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第4話: 静寂を揺らす悪夢
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その夜、302号室はいつもと同じように静寂に包まれていた。消灯時間を過ぎ、部屋の中は窓から差し込む月明かりだけが頼りだ。
晶はベッドの中で何度か寝返りを打ったが、なかなか寝付けずにいた。昼間の音楽室での出来事が、頭から離れなかったのだ。結が見せた、あの尋常ではない怯え方。普段の彼からは想像もつかない、剥き出しの感情の片鱗。
考え込んでいるうちに、隣のベッドから微かな衣擦れの音が聞こえてきた。そして、それに混じって、押し殺したような呻き声が耳に届く。
晶は息を潜めて、そっと結のベッドに視線を向けた。
月明かりに照らされた結の体は、苦しげに身じろぎをしていた。ぎゅっと固く握りしめられた手は、シーツに深い皺を刻んでいる。額には汗が滲み、何か恐ろしいものから必死に逃れようとするかのように、何度もかぶりを振っていた。
「……やめて……」
悪夢にうなされているのだろう。眠りの中でさえ、彼は安らぎを得られないのか。
「……っ、いやだ……弾けない……」
途切れ途切れに漏れるか細い声は、悲痛な響きを帯びていた。音楽室での出来事と、明らかに繋がっている。
見ているのが辛くなって、晶は思わず体を起こした。
「雪村……?」
声をかけるべきか、迷う。下手に起こして、また彼の心を頑なにさせてしまうかもしれない。だが、このまま放っておくこともできなかった。
晶がベッドから降りて、彼の枕元に膝をつこうとした、その瞬間だった。
「はっ……!」
結が、カッと目を見開いた。その瞳は完全に覚醒しており、暗闇の中でらんらんと光っている。そして、すぐ目の前にいた晶の姿を捉えると、その光は一瞬にして鋭い警戒心と敵意の色に変わった。
「……何してる」
地を這うような低い声。それは、悪夢から覚めた人間の声ではなかった。まるで、テリトリーに侵入してきた獣を威嚇するような、刺々しい響き。
「いや、うなされてたみたいだから……心配で」
「余計なことだ」
結は吐き捨てるように言うと、晶から顔を背け、壁の方に向かって体を丸めた。シーツを頭まで被り、完全に自分だけの世界に閉じこもってしまう。
「……」
晶は、行き場のない手を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。
心配だった。ただ、それだけなのに。
良かれと思ってしたことが、またしても彼との間に見えない壁を分厚くしてしまった。二人の間に流れる空気は、これまで以上に冷たく、張り詰めている。
暗闇の中、拒絶を示す小さな背中を見つめながら、晶は無力感と、どうしようもない焦燥感に唇を噛み締めるしかなかった。
晶はベッドの中で何度か寝返りを打ったが、なかなか寝付けずにいた。昼間の音楽室での出来事が、頭から離れなかったのだ。結が見せた、あの尋常ではない怯え方。普段の彼からは想像もつかない、剥き出しの感情の片鱗。
考え込んでいるうちに、隣のベッドから微かな衣擦れの音が聞こえてきた。そして、それに混じって、押し殺したような呻き声が耳に届く。
晶は息を潜めて、そっと結のベッドに視線を向けた。
月明かりに照らされた結の体は、苦しげに身じろぎをしていた。ぎゅっと固く握りしめられた手は、シーツに深い皺を刻んでいる。額には汗が滲み、何か恐ろしいものから必死に逃れようとするかのように、何度もかぶりを振っていた。
「……やめて……」
悪夢にうなされているのだろう。眠りの中でさえ、彼は安らぎを得られないのか。
「……っ、いやだ……弾けない……」
途切れ途切れに漏れるか細い声は、悲痛な響きを帯びていた。音楽室での出来事と、明らかに繋がっている。
見ているのが辛くなって、晶は思わず体を起こした。
「雪村……?」
声をかけるべきか、迷う。下手に起こして、また彼の心を頑なにさせてしまうかもしれない。だが、このまま放っておくこともできなかった。
晶がベッドから降りて、彼の枕元に膝をつこうとした、その瞬間だった。
「はっ……!」
結が、カッと目を見開いた。その瞳は完全に覚醒しており、暗闇の中でらんらんと光っている。そして、すぐ目の前にいた晶の姿を捉えると、その光は一瞬にして鋭い警戒心と敵意の色に変わった。
「……何してる」
地を這うような低い声。それは、悪夢から覚めた人間の声ではなかった。まるで、テリトリーに侵入してきた獣を威嚇するような、刺々しい響き。
「いや、うなされてたみたいだから……心配で」
「余計なことだ」
結は吐き捨てるように言うと、晶から顔を背け、壁の方に向かって体を丸めた。シーツを頭まで被り、完全に自分だけの世界に閉じこもってしまう。
「……」
晶は、行き場のない手を握りしめたまま、その場に立ち尽くした。
心配だった。ただ、それだけなのに。
良かれと思ってしたことが、またしても彼との間に見えない壁を分厚くしてしまった。二人の間に流れる空気は、これまで以上に冷たく、張り詰めている。
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