「味がしない」と追放された僕の料理は、聖獣の力を覚醒させるチート能力でした。もふもふ達に溺愛されながら、世界一幸せなレストランを開きます

水凪しおん

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第21話 ただいま、僕たちの家へ

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 王都での喧騒が、まるで遠い世界の出来事だったかのように、森は静かで、穏やかだった。

 アルとフェン、そして仲間たちは、慣れ親しんだ森の道を通って、自分たちの家へと帰ってきた。

「……着いた」

 目の前に広がる光景に、アルは小さく息をのんだ。

 彼らが住んでいた洞窟は、そこにはなかった。代わりに、木の温もりを感じさせる、立派で可愛らしい一軒のロッジが建てられていたのだ。周りには、色とりどりの作物が実る豊かな畑が作られ、綺麗な水が引かれた井戸まであった。国王が約束した「支援」とは、このことだったらしい。

「すごい……僕たちの、家だ」

 アルが感激していると、隣にいたフェンが、少し得意げに言った。

「ああ。俺たちの城だ」

 二人が家の中に入ると、そこには、広々としたキッチンと、大きなテーブルのあるダイニング、そして暖炉のある温かいリビングが広がっていた。必要な家具や調理器具も、すべて揃えられている。

 その日の夜、アルは早速、新しい家の、新しいキッチンに立った。

 王宮でのような、国を救うための大げさな料理ではない。ただ、愛する人のために作る、心のこもった温かい夕食だ。

 メニューは、森で採れた野菜をたっぷり使ったポトフと、焼きたてのパン。それは、アルが王宮を追放されるきっかけになった、因縁のメニューでもあった。しかし、今、彼の心には何のわだかまりもなかった。

 ぐつぐつと煮える鍋の音。香ばしく焼き上がるパンの匂い。その一つ一つが、アルにとっては何よりも幸せな音楽であり、香りだった。

「できたよ、フェン」

 テーブルに、湯気の立つポトフとパンが並べられる。人型になったフェンが、アルの向かいの席に座った。

「いただきます」

 二人は、静かに食事を始めた。フェンは、アルが作ったポトフを一口食べると、満足そうに目を細めた。

「……美味い」
「よかった」

 ただ、それだけの会話。しかし、その間には、どんな言葉よりも雄弁な愛情が満ちていた。

 王宮での出来事、救国の英雄という称号、そんなものは、今の二人には関係なかった。ただ、こうして向かい合って、同じ食卓を囲む。この当たり前の日常こそが、彼らが戦い、手に入れた、かけがえのない宝物なのだ。

 食事が終わり、暖炉の前に二人で並んで座る。パチパチと燃える炎が、二人の顔を優しく照らしていた。

 アルは、フェンの肩にそっと頭をもたせかけた。

「……ただいま、フェン」
「……おかえり、アル」

 フェンは、アルの体を優しく引き寄せると、その唇に、自分の唇を重ねた。それは、とても穏やかで、どこまでも優しい、愛に満ちたキスだった。

 誰にも邪魔されることのない、二人だけの静かな夜。

 追放された青年が見つけた、世界で一番幸せな食卓。アルとフェンの物語は、まだ始まったばかり。彼らの温かくて美味しい日々は、これからも、この森の家で、ずっと、ずっと続いていく。
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