5 / 13
第4話「閉ざされた執務室の中で」
アレクセイの銀色の髪が、僕のシャツ越しに触れている。
彼の呼吸に合わせて、僕の腹部に温かい空気が当たる。
信じられない光景だった。
あの冷酷無比で知られる宰相閣下が、まるで親に甘える子供のように、あるいは傷ついた獣が休息を求めるように、僕に寄りかかっているのだから。
僕はどうしていいか分からず、両手を空中に彷徨わせたまま固まっていた。
「動くな」
くぐもった声が、腹のあたりから響く。
「このまま……少しだけ、じっとしていろ」
命令口調だが、そこには懇願に近い響きが含まれていた。
僕は意を決して、ゆっくりと息を吐き出した。
拒絶しても無駄なら、受け入れるしかない。
それに、不思議と嫌悪感はなかった。
彼の匂い――深く冷たい森のような香り――が、至近距離で僕を包み込む。
昨夜のような恐怖はない。むしろ、その香りは僕のオメガとしての本能を刺激するどころか、不思議と安心させてくれるようだった。
「……閣下は、いつもこうして我慢しておられたのですか」
思わず、口をついて出た言葉。
不敬だったかもしれないと後悔したが、アレクセイは怒らなかった。
「……慣れている」
彼は顔を埋めたまま答えた。
「雑音も、悪意も、すべて切り捨ててきた。だが、最近は……限界が近かったのかもしれん」
彼の言葉の端々に、隠しきれない疲労が滲んでいる。
この国の頂点に立つ男。
誰もが恐れ、敬う存在。
けれど、その実態は、あまりに強すぎる力を持て余し、孤独に耐え続ける一人の人間だった。
僕は無意識のうちに、空中に浮かせていた手を下ろし、そっと彼の頭に触れた。
銀糸のような髪は、見た目通り滑らかで、驚くほど柔らかかった。
アレクセイの身体がピクリと反応する。
怒られるかと思ったが、彼は抵抗しなかった。むしろ、僕の手のひらに押し付けるように、頭を預けてきた。
『まるで、大きな猫みたいだ……』
そんな不謹慎な感想が頭をよぎる。
彼の呼吸が深く、ゆっくりとしたものに変わっていく。
僕もまた、彼のリズムに合わせるように呼吸を整えた。
窓の外から聞こえてくるはずの衛兵の掛け声や、鳥のさえずりも、この部屋の中では遠い世界の出来事のようだ。
ここには、僕と彼だけの時間が流れている。
「……お前の匂いは、静かだ」
しばらくして、アレクセイがつぶやいた。
「薬草の苦味と、その奥にある……甘い花の香り。それが、私の頭の中の嵐を鎮めてくれる」
甘い花、と言われて心臓が跳ねる。
それは僕が隠し続けてきたオメガの香りだ。
本来なら恥ずべきもの、隠すべきものとして生きてきた。
けれど、彼はそれを「静かだ」と言って必要としてくれる。
そのことが、僕の胸の奥にある固く閉ざされた扉を、少しだけ叩いたような気がした。
「……お役に立てて、光栄です」
少し皮肉を込めて言ってみたが、声は震えていたかもしれない。
アレクセイはふっと口元を緩め、ようやく顔を上げた。
その瞳は、先ほどよりもずっと澄んでいて、冷たさの中に柔らかな光を宿していた。
「悪くない」
彼は僕の腰から手を離すと、再び背筋を伸ばし、宰相の顔に戻った。
「今日はもういい。下がれ」
用が済めば即座に解放。
その切り替えの早さに呆れつつも、僕は一礼して扉へと向かった。
「ああ、そうだ」
ドアノブに手をかけた時、背後から声がかかる。
「明日も同じ時間に来い。それと……その薬臭い服は着替えてこい。もう少しマシな服を用意させる」
「えっ、いえ、これは仕事着ですので……」
「命令だ」
有無を言わせぬ一言。
僕はため息をつきつつ、「はい」と短く返事をした。
部屋を出ると、廊下の冷たい空気が火照った頬を撫でる。
心臓がまだドキドキとうるさかった。
恐怖からくる動悸なのか、それとも別の何かなのか。
自分の腹部に、彼の額の熱が残っているような気がして、僕はそこをそっと手で押さえた。
奇妙な共犯関係。
弱みを握られたオメガと、感覚過敏のアルファ。
この歪な関係が、いつか取り返しのつかない事態を引き起こす予感がして、僕は小さく身震いをした。
けれど、その予感の中には、甘い毒のような期待も混じっていたことを、僕はまだ認められずにいた。
***
その日の夜、僕は再び自分の部屋で薬の調合をしていた。
アレクセイのそばにいることで、僕自身のホルモンバランスも影響を受けている。
抑制薬の量を調整しなければならない。
慎重に天秤を操作していると、ふと、昼間の彼の言葉が蘇った。
『お前の匂いは、静かだ』
今まで、オメガであることは呪いだと思っていた。
誰かに迷惑をかけ、欲望の対象にされるだけの、忌むべき性。
でも、もし僕の存在が、誰かの苦痛を和らげることができるなら。
それが、あの最強の宰相であるなら。
「……馬鹿だな、僕も」
自嘲気味につぶやき、僕は完成した紫色の液体を小瓶に詰めた。
彼に心を許してはいけない。
彼は取引相手であり、僕の生殺与奪の権を握る支配者なのだから。
そう自分に言い聞かせても、指先に残る銀髪の感触は、なかなか消えてはくれなかった。
窓の外では、不穏な風が吹き始めていた。
宮廷の闇は深く、僕たちの小さな秘密を飲み込もうと、静かに口を開けて待っている。
翌日から、宮廷内で奇妙な噂が流れ始めることを、僕はまだ知らなかった。
「氷の宰相が、地味な薬師を寵愛している」
そんな、ありもしない、けれど核心を突いた噂が。
彼の呼吸に合わせて、僕の腹部に温かい空気が当たる。
信じられない光景だった。
あの冷酷無比で知られる宰相閣下が、まるで親に甘える子供のように、あるいは傷ついた獣が休息を求めるように、僕に寄りかかっているのだから。
僕はどうしていいか分からず、両手を空中に彷徨わせたまま固まっていた。
「動くな」
くぐもった声が、腹のあたりから響く。
「このまま……少しだけ、じっとしていろ」
命令口調だが、そこには懇願に近い響きが含まれていた。
僕は意を決して、ゆっくりと息を吐き出した。
拒絶しても無駄なら、受け入れるしかない。
それに、不思議と嫌悪感はなかった。
彼の匂い――深く冷たい森のような香り――が、至近距離で僕を包み込む。
昨夜のような恐怖はない。むしろ、その香りは僕のオメガとしての本能を刺激するどころか、不思議と安心させてくれるようだった。
「……閣下は、いつもこうして我慢しておられたのですか」
思わず、口をついて出た言葉。
不敬だったかもしれないと後悔したが、アレクセイは怒らなかった。
「……慣れている」
彼は顔を埋めたまま答えた。
「雑音も、悪意も、すべて切り捨ててきた。だが、最近は……限界が近かったのかもしれん」
彼の言葉の端々に、隠しきれない疲労が滲んでいる。
この国の頂点に立つ男。
誰もが恐れ、敬う存在。
けれど、その実態は、あまりに強すぎる力を持て余し、孤独に耐え続ける一人の人間だった。
僕は無意識のうちに、空中に浮かせていた手を下ろし、そっと彼の頭に触れた。
銀糸のような髪は、見た目通り滑らかで、驚くほど柔らかかった。
アレクセイの身体がピクリと反応する。
怒られるかと思ったが、彼は抵抗しなかった。むしろ、僕の手のひらに押し付けるように、頭を預けてきた。
『まるで、大きな猫みたいだ……』
そんな不謹慎な感想が頭をよぎる。
彼の呼吸が深く、ゆっくりとしたものに変わっていく。
僕もまた、彼のリズムに合わせるように呼吸を整えた。
窓の外から聞こえてくるはずの衛兵の掛け声や、鳥のさえずりも、この部屋の中では遠い世界の出来事のようだ。
ここには、僕と彼だけの時間が流れている。
「……お前の匂いは、静かだ」
しばらくして、アレクセイがつぶやいた。
「薬草の苦味と、その奥にある……甘い花の香り。それが、私の頭の中の嵐を鎮めてくれる」
甘い花、と言われて心臓が跳ねる。
それは僕が隠し続けてきたオメガの香りだ。
本来なら恥ずべきもの、隠すべきものとして生きてきた。
けれど、彼はそれを「静かだ」と言って必要としてくれる。
そのことが、僕の胸の奥にある固く閉ざされた扉を、少しだけ叩いたような気がした。
「……お役に立てて、光栄です」
少し皮肉を込めて言ってみたが、声は震えていたかもしれない。
アレクセイはふっと口元を緩め、ようやく顔を上げた。
その瞳は、先ほどよりもずっと澄んでいて、冷たさの中に柔らかな光を宿していた。
「悪くない」
彼は僕の腰から手を離すと、再び背筋を伸ばし、宰相の顔に戻った。
「今日はもういい。下がれ」
用が済めば即座に解放。
その切り替えの早さに呆れつつも、僕は一礼して扉へと向かった。
「ああ、そうだ」
ドアノブに手をかけた時、背後から声がかかる。
「明日も同じ時間に来い。それと……その薬臭い服は着替えてこい。もう少しマシな服を用意させる」
「えっ、いえ、これは仕事着ですので……」
「命令だ」
有無を言わせぬ一言。
僕はため息をつきつつ、「はい」と短く返事をした。
部屋を出ると、廊下の冷たい空気が火照った頬を撫でる。
心臓がまだドキドキとうるさかった。
恐怖からくる動悸なのか、それとも別の何かなのか。
自分の腹部に、彼の額の熱が残っているような気がして、僕はそこをそっと手で押さえた。
奇妙な共犯関係。
弱みを握られたオメガと、感覚過敏のアルファ。
この歪な関係が、いつか取り返しのつかない事態を引き起こす予感がして、僕は小さく身震いをした。
けれど、その予感の中には、甘い毒のような期待も混じっていたことを、僕はまだ認められずにいた。
***
その日の夜、僕は再び自分の部屋で薬の調合をしていた。
アレクセイのそばにいることで、僕自身のホルモンバランスも影響を受けている。
抑制薬の量を調整しなければならない。
慎重に天秤を操作していると、ふと、昼間の彼の言葉が蘇った。
『お前の匂いは、静かだ』
今まで、オメガであることは呪いだと思っていた。
誰かに迷惑をかけ、欲望の対象にされるだけの、忌むべき性。
でも、もし僕の存在が、誰かの苦痛を和らげることができるなら。
それが、あの最強の宰相であるなら。
「……馬鹿だな、僕も」
自嘲気味につぶやき、僕は完成した紫色の液体を小瓶に詰めた。
彼に心を許してはいけない。
彼は取引相手であり、僕の生殺与奪の権を握る支配者なのだから。
そう自分に言い聞かせても、指先に残る銀髪の感触は、なかなか消えてはくれなかった。
窓の外では、不穏な風が吹き始めていた。
宮廷の闇は深く、僕たちの小さな秘密を飲み込もうと、静かに口を開けて待っている。
翌日から、宮廷内で奇妙な噂が流れ始めることを、僕はまだ知らなかった。
「氷の宰相が、地味な薬師を寵愛している」
そんな、ありもしない、けれど核心を突いた噂が。
あなたにおすすめの小説
抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる
水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」
人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。
ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。
「俺が、貴方の剣となり盾となる」
国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。
シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。
オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に
水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。
誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。
しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。
学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。
反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。
それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。
「お前は俺の所有物だ」
傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。
強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。
孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。
これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。
捨てられΩの癒やしの薬草、呪いで苦しむ最強騎士団長を救ったら、いつの間にか胃袋も心も掴んで番にされていました
水凪しおん
BL
孤独と絶望を癒やす、運命の愛の物語。
人里離れた森の奥、青年アレンは不思議な「浄化の力」を持ち、薬草を育てながらひっそりと暮らしていた。その力を気味悪がられ、人を避けるように生きてきた彼の前に、ある嵐の夜、血まみれの男が現れる。
男の名はカイゼル。「黒き猛虎」と敵国から恐れられる、無敗の騎士団長。しかし彼は、戦場で受けた呪いにより、αの本能を制御できず、狂おしい発作に身を焼かれていた。
記憶を失ったふりをしてアレンの元に留まるカイゼル。アレンの作る薬草茶が、野菜スープが、そして彼自身の存在が、カイゼルの荒れ狂う魂を鎮めていく唯一の癒やしだと気づいた時、その想いは激しい執着と独占欲へ変わる。
「お前がいなければ、俺は正気を保てない」
やがて明かされる真実、迫りくる呪いの脅威。臆病だった青年は、愛する人を救うため、その身に宿る力のすべてを捧げることを決意する。
呪いが解けた時、二人は真の番となる。孤独だった魂が寄り添い、狂おしいほどの愛を注ぎ合う、ファンタジック・ラブストーリー。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
最強で美人なお飾り嫁(♂)は無自覚に無双する
竜鳴躍
BL
ミリオン=フィッシュ(旧姓:バード)はフィッシュ伯爵家のお飾り嫁で、オメガだけど冴えない男の子。と、いうことになっている。だが実家の義母さえ知らない。夫も知らない。彼が陛下から信頼も厚い美貌の勇者であることを。
幼い頃に死別した両親。乗っ取られた家。幼馴染の王子様と彼を狙う従妹。
白い結婚で離縁を狙いながら、実は転生者の主人公は今日も勇者稼業で自分のお財布を豊かにしています。
虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした
水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。
強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。
「お前は、俺だけのものだ」
これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。
隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました
水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。
その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。
整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。
オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。
だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。
死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。
それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。
「見つけた。俺の対になる存在を」
正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……?
孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。
星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!
冷酷なアルファ(氷の将軍)に嫁いだオメガ、実はめちゃくちゃ愛されていた。
水凪しおん
BL
これは、愛を知らなかった二人が、本当の愛を見つけるまでの物語。
国のための「生贄」として、敵国の将軍に嫁いだオメガの王子、ユアン。
彼を待っていたのは、「氷の将軍」と恐れられるアルファ、クロヴィスとの心ない日々だった。
世継ぎを産むための「道具」として扱われ、絶望に暮れるユアン。
しかし、冷たい仮面の下に隠された、不器用な優しさと孤独な瞳。
孤独な夜にかけられた一枚の外套が、凍てついた心を少しずつ溶かし始める。
これは、政略結婚という偽りから始まった、運命の恋。
帝国に渦巻く陰謀に立ち向かう中で、二人は互いを守り、支え合う「共犯者」となる。
偽りの夫婦が、唯一無二の「番」になるまでの軌跡を、どうぞ見届けてください。