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番外編 騎士団長と秘密のレシピ
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アルたちが森での穏やかな生活に戻ってから、しばらく経ったある日のこと。彼らの家に、珍しい客人が訪れた。王国騎士団長のギデオンだった。彼は非番の日に、たった一人で、お忍びでやってきたのだ。
「ギデオン様!どうしてここに?」
突然の来訪に驚くアル。フェンは、アルに会いに来た男(たとえギデオンでも)に、少しだけ警戒のオーラを放っている。
ギデオンは、いつもの厳格な表情ではなく、どこか困り果てたような、情けない顔をしていた。そして、もじもじと、言い出しにくそうに口を開いた。
「……アル殿。その、大変、個人的な相談なのだが……」
話を聞いてみると、ギデオンには長年、想いを寄せている女性がいるらしかった。相手は、王宮に仕える文官の女性で、聡明で優しい人なのだという。しかし、ギデオンは生来の不器用さと堅物な性格が災いし、どうやって彼女に想いを伝えたらいいか分からず、何年も一人で悩み続けていたのだ。
「先日、勇気を出して食事に誘ったのだが……何を話していいか分からず、結局、騎士団の訓練内容について、一時間も熱弁してしまった……」
うなだれるギデオンの姿に、アルは思わず苦笑してしまった。
「そこで、だ。アル殿に、お願いがある。……料理で、彼女を笑顔にしたいのだ。私のような不器用な男でも作れる、想いが伝わるような料理を、教えてはいただけないだろうか」
真剣な顔で頭を下げるギデオン。その瞳は、国の危機に立ち向かっていた時と同じくらい、真剣だった。
「……ふん。くだらん」
隣で話を聞いていたフェンが、鼻を鳴らす。
「まあまあ、フェン。いいじゃないか。ギデオン様、すごく困ってるみたいだし」
アルは、フェンをなだめると、にっこりと笑ってギデオンの依頼を引き受けた。
「分かりました。僕でよければ、協力します!」
アルがギデオンのために考えたのは、「想いが伝わる煮込み料理」、牛肉の赤ワイン煮込みだった。じっくり時間をかけて煮込むことで、愛情が深まるという意味を込めて。
「難しそうに聞こえますけど、材料を入れて、あとはコトコト煮込むだけだから、大丈夫ですよ」
アルは、手際よく調理の手順を見せながら、いくつかのコツを教えた。肉を焼くときは、焦げ目をしっかりつけること。玉ねぎは、飴色になるまでじっくり炒めること。そして何より、大切なのは、「美味しくなあれ」と、相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら作ること。
「料理は、気持ちを伝える手紙みたいなものですから」
アルの言葉に、ギデオンは深く頷き、その一言一句を心に刻むように聞いていた。
その様子を、フェンは少し離れた場所から、腕を組んで面白くなさそうに見ていた。
(アルは、俺だけの料理人だ。なんで、こんな朴念仁のために……)
少し、焼き餅を焼いていたのだ。だが、アルが楽しそうに料理を教えている姿や、ギデオンの必死な姿を見ているうちに、その気持ちも少しずつ変化していった。
(……まあ、こいつが幸せになるなら、アルも喜ぶか)
レッスンが終わり、ギデオンは自分で作った煮込み料理の入った鍋を、大事そうに抱えて帰っていった。その背中は、来た時よりもずっと、自信に満ち溢れているように見えた。
後日、ギデオンからアルの元に、一通の手紙が届いた。そこには、ぎこちないながらも、感謝の言葉と、彼女が「人生で一番美味しい」と泣いて喜んでくれたこと、そして、二人の交際が始まったことが綴られていた。
手紙を読むアルの嬉しそうな顔を見て、フェンは「フン」とそっぽを向きながらも、その口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。不器用な騎士の恋を、ほんの少しだけ、応援してやろうという気になったのだった。
「ギデオン様!どうしてここに?」
突然の来訪に驚くアル。フェンは、アルに会いに来た男(たとえギデオンでも)に、少しだけ警戒のオーラを放っている。
ギデオンは、いつもの厳格な表情ではなく、どこか困り果てたような、情けない顔をしていた。そして、もじもじと、言い出しにくそうに口を開いた。
「……アル殿。その、大変、個人的な相談なのだが……」
話を聞いてみると、ギデオンには長年、想いを寄せている女性がいるらしかった。相手は、王宮に仕える文官の女性で、聡明で優しい人なのだという。しかし、ギデオンは生来の不器用さと堅物な性格が災いし、どうやって彼女に想いを伝えたらいいか分からず、何年も一人で悩み続けていたのだ。
「先日、勇気を出して食事に誘ったのだが……何を話していいか分からず、結局、騎士団の訓練内容について、一時間も熱弁してしまった……」
うなだれるギデオンの姿に、アルは思わず苦笑してしまった。
「そこで、だ。アル殿に、お願いがある。……料理で、彼女を笑顔にしたいのだ。私のような不器用な男でも作れる、想いが伝わるような料理を、教えてはいただけないだろうか」
真剣な顔で頭を下げるギデオン。その瞳は、国の危機に立ち向かっていた時と同じくらい、真剣だった。
「……ふん。くだらん」
隣で話を聞いていたフェンが、鼻を鳴らす。
「まあまあ、フェン。いいじゃないか。ギデオン様、すごく困ってるみたいだし」
アルは、フェンをなだめると、にっこりと笑ってギデオンの依頼を引き受けた。
「分かりました。僕でよければ、協力します!」
アルがギデオンのために考えたのは、「想いが伝わる煮込み料理」、牛肉の赤ワイン煮込みだった。じっくり時間をかけて煮込むことで、愛情が深まるという意味を込めて。
「難しそうに聞こえますけど、材料を入れて、あとはコトコト煮込むだけだから、大丈夫ですよ」
アルは、手際よく調理の手順を見せながら、いくつかのコツを教えた。肉を焼くときは、焦げ目をしっかりつけること。玉ねぎは、飴色になるまでじっくり炒めること。そして何より、大切なのは、「美味しくなあれ」と、相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら作ること。
「料理は、気持ちを伝える手紙みたいなものですから」
アルの言葉に、ギデオンは深く頷き、その一言一句を心に刻むように聞いていた。
その様子を、フェンは少し離れた場所から、腕を組んで面白くなさそうに見ていた。
(アルは、俺だけの料理人だ。なんで、こんな朴念仁のために……)
少し、焼き餅を焼いていたのだ。だが、アルが楽しそうに料理を教えている姿や、ギデオンの必死な姿を見ているうちに、その気持ちも少しずつ変化していった。
(……まあ、こいつが幸せになるなら、アルも喜ぶか)
レッスンが終わり、ギデオンは自分で作った煮込み料理の入った鍋を、大事そうに抱えて帰っていった。その背中は、来た時よりもずっと、自信に満ち溢れているように見えた。
後日、ギデオンからアルの元に、一通の手紙が届いた。そこには、ぎこちないながらも、感謝の言葉と、彼女が「人生で一番美味しい」と泣いて喜んでくれたこと、そして、二人の交際が始まったことが綴られていた。
手紙を読むアルの嬉しそうな顔を見て、フェンは「フン」とそっぽを向きながらも、その口元には、かすかな笑みが浮かんでいた。不器用な騎士の恋を、ほんの少しだけ、応援してやろうという気になったのだった。
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