13 / 15
第12話「銀狼の愛は永遠に」
魔術師たちとの戦いから、一年が過ぎた。
あの日以来、森を侵そうとする者は現れなくなり、白夜の森には穏やかな日々が戻っていた。
俺はカイの番として、そして彼の唯一のパートナーとして、月影城で暮らしている。
カイは、あの日交わした約束通り、もう俺を城の中に閉じ込めようとはしなかった。
それどころか、森の統治に関わる様々なことを俺に教え、時には俺の意見を求めることさえあった。
俺の持つ治癒と生成の力は、森に暮らす動物たちの怪我を治したり、天候不順で弱った植物を活性化させたりするのに、大いに役立った。
最初は俺を警戒していた森の住人たちも、次第に俺を「王の番」として認め、慕ってくれるようになった。
虐げられ、誰にも必要とされていなかった俺が、今では多くの命を癒し、感謝されている。
それは、カイが与えてくれた、何物にも代えがたい幸福だった。
もちろん、カイの独占欲が薄れたわけではない。
むしろ、俺が城の外で活動する時間が増えた分、二人の時間になると、彼は以前にも増して甘く、そして激しく俺を求めるようになった。
「今日は、あの若い鹿とおしゃべりが長かったな」
夜、寝台の中で俺を後ろから抱きしめながら、カイが拗ねたように呟く。
その声には、嫉妬の色が隠しきれていなかった。
「しょうがないだろ、足に怪我をしてたんだから」
俺が苦笑しながら答えると、カイは俺の首筋に顔をうずめ、甘噛みするように吸い付いた。
「んっ……!」
「……お前は、俺のものだということを、体に分からせてやる必要があるな」
彼の低い声が、背後から囁かれる。
振り返る間もなく、大きな手が俺の体を巧みに愛撫し始め、俺はあっという間に彼の作り出す快感の渦に呑み込まれていく。
番になってからというもの、俺の体はカイに触れられることを常に望むように、すっかり変えられてしまっていた。
毎晩のように繰り返される愛の交歓は、互いの魂を結びつけ、その絆をより一層深いものにしてくれた。
ある晴れた日の午後、俺とカイは、森で一番高い丘の上に来ていた。
そこは、俺たちが初めて出会った樫の木がよく見える、見晴らしの良い場所だった。
二人で並んで草の上に座り、眼下に広がる雄大な森を眺める。心地よい風が、俺たちの髪を優しく撫でていった。
「ここから見ると、森が全部見えるんだな」
「ああ。俺が、そして俺たちが治める国だ」
カイはそう言うと、俺の肩をそっと抱き寄せた。
俺は彼の肩に、こてんと頭をもたせかける。
「なあ、カイ」
「なんだ」
「俺、カイに出会えて、本当に良かった」
しみじみと、心の底からそう思った。
もし、あの日、俺が贄としてこの森に捧げられていなかったら。もし、カイが俺を見つけてくれなかったら。
今頃俺は、孤独と絶望の中で、とっくに息絶えていただろう。
「馬鹿を言え。礼を言うのは俺の方だ」
カイは、俺の髪に顔をうずめるようにして言った。
「お前がいない世界など、想像もできん。お前は、俺の光だ、アキ」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
俺は彼の腕の中で、そっと目を閉じた。
村で虐げられていた頃の記憶が、ふと蘇る。あの頃は、明日が来ることさえ怖かった。自分の存在価値が分からず、ただ息を潜めて生きていた。
けれど、今は違う。隣には、絶対的な愛情で俺を包んでくれる人がいる。俺を必要としてくれる世界がある。
聖なる刻印は、もはや俺を苦しめる呪いではない。それは、カイと俺とを結びつける、愛の証だ。
「カイ」
「ん?」
「好きだよ」
俺がそう言うと、カイは一瞬驚いたように動きを止めたが、すぐに俺の体を強く抱きしめ返してくれた。
「……知っている。俺は、お前を愛している」
耳元で囁かれるその言葉が、世界で一番甘い響きを持って、俺の心に溶けていく。
俺は顔を上げ、カイの唇に、自分から口づけをした。
穏やかな日差しの中で交わす口づけは、どこまでも優しくて、温かかった。
絶対的な力を持つ銀狼王と、その唯一の弱点であり、同時に最大の力でもある聖なる刻印の青年。
俺たちの物語は、絶望の淵から始まった。けれど、これからは、光に満ちた未来だけが待っている。
この白夜の森の奥深くで、誰にも邪魔されることなく、俺たちは永遠の愛を誓い、睦み合い、そして共に生きていくのだ。
眼下に広がる美しい森を眺めながら、俺はカイの温もりを感じていた。
銀狼の愛は、深く、そして果てしなく、俺の魂を永遠に満たし続けるだろう。
あの日以来、森を侵そうとする者は現れなくなり、白夜の森には穏やかな日々が戻っていた。
俺はカイの番として、そして彼の唯一のパートナーとして、月影城で暮らしている。
カイは、あの日交わした約束通り、もう俺を城の中に閉じ込めようとはしなかった。
それどころか、森の統治に関わる様々なことを俺に教え、時には俺の意見を求めることさえあった。
俺の持つ治癒と生成の力は、森に暮らす動物たちの怪我を治したり、天候不順で弱った植物を活性化させたりするのに、大いに役立った。
最初は俺を警戒していた森の住人たちも、次第に俺を「王の番」として認め、慕ってくれるようになった。
虐げられ、誰にも必要とされていなかった俺が、今では多くの命を癒し、感謝されている。
それは、カイが与えてくれた、何物にも代えがたい幸福だった。
もちろん、カイの独占欲が薄れたわけではない。
むしろ、俺が城の外で活動する時間が増えた分、二人の時間になると、彼は以前にも増して甘く、そして激しく俺を求めるようになった。
「今日は、あの若い鹿とおしゃべりが長かったな」
夜、寝台の中で俺を後ろから抱きしめながら、カイが拗ねたように呟く。
その声には、嫉妬の色が隠しきれていなかった。
「しょうがないだろ、足に怪我をしてたんだから」
俺が苦笑しながら答えると、カイは俺の首筋に顔をうずめ、甘噛みするように吸い付いた。
「んっ……!」
「……お前は、俺のものだということを、体に分からせてやる必要があるな」
彼の低い声が、背後から囁かれる。
振り返る間もなく、大きな手が俺の体を巧みに愛撫し始め、俺はあっという間に彼の作り出す快感の渦に呑み込まれていく。
番になってからというもの、俺の体はカイに触れられることを常に望むように、すっかり変えられてしまっていた。
毎晩のように繰り返される愛の交歓は、互いの魂を結びつけ、その絆をより一層深いものにしてくれた。
ある晴れた日の午後、俺とカイは、森で一番高い丘の上に来ていた。
そこは、俺たちが初めて出会った樫の木がよく見える、見晴らしの良い場所だった。
二人で並んで草の上に座り、眼下に広がる雄大な森を眺める。心地よい風が、俺たちの髪を優しく撫でていった。
「ここから見ると、森が全部見えるんだな」
「ああ。俺が、そして俺たちが治める国だ」
カイはそう言うと、俺の肩をそっと抱き寄せた。
俺は彼の肩に、こてんと頭をもたせかける。
「なあ、カイ」
「なんだ」
「俺、カイに出会えて、本当に良かった」
しみじみと、心の底からそう思った。
もし、あの日、俺が贄としてこの森に捧げられていなかったら。もし、カイが俺を見つけてくれなかったら。
今頃俺は、孤独と絶望の中で、とっくに息絶えていただろう。
「馬鹿を言え。礼を言うのは俺の方だ」
カイは、俺の髪に顔をうずめるようにして言った。
「お前がいない世界など、想像もできん。お前は、俺の光だ、アキ」
その言葉に、胸がいっぱいになる。
俺は彼の腕の中で、そっと目を閉じた。
村で虐げられていた頃の記憶が、ふと蘇る。あの頃は、明日が来ることさえ怖かった。自分の存在価値が分からず、ただ息を潜めて生きていた。
けれど、今は違う。隣には、絶対的な愛情で俺を包んでくれる人がいる。俺を必要としてくれる世界がある。
聖なる刻印は、もはや俺を苦しめる呪いではない。それは、カイと俺とを結びつける、愛の証だ。
「カイ」
「ん?」
「好きだよ」
俺がそう言うと、カイは一瞬驚いたように動きを止めたが、すぐに俺の体を強く抱きしめ返してくれた。
「……知っている。俺は、お前を愛している」
耳元で囁かれるその言葉が、世界で一番甘い響きを持って、俺の心に溶けていく。
俺は顔を上げ、カイの唇に、自分から口づけをした。
穏やかな日差しの中で交わす口づけは、どこまでも優しくて、温かかった。
絶対的な力を持つ銀狼王と、その唯一の弱点であり、同時に最大の力でもある聖なる刻印の青年。
俺たちの物語は、絶望の淵から始まった。けれど、これからは、光に満ちた未来だけが待っている。
この白夜の森の奥深くで、誰にも邪魔されることなく、俺たちは永遠の愛を誓い、睦み合い、そして共に生きていくのだ。
眼下に広がる美しい森を眺めながら、俺はカイの温もりを感じていた。
銀狼の愛は、深く、そして果てしなく、俺の魂を永遠に満たし続けるだろう。
あなたにおすすめの小説
生贄傷物令息は竜人の寵愛で甘く蕩ける
てんつぶ
BL
「僕を食べてもらっても構わない。だからどうか――」
庶子として育ったカラヒは母の死後、引き取られた伯爵家でメイドにすら嗤われる下働き以下の生活を強いられていた。その上義兄からは火傷を負わされるほどの異常な執着を示される。
そんなある日、義母である伯爵夫人はカラヒを神竜の生贄に捧げると言いだして――?
「カラヒ。おれの番いは嫌か」
助けてくれた神竜・エヴィルはカラヒを愛を囁くものの、カラヒは彼の秘密を知ってしまった。
どうして初対面のカラヒを愛する「フリ」をするのか。
どうして竜が言葉を話せるのか。
所詮偽りの番いだとカラヒは分かってしまった。それでも――。
私の番がスパダリだった件について惚気てもいいですか?
バナナマヨネーズ
BL
この世界の最強種である【バイパー】の青年ファイは、番から逃げるために自らに封印魔術を施した。
時は流れ、生きているうちに封印が解けたことを知ったファイは愕然とする間もなく番の存在に気が付くのだ。番を守るためにファイがとった行動は「どうか、貴方様の僕にしてください。ご主人様!!」という、とんでもないものだったが、何故かファイは僕として受け入れられてしまう。更には、番であるクロスにキスやそれ以上を求められてしまって?
※独自バース設定あり
全17話
※小説家になろう様にも掲載しています。
執着騎士団長と、筋肉中毒の治癒師
マンスーン
BL
現代日本から異世界へ転生した治癒師のレオには、誰にも言えない秘密がある。
それは「定期的に極上の筋肉に触れて生命力を摂取しないと、魔力欠乏で死んでしまう」という特異体質であること!
命をつなぐため、そして何より己のフェティシズムを満たすため、レオがターゲットに選んだのは「氷の騎士団長」と恐れられる英雄ガドリエル。
「あぁっ、すごい……硬いですガドリエル様ッ!(大胸筋が)」
「……っ、治療中にそんな熱っぽい声を出すなッ」
生きるために必死で揉みしだくレオを、ガドリエルは「これほど俺の身を案じてくれるとは」と都合よく勘違い
触られたいムッツリ攻め×触りたい変態受け
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
記憶違いの黒狼王弟殿下は婚約者の代わりに僕を溺愛してくる
雨宮里玖
BL
猫獣人のエルヴィンのもとに突然、憧れの黒狼王弟殿下が空から降ってきた。王弟殿下は瀕死の状態で、エルヴィンは命を助けるために禁断の薬を飲ませる。すると王弟殿下は薬の作用で記憶違いを起こし、エルヴィンのことを婚約者と思い込み溺愛してきて……? 勘違い溺愛から始まる、コミカルでちょっと切ないハッピーエンドストーリー。
受け エルヴィン(18)
貧乏小国の猫獣人の第三王子。チビで平凡だが、治癒師を目指して勉強中。正義感にあふれる頑張り屋。
攻め ルーク(18)
強大な勢力を持つ黒狼獣人の王弟。能力は高いがそれをひけらかすこともない。カリスマ性がある。金色の瞳をしている。
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。