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番外編1「冷たい仮面の告白」
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(ミカエル視点)
リオンが情報部に配属された、あの日を、私は生涯忘れないだろう。
人事資料に目を通した時から、彼の類稀なる才能には気づいていた。だが、実際に彼を目の前にした瞬間、私は言葉を失った。全身の血が、歓喜に打ち震えた。探し求めていた、私の半身。私の、運命の番。それが、彼だと、本能が叫んでいた。
柔らかな栗色の髪。大きな、少し不安げな瞳。そして、他のどのオメガとも違う、心を蕩かすような、甘い香り。
その瞬間、私の内なるアルファは、彼を腕の中に閉じ込め、誰にも渡さないと、激しく主張した。
しかし、私の理性は、それを全力で否定した。
私には、帝国の闇と戦うという、使命があった。腹違いの兄である現皇帝の座を虎視眈眈と狙う、宰相をはじめとした敵対勢力。私の傍にいれば、この無垢で才能豊かなオメガは、必ずや彼らの格好の標的となるだろう。私の最大の弱点として、利用されるに違いない。
彼を愛している。愛しているからこそ、彼は、私の世界にいてはならない存在だった。
その日から、私の苦悩に満ちた日々が始まった。
私は、彼を守るために、彼を憎む男を演じることを決めた。冷たい仮面を被り、心にもない言葉で、彼を傷つけ続けた。
「オメガは無能だ」
そう吐き捨てるたびに、私の心は、ナイフでえぐられるように痛んだ。本当は、彼の才能を誰よりも信じていた。彼の作り上げる報告書の、その完璧さに、いつも舌を巻いていた。褒めてやりたい。その頭を撫で、よくやったと、微笑みかけてやりたい。その衝動を抑えるのに、どれほどの精神力が必要だったか、誰にもわかるまい。
彼が、私の言葉に傷つき、瞳を潤ませる姿を見るのは、地獄の苦しみだった。その度に、全てを打ち明け、彼をこの腕に抱きしめたいという欲望と戦わなければならなかった。
だが、私は耐え抜いた。彼が、私を憎み、この職場を去り、私の手の届かない安全な場所で生きてくれることだけを、ただひたすらに願って。
しかし、運命は、皮肉なものだ。
あの襲撃事件の日。テロリストの襲撃予告が入った時、私は、これを利用して、彼を情報部から完全に遠ざけようと考えた。作戦から彼を外し、彼に無力感を味わわせることで、自ら辞職の道を選ばせる。それが、私の描いた筋書きだった。何と、愚かだったのだろう。
爆発が起こり、彼が瓦礫の下敷きになりかけているのを見た瞬間、私の全ての理性は、焼き切れて蒸発した。
気づいた時には、彼を庇って、その身を腕に抱いていた。温かい血が、背中を流れていく。だが、痛みなど、全く感じなかった。腕の中で、呆然とする彼のか細い温もりだけが、私の全てだった。
もう、偽ることはできない。
もう二度と、この手を離すものか。
たとえ、世界中を敵に回すことになっても、この命に代えても、彼を守り抜く。
冷徹な仮面の下で、愛する人を守るために続けていた、孤独な戦い。それは、あの日、終わりを告げた。
そして、彼をただ一心に愛し、求め、守るための、新しい戦いが始まったのだ。
リオン、私の光。私の、唯一の番よ。君が私の隣にいてくれるのなら、私は、どんな闇とも戦うことができるだろう。
リオンが情報部に配属された、あの日を、私は生涯忘れないだろう。
人事資料に目を通した時から、彼の類稀なる才能には気づいていた。だが、実際に彼を目の前にした瞬間、私は言葉を失った。全身の血が、歓喜に打ち震えた。探し求めていた、私の半身。私の、運命の番。それが、彼だと、本能が叫んでいた。
柔らかな栗色の髪。大きな、少し不安げな瞳。そして、他のどのオメガとも違う、心を蕩かすような、甘い香り。
その瞬間、私の内なるアルファは、彼を腕の中に閉じ込め、誰にも渡さないと、激しく主張した。
しかし、私の理性は、それを全力で否定した。
私には、帝国の闇と戦うという、使命があった。腹違いの兄である現皇帝の座を虎視眈眈と狙う、宰相をはじめとした敵対勢力。私の傍にいれば、この無垢で才能豊かなオメガは、必ずや彼らの格好の標的となるだろう。私の最大の弱点として、利用されるに違いない。
彼を愛している。愛しているからこそ、彼は、私の世界にいてはならない存在だった。
その日から、私の苦悩に満ちた日々が始まった。
私は、彼を守るために、彼を憎む男を演じることを決めた。冷たい仮面を被り、心にもない言葉で、彼を傷つけ続けた。
「オメガは無能だ」
そう吐き捨てるたびに、私の心は、ナイフでえぐられるように痛んだ。本当は、彼の才能を誰よりも信じていた。彼の作り上げる報告書の、その完璧さに、いつも舌を巻いていた。褒めてやりたい。その頭を撫で、よくやったと、微笑みかけてやりたい。その衝動を抑えるのに、どれほどの精神力が必要だったか、誰にもわかるまい。
彼が、私の言葉に傷つき、瞳を潤ませる姿を見るのは、地獄の苦しみだった。その度に、全てを打ち明け、彼をこの腕に抱きしめたいという欲望と戦わなければならなかった。
だが、私は耐え抜いた。彼が、私を憎み、この職場を去り、私の手の届かない安全な場所で生きてくれることだけを、ただひたすらに願って。
しかし、運命は、皮肉なものだ。
あの襲撃事件の日。テロリストの襲撃予告が入った時、私は、これを利用して、彼を情報部から完全に遠ざけようと考えた。作戦から彼を外し、彼に無力感を味わわせることで、自ら辞職の道を選ばせる。それが、私の描いた筋書きだった。何と、愚かだったのだろう。
爆発が起こり、彼が瓦礫の下敷きになりかけているのを見た瞬間、私の全ての理性は、焼き切れて蒸発した。
気づいた時には、彼を庇って、その身を腕に抱いていた。温かい血が、背中を流れていく。だが、痛みなど、全く感じなかった。腕の中で、呆然とする彼のか細い温もりだけが、私の全てだった。
もう、偽ることはできない。
もう二度と、この手を離すものか。
たとえ、世界中を敵に回すことになっても、この命に代えても、彼を守り抜く。
冷徹な仮面の下で、愛する人を守るために続けていた、孤独な戦い。それは、あの日、終わりを告げた。
そして、彼をただ一心に愛し、求め、守るための、新しい戦いが始まったのだ。
リオン、私の光。私の、唯一の番よ。君が私の隣にいてくれるのなら、私は、どんな闇とも戦うことができるだろう。
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