異世界転生した社畜、瀕死でオメガ覚醒。氷の鬼神な騎士団長に見初められ、執着溺愛ライフを送る

水凪しおん

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エピローグ「永遠を誓う瑠璃色の瞳」

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 アレンが五歳の誕生日を迎えた、夏の日。

 ヴァルモニカ家の庭園では、ささやかながらも温かいパーティーが開かれていた。主役であるアレンは父親そっくりの銀の髪を風になびかせながら、元気に庭を駆け回っている。

「アレン、転びますよ」

 フィンが穏やかな声で呼びかけると、アレンは振り返り母親譲りの茶色い瞳を輝かせた。

「大丈夫だよ、母様!父様みたいに、強くなるんだ!」

 そう言って、彼は木の枝を剣に見立ててぶんぶんと振り回す。その姿は、幼いながらも確かにアルファとしての覇気を感じさせた。

 フィンはそんな息子の成長を、感慨深く見つめていた。あの日、死の淵でオメガとして覚醒しゼイドと出会ってから、もう六年もの歳月が流れたのだ。

「何を見ているんだ、フィン」

 いつの間にか隣に来ていたゼイドが、フィンの肩を優しく抱いた。彼の瑠璃色の瞳は、昔と変わらずフィンだけを映している。

「アレンも、大きくなったなと思いまして」

「ああ。生意気な口をきくようになったがな。最近は、『母様は僕が守る!』などと言って、俺を牽制してくる」

 ゼイドは心底不満そうに言うが、その口元は緩んでいる。息子が自分と同じようにフィンを大切に思うことが、嬉しくてたまらないのだ。

「あなたに似たんですよ」

 フィンがくすくす笑うと、ゼイドはフィンの耳元に顔を寄せ囁いた。

「お前は、今でも十分に美しいが……二人目の子は、まだ考えてくれないか?今度は、お前にそっくりな、オメガの娘がいい」

「もう……気が早いですよ」

 フィンは顔を赤らめながらも、その提案を否定はしなかった。この幸せな家族がさらに賑やかになる未来を想像すると、自然と心が温かくなる。

 前世では仕事に追われ、愛を知らずに死んでいった。転生した当初は、ただ平穏に生きることだけを願っていた。

 だが、今は違う。

 愛する夫がいる。愛する子供がいる。守りたいものがあり、守ってくれる人がいる。これ以上ないほどの幸福が、ここにある。

「フィン」

 ゼイドが、真剣な声でフィンの名を呼んだ。

「俺は、お前と出会えて、本当に幸せだ。この命尽きるまで、いや、たとえ生まれ変わったとしても、俺はお前を探し出し、必ず番になろう」

 その言葉は、彼の魂からの誓いだった。

 フィンは、ゼイドの胸に顔をうずめ力強く頷いた。

「はい。俺もです、ゼイド様。永遠に、あなたのそばに」

 遠くで、アレンが「父様、母様、早く来て!」と二人を呼んでいる。

 二人は顔を見合わせて微笑むと、愛する息子の元へとゆっくりと歩き出した。

 氷の鬼神と呼ばれた男は、その腕に唯一無二の番と愛の結晶である子供を抱き、永遠に続く幸福な時間をただ愛おしんでいた。瑠璃色の瞳に映るのは、どこまでも続く穏やかで光に満ちた未来だった。
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