俺がやる。約束したはずだ」

 「……そうだったな。良かろう、任せる」

 ベリアルは一歩引き、腕を組んで見守る姿勢に入った。
 レオはゆっくりと剣を振り上げた。
 王は涙と鼻水を垂らしながら、地面を這ってレオの足元に縋りついた。

 「ま、待てレオ。私は王だぞ。お前の主君だ。命だけは……財宝も、地位もやる。だから」

 「……あんたは、もう王じゃない」

 レオの声は静かだったが、そこには深い悲しみが宿っていた。

 「王とは、民を守るためにその身を捧げる者のことだ。あんたは、その誓いを自ら破った」

 「ち、違う。全ては国のために……」

 「嘘をつくな」

 レオの一喝が広間に響いた。

 「自分のために世界を壊そうとした。それが真実だ。……かつてのあんたは、もっと立派だった。俺はその背中を尊敬していたんだ」

 レオの脳裏に、幼い頃に見た王の姿が浮かぶ。
 優しく、厳しく、民のために奔走していた若き日の王。
 どこで狂ってしまったのか。権力という魔物が、人の心を食い尽くしてしまったのか。

 「……さよならだ、陛下」

 レオは剣を振り下ろした。
 だが、その刃は王の首を刎ねることはなかった。
 代わりに、王が隠し持っていた最後の増幅炉、胸元のペンダントを一刀両断にした。
 乾いた音がして、紫色の宝石が砕け散る。
 同時に、王の身体から黒い靄が抜け出ていき、彼は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 「あ……ああ……力が、抜けていく……」

 王は老人のような声で呻き、そのまま意識を失った。

 「殺さないのか?」

 ベリアルが問いかける。
 レオは剣を鞘に納め、静かに答えた。

 「殺す価値もない。力を失ったただの老人だ。後は、国民の法で裁かれるべきだ」

 それが、レオなりの王の責務を果たさせるという答えだった。
 私刑ではなく、法による裁き。それが人間界の秩序を守るための、勇者としての最後の仕事だ。

 「フッ……甘いな。だが、そこがお前らしい」

 ベリアルは満足そうに笑い、レオの頭を優しく撫でた。

 「よくやった、レオ。見事な決着だ」

 その言葉に、レオの張り詰めていた糸が切れ、膝から崩れ落ちそうになった。
 それをベリアルの太い腕がしっかりと支える。

 「疲れたか」

 「……ああ。なんか、どっと来た」

 レオは魔王の胸に顔を埋めた。
 全て終わった。
 長い長い戦いの日々が、今、幕を下ろしたのだ。
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