「味がしない」と追放された僕の料理は、聖獣の力を覚醒させるチート能力でした。もふもふ達に溺愛されながら、世界一幸せなレストランを開きます

水凪しおん

文字の大きさ
16 / 24

第15話 王宮との対峙

しおりを挟む
 アルと聖獣たちの一行が王都の正門に到着すると、その異様な光景に、門を守る衛兵たちは色めき立った。伝説の聖獣を複数体も引き連れた行列など、建国以来、誰も見たことがない。

「な、何者だ!」

 衛兵たちが慌てて槍を構えるが、先頭に立つギデオンが、騎士団長の紋章を掲げて一喝した。

「開門せよ!王の命である!」

 騎士団長の帰還に、衛兵たちは慌てて門を開ける。しかし、彼らの視線は、ギデオンの後ろに控えるアルと聖獣たちに釘付けになっていた。フェンリルとグリフォンが放つ、肌をピリピリと刺すような圧倒的なプレッシャーの前に、屈強な兵士たちでさえ、恐怖で満足に動くことすらできない。

 一行が王宮前の広場に到着すると、噂を聞きつけた兵士たちが、あっという間に彼らを取り囲んだ。しかし、それだけだった。誰もが、聖獣たちの神聖さと、その内に秘めた計り知れない力に圧倒され、ただ遠巻きに見ていることしかできなかったのだ。

 やがて、兵士たちの輪が割れ、その向こうから一人の人物が現れた。

 豪華な装飾の施された衣服、傲慢な表情、そして、その瞳に浮かぶ焦りの色。第一王子、クラウスだった。彼は、ギデオンが連れてきたという「聖獣を手懐ける者」を一目見ようと、自ら出てきたのだ。

 そして、彼はアルの姿を認め、眉をひそめた。

「……貴様は……。どこかで見た顔だと思えば、俺が追放した、あの味覚音痴の見習いではないか。なぜ、貴様がここにいる!」

 クラウスは、アルが聖獣を従えているという現実を受け入れられず、ただ目の前の青年が、かつて自分が捨てたゴミであるという事実だけを声高に叫んだ。

 その侮辱の言葉に、フェンの空気が一変した。今にも飛びかからんとするフェンを、アルは片手でそっと制する。

 アルは、もう昔の彼ではなかった。怯え、俯く青年はもういない。彼はクラウスの目をまっすぐに見返し、静かに、しかし、凛とした声で言った。

「お久しぶりです、クラウス王子。ええ、あなた様が『魔物の森』へ追放した、料理人アルです」

「……その、化け物どもはなんだ。貴様、森の魔物と手を組み、国に仇なすつもりか!」

 クラウスは、自分の理解を超えた状況を、すべてアルの反逆に結びつけようとした。

 アルは、その言葉を鼻で笑った。そして、彼は、王宮にいる全ての人間たちに聞こえるように、堂々と宣言した。

「いいえ、王子。僕は、この国を救いに来ました。あなたが、その舌で壊してしまった、この国を」

 そして、彼は挑戦的な笑みを浮かべた。

「私を追放したことを、後悔させてあげます。――料理で」

 その言葉は、宣戦布告だった。無能と蔑まれた青年が、かつての支配者に向かって突きつけた、料理人としてのプライドを賭けた挑戦状。

 クラウスは、アルのあまりの変貌ぶりに、そしてその言葉の持つ力に、一瞬、たじろいだ。広場にいた誰もが、固唾をのんで二人を見守る。

 ギデオンが間に入り、状況を説明することで、本格的な戦闘は回避された。しかし、アルとクラウスの間の、見えない火花は激しく散っていた。

 対決の舞台は、整った。アルは、自分を追放した王宮で、己の料理が持つ本当の価値を証明する戦いに、今、挑もうとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

もふもふ守護獣と運命の出会い—ある日、青年は異世界で大きな毛玉と恋に落ちた—

なの
BL
事故に巻き込まれ、雪深い森で倒れていた青年・ユナ。 命の危険に晒されていた彼を救ったのは、白銀の毛並みを持つ美しい人狼・ゼルだった。 ゼルは誰よりも優しくて、そして――独占欲がとにかく強い。 気がつけばユナは、もふもふの里へ連れていかれる。 そこでは人狼だけでなく、獣人や精霊、もふもふとした種族たちが仲良く暮らしており、ユナは珍しい「人間」として大歓迎される。 しかし、ゼルだけは露骨にユナを奪われまいとし、 「触るな」「見るな」「近づくな」と嫉妬を隠そうとしない。 もふもふに抱きしめられる日々。 嫉妬と優しさに包まれながら、ユナは少しずつ居場所を取り戻していく――。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

追放された悪役令嬢、規格外魔力でもふもふ聖獣を手懐け隣国の王子に溺愛される

黒崎隼人
ファンタジー
「ようやく、この息苦しい生活から解放される!」 無実の罪で婚約破棄され、国外追放を言い渡された公爵令嬢エレオノーラ。しかし彼女は、悲しむどころか心の中で歓喜の声をあげていた。完璧な淑女の仮面の下に隠していたのは、国一番と謳われた祖母譲りの規格外な魔力。追放先の「魔の森」で力を解放した彼女の周りには、伝説の聖獣グリフォンをはじめ、可愛いもふもふ達が次々と集まってきて……!? 自由気ままなスローライフを満喫する元悪役令嬢と、彼女のありのままの姿に惹かれた「氷の王子」。二人の出会いが、やがて二つの国の運命を大きく動かすことになる。 窮屈な世界から解き放たれた少女が、本当の自分と最高の幸せを見つける、溺愛と逆転の異世界ファンタジー、ここに開幕!

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

過労死転生、辺境で農業スローライフのはずが、不愛想な元騎士団長を餌付けして溺愛されてます

水凪しおん
BL
「もう、あくせく働くのは絶対に嫌だ!」 ブラック企業で過労死した俺、ユキナリが神様から授かったのは、どんな作物も育てられ、どんな道具にもなるチートスキル【万能農具】。念願のスローライフを送るため、辺境の荒れ地でのんびり農業を始めたはずが……出会ってしまったのは、心を閉ざした無愛想な元騎士団長・レオンハルト。俺の作るあったか料理に胃袋を掴まれ、凍てついた心が徐々に溶けていく彼。もふもふの番犬(黒狼)も加わって、穏やかな日々は加速していく。――収穫祭の夜、酔った勢いのキスをきっかけに、彼の独占欲に火をつけてしまった!? 「お前は、俺だけのものだ」 不器用で、でもどこまでも優しい彼の激しい愛情に、身も心も蕩かされていく。 辺境の地でのんびり農業をしていただけなのに、いつの間にか不愛想な元騎士団長の胃袋と心を射止めて、国まで動かすことになっちゃいました!? 甘々で時々ほろ苦い、異世界農業スローライフBL、ここに開幕!

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

処理中です...