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第5話 空からの訪問者と、甘いおもてなし
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フェンが人型になれるようになってから、二人の生活はさらに豊かなものになった。人手が加わったことで、住処である洞窟の周りを整備し、小さな畑を作ることさえできた。穏やかで、満ち足りた日々。アルは、自分が追放されたことすら、幸運だったのかもしれないと思えるほどだった。
しかし、その穏やかな生活は、ある日、空からの訪問者によって突然破られる。
その日、アルは昼食の準備をしていた。ふと、空がにわかにかき曇り、巨大な影が自分たちの住処の上を旋回しているのに気づいた。
「フェン、あれ……!」
アルが指さす先には、巨大な鳥がいた。上半身は猛々しい鷲、下半身は力強い獅子の姿を持つ、伝説の聖獣グリフォンだ。その翼は広げると数メートルにも及び、鋭い鉤爪は岩をも砕くとされる。この森の上空一帯を縄張りとする、空の王者だ。
グルォォォォ!
グリフォンが威嚇するように鋭い鳴き声を上げながら、ゆっくりと地上に舞い降りてきた。その巨体が地面を揺るがす。しかし、よく見るとその様子がおかしい。片方の翼が不自然に垂れ下がり、そこからは血が滲んでいた。どうやら何者かとの戦いで傷を負い、うまく飛べなくなってしまったらしい。
「俺の縄張りに何の用だ、翼付き」
人型のフェンが、即座にアルの前に立ち、グリフォンを睨みつけた。その黄金の瞳には、縄張りを荒らす者への明確な敵意が宿っている。一触即発の空気が、二体の聖獣の間に流れた。
「待って、フェン!」
アルはフェンの腕を掴んで制止した。
「見て、あの子、怪我をしてる。きっと助けを求めてるんだよ」
「だからなんだ。弱った奴が死ぬのは、この森の掟だ」
冷たく言い放つフェンだったが、アルは首を横に振った。アルの目には、威嚇しながらも助けを求めるようなグリフォンの瞳が見えていた。それに、彼の料理の匂いに惹かれてここまでやってきたのかもしれない。そう思うと、無下にはできなかった。
「僕がなんとかするよ。大丈夫だから」
アルはフェンをなだめると、グリフォンの前にゆっくりと歩み出た。グリフォンは警戒して身構えるが、アルはにこりと微笑みかける。
「お腹、空いてるんでしょ?それに、その翼、痛そうだね。今、何か作るから、ここで待ってて」
アルは住処に戻ると、何を作るか考えた。傷を癒し、体力を回復させるもの。そして、警戒している相手の心を和ませるものがいい。彼は森で採っておいた木の実と、先日見つけた蜂の巣から採った貴重な蜂蜜を使うことを思いついた。
小麦粉の代用に、栄養価の高い木の実を砕いて粉にする。それを水で練って生地を作り、薄く伸ばしてタルトの型を作る。中には、森で採れた酸味のあるベリーと甘い蜂蜜をたっぷり詰め込み、熱した石板の上でじっくりと焼き上げた。
やがて、バターも砂糖も使っていないとは思えないほど、甘く香ばしい匂いが辺りに立ち込める。焼きあがったタルトは、森の恵みがぎゅっと詰まった、自然の甘み溢れるスイーツだ。
アルがそのタルトをグリフォンの前に差し出すと、グリフォンは戸惑ったようにそれを見つめていた。しかし、食欲をそそる甘い香りに抗うことはできず、おそるおそる一口、嘴でタルトをついばんだ。
その瞬間、グリフォンの琥珀色の瞳が、驚きに見開かれた。
サクサクとした生地の食感、ベリーの甘酸っぱさ、そして蜂蜜の濃厚な甘みが口の中に広がる。それだけではない。タルトを飲み込むと、温かい光が翼の傷へと流れ込み、ズキズキとした痛みが和らいでいくのが分かった。
グリフォンは、我を忘れてタルトを夢中で食べ進めた。その姿は空の王者の威厳などなく、まるでお菓子をねだる子供のようだった。
タルトをすべて食べ終える頃には、翼の傷はほとんど塞がっていた。グリフォンは満足そうに一声鳴くと、今度はアルにすり寄ってきた。そして、その大きな鷲の頭をアルの体に優しくこすりつける。それは、絶対的な信頼と感謝の証だった。
「こら、アルに気安く触るな」
フェンが少し不満そうに言いながらも、その様子を黙って見守っている。
それからというもの、グリフォンはアルにすっかり懐いてしまい、森の上空から常にアルたちを見守るようになった。何か危険が迫れば鋭い鳴き声で知らせてくれる、頼もしい空の守護者となったのだ。
こうして、アルの新しい家族に、もふもふの狼に加えて、ふわふわの羽を持つグリフォンが加わった。彼らの食卓は、ますます賑やかになっていくのだった。
しかし、その穏やかな生活は、ある日、空からの訪問者によって突然破られる。
その日、アルは昼食の準備をしていた。ふと、空がにわかにかき曇り、巨大な影が自分たちの住処の上を旋回しているのに気づいた。
「フェン、あれ……!」
アルが指さす先には、巨大な鳥がいた。上半身は猛々しい鷲、下半身は力強い獅子の姿を持つ、伝説の聖獣グリフォンだ。その翼は広げると数メートルにも及び、鋭い鉤爪は岩をも砕くとされる。この森の上空一帯を縄張りとする、空の王者だ。
グルォォォォ!
グリフォンが威嚇するように鋭い鳴き声を上げながら、ゆっくりと地上に舞い降りてきた。その巨体が地面を揺るがす。しかし、よく見るとその様子がおかしい。片方の翼が不自然に垂れ下がり、そこからは血が滲んでいた。どうやら何者かとの戦いで傷を負い、うまく飛べなくなってしまったらしい。
「俺の縄張りに何の用だ、翼付き」
人型のフェンが、即座にアルの前に立ち、グリフォンを睨みつけた。その黄金の瞳には、縄張りを荒らす者への明確な敵意が宿っている。一触即発の空気が、二体の聖獣の間に流れた。
「待って、フェン!」
アルはフェンの腕を掴んで制止した。
「見て、あの子、怪我をしてる。きっと助けを求めてるんだよ」
「だからなんだ。弱った奴が死ぬのは、この森の掟だ」
冷たく言い放つフェンだったが、アルは首を横に振った。アルの目には、威嚇しながらも助けを求めるようなグリフォンの瞳が見えていた。それに、彼の料理の匂いに惹かれてここまでやってきたのかもしれない。そう思うと、無下にはできなかった。
「僕がなんとかするよ。大丈夫だから」
アルはフェンをなだめると、グリフォンの前にゆっくりと歩み出た。グリフォンは警戒して身構えるが、アルはにこりと微笑みかける。
「お腹、空いてるんでしょ?それに、その翼、痛そうだね。今、何か作るから、ここで待ってて」
アルは住処に戻ると、何を作るか考えた。傷を癒し、体力を回復させるもの。そして、警戒している相手の心を和ませるものがいい。彼は森で採っておいた木の実と、先日見つけた蜂の巣から採った貴重な蜂蜜を使うことを思いついた。
小麦粉の代用に、栄養価の高い木の実を砕いて粉にする。それを水で練って生地を作り、薄く伸ばしてタルトの型を作る。中には、森で採れた酸味のあるベリーと甘い蜂蜜をたっぷり詰め込み、熱した石板の上でじっくりと焼き上げた。
やがて、バターも砂糖も使っていないとは思えないほど、甘く香ばしい匂いが辺りに立ち込める。焼きあがったタルトは、森の恵みがぎゅっと詰まった、自然の甘み溢れるスイーツだ。
アルがそのタルトをグリフォンの前に差し出すと、グリフォンは戸惑ったようにそれを見つめていた。しかし、食欲をそそる甘い香りに抗うことはできず、おそるおそる一口、嘴でタルトをついばんだ。
その瞬間、グリフォンの琥珀色の瞳が、驚きに見開かれた。
サクサクとした生地の食感、ベリーの甘酸っぱさ、そして蜂蜜の濃厚な甘みが口の中に広がる。それだけではない。タルトを飲み込むと、温かい光が翼の傷へと流れ込み、ズキズキとした痛みが和らいでいくのが分かった。
グリフォンは、我を忘れてタルトを夢中で食べ進めた。その姿は空の王者の威厳などなく、まるでお菓子をねだる子供のようだった。
タルトをすべて食べ終える頃には、翼の傷はほとんど塞がっていた。グリフォンは満足そうに一声鳴くと、今度はアルにすり寄ってきた。そして、その大きな鷲の頭をアルの体に優しくこすりつける。それは、絶対的な信頼と感謝の証だった。
「こら、アルに気安く触るな」
フェンが少し不満そうに言いながらも、その様子を黙って見守っている。
それからというもの、グリフォンはアルにすっかり懐いてしまい、森の上空から常にアルたちを見守るようになった。何か危険が迫れば鋭い鳴き声で知らせてくれる、頼もしい空の守護者となったのだ。
こうして、アルの新しい家族に、もふもふの狼に加えて、ふわふわの羽を持つグリフォンが加わった。彼らの食卓は、ますます賑やかになっていくのだった。
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