「味がしない」と追放された僕の料理は、聖獣の力を覚醒させるチート能力でした。もふもふ達に溺愛されながら、世界一幸せなレストランを開きます

水凪しおん

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第17話 浄化のフルコース

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 王宮の厨房が、かつてないほどの活気と神聖な気に満たされてから、丸一日が経過した。アルと料理人たちは、不眠不休で調理を続けた。そしてついに、国の運命を懸けた一皿、いや、一連の料理が完成の時を迎える。

 それは、アルが持てる知識と技術、そして聖獣たちの奇跡の力をすべて注ぎ込んだ、「浄化のフルコース」だった。

 前菜、スープ、魚料理、肉料理、そしてデザート。そのすべてが、体内の毒を浄化し、失われた生命力を最大限に引き出すために、完璧に計算し尽くされている。料理が盛り付けられた皿からは、まるで後光が差しているかのように、淡く温かい光が放たれていた。

 まず、完成したフルコースは、最も衰弱が激しい、守護聖獣・神鳥の元へと運ばれた。

 神鳥は、王宮の最上階にある、神聖な飼育室の止まり木で、ぐったりと目を閉じていた。あれほど見事だった黄金の羽は、今や輝きを失い、見る影もない。

 アルが、料理の乗ったワゴンを押して部屋に入る。すると、それまで何の反応も示さなかった神鳥が、ぴくりと微かに動いた。料理が放つ、清浄で神聖な気に、その魂が反応したのだ。

 アルはまず、前菜である「森の雫のジュレ」を神鳥の前にそっと差し出した。ドリアードがくれた、生命力が凝縮された若葉を、グリフォンが運んだ聖水で固めた、透き通るように美しい一品だ。

 ジュレが放つ優しい香りに誘われ、神鳥はゆっくりと、重いまぶたを開いた。そして、アルが差し出すスプーンに、おそるおそるというように、小さく嘴を寄せた。

 ジュレが、その小さな口の中へと滑り込む。

 その瞬間。

 カッ、と神鳥の全身が目も眩むほどの黄金の光に包まれた!

 光は部屋中を満たし、同席していたギデオンや王宮の役人たちは、あまりの神々しさに思わずひれ伏す。

 光が収まった時、そこにいたのは、以前の弱々しい姿ではなかった。色褪せていた羽は、本来の、太陽を溶かし込んだような輝きを取り戻している。その瞳には力強い光が宿り、体全体から生命力が満ち溢れていた。

 ピィィィィィィィッ!

 神鳥は、天にまで届くような、力強く美しい鳴き声を上げた。それは、完全なる復活を告げる、歓喜の叫びだった。

 神鳥は、アルの肩にひらりと舞い降りると、感謝を示すように、その頬に優しく頭をこすりつけた。

 奇跡は、起こった。

 一人の料理人が作った料理が、国一番の薬師ですら匙を投げた、守護聖獣の命を救ったのだ。

「おお……なんと……」

 ギデオンは、その光景を前にして、感極まったように声を震わせた。

 だが、これはまだ始まりに過ぎない。浄化のフルコースは、まだ前菜が終わったばかりだ。次なる奇跡の舞台は、クラウス王子の待つ、玉座の間へと移される。

 アルの料理が、王子の歪んでしまった心と体を、本当に浄化することができるのか。王宮の誰もが、固唾をのんでその時を待っていた。
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