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第5話: 寮長の仮面
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翌日から、結はさらに晶を避けるようになった。
晶が部屋にいれば、必要最低限のこと以外は姿を見せない。晶が部屋を出ていくのを待ってから行動する。視線が合うことさえ、ほとんどなくなった。悪夢の夜の出来事が、決定的な楔を打ち込んでしまったかのようだった。
晶の友人たちは、そんな二人の様子を心配そうに見守っていた。
「なあ晶、最近のお前、なんか変だぞ。ずっと雪村のこと気にしてるだろ」
昼食時、食堂で健太が箸を止めずに言った。
「あんな暗い奴、関わらない方がお互いのためだって。寮長の仕事熱心なのは分かるけどさ、晶が疲弊してどうすんだよ」
周りにいた他の友人たちも、同意するように頷いている。
「そうそう。あいつ、晶のこと完全に無視してるじゃん。見ててこっちが腹立つわ」
「晶は優しすぎるんだよ」
心配してくれているのは分かる。彼らの言うことが、客観的に見れば正論なのだろう。
晶は、無理に作った笑顔を顔に貼り付けた。
「大丈夫だって。俺は寮長だからな。寮生に問題があれば、気にかけるのは当然だろ」
完璧な優等生。面倒見の良い寮長。
それが、東雲晶に与えられた役割だ。その仮面を被っていれば、友人たちの心配も、自分の内側で渦巻く割り切れない感情も、全て上手く隠せるはずだった。
だが、その言葉は、もはや自分自身を納得させるための言い訳にしか聞こえなかった。
寮長だから? 当然のこと?
――本当に、それだけなのか?
心の中で、もう一人の自分が問いかける。
義務感だけなら、とっくに見切りをつけているはずだ。他の生徒と同じように、「変わった奴」として遠巻きに見るだけで終わらせていたはずだ。
それなのに、なぜ。
結の、あの血の気を失った白い顔が、悪夢にうなされる苦しげな寝顔が、脳裏に焼き付いて離れない。彼が発した「弾けない」という悲痛な声が、耳の奥で何度も響く。
無視すればするほど、拒絶されればされるほど、彼のことが気になって仕方がない。彼の心の奥深くにある、分厚い氷の壁をこじ開けて、その中を覗いてみたいという衝動に駆られる。
あれは、義務感なんかじゃない。
もっと個人的で、身勝手で、名前のつけられない感情だ。
「……俺、ちょっと用事思い出した」
晶は食べかけのランチをそのままに、席を立った。友人たちの訝しげな視線を背中に感じながら、食堂を後にする。
廊下の窓から、中庭を一人で歩く結の後ろ姿が見えた。細く、頼りなげで、今にも消えてしまいそうなその背中から、どうしても目が離せない。
完璧な寮長の仮面の下で、東雲晶という一人の人間が、雪村結という存在に心をかき乱されている。
その事実を、晶は認めざるを得なかった。これはもう、ただの義務感では済まされないのだと。
晶が部屋にいれば、必要最低限のこと以外は姿を見せない。晶が部屋を出ていくのを待ってから行動する。視線が合うことさえ、ほとんどなくなった。悪夢の夜の出来事が、決定的な楔を打ち込んでしまったかのようだった。
晶の友人たちは、そんな二人の様子を心配そうに見守っていた。
「なあ晶、最近のお前、なんか変だぞ。ずっと雪村のこと気にしてるだろ」
昼食時、食堂で健太が箸を止めずに言った。
「あんな暗い奴、関わらない方がお互いのためだって。寮長の仕事熱心なのは分かるけどさ、晶が疲弊してどうすんだよ」
周りにいた他の友人たちも、同意するように頷いている。
「そうそう。あいつ、晶のこと完全に無視してるじゃん。見ててこっちが腹立つわ」
「晶は優しすぎるんだよ」
心配してくれているのは分かる。彼らの言うことが、客観的に見れば正論なのだろう。
晶は、無理に作った笑顔を顔に貼り付けた。
「大丈夫だって。俺は寮長だからな。寮生に問題があれば、気にかけるのは当然だろ」
完璧な優等生。面倒見の良い寮長。
それが、東雲晶に与えられた役割だ。その仮面を被っていれば、友人たちの心配も、自分の内側で渦巻く割り切れない感情も、全て上手く隠せるはずだった。
だが、その言葉は、もはや自分自身を納得させるための言い訳にしか聞こえなかった。
寮長だから? 当然のこと?
――本当に、それだけなのか?
心の中で、もう一人の自分が問いかける。
義務感だけなら、とっくに見切りをつけているはずだ。他の生徒と同じように、「変わった奴」として遠巻きに見るだけで終わらせていたはずだ。
それなのに、なぜ。
結の、あの血の気を失った白い顔が、悪夢にうなされる苦しげな寝顔が、脳裏に焼き付いて離れない。彼が発した「弾けない」という悲痛な声が、耳の奥で何度も響く。
無視すればするほど、拒絶されればされるほど、彼のことが気になって仕方がない。彼の心の奥深くにある、分厚い氷の壁をこじ開けて、その中を覗いてみたいという衝動に駆られる。
あれは、義務感なんかじゃない。
もっと個人的で、身勝手で、名前のつけられない感情だ。
「……俺、ちょっと用事思い出した」
晶は食べかけのランチをそのままに、席を立った。友人たちの訝しげな視線を背中に感じながら、食堂を後にする。
廊下の窓から、中庭を一人で歩く結の後ろ姿が見えた。細く、頼りなげで、今にも消えてしまいそうなその背中から、どうしても目が離せない。
完璧な寮長の仮面の下で、東雲晶という一人の人間が、雪村結という存在に心をかき乱されている。
その事実を、晶は認めざるを得なかった。これはもう、ただの義務感では済まされないのだと。
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