「禍の刻印」で生贄にされた俺を、最強の銀狼王は「ようやく見つけた、俺の運命の番だ」と過保護なほど愛し尽くす

水凪しおん

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第12話「銀狼の愛は永遠に」

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 魔術師たちとの戦いから、一年が過ぎた。
 あの日以来、森を侵そうとする者は現れなくなり、白夜の森には穏やかな日々が戻っていた。
 俺はカイの番として、そして彼の唯一のパートナーとして、月影城で暮らしている。

 カイは、あの日交わした約束通り、もう俺を城の中に閉じ込めようとはしなかった。
 それどころか、森の統治に関わる様々なことを俺に教え、時には俺の意見を求めることさえあった。
 俺の持つ治癒と生成の力は、森に暮らす動物たちの怪我を治したり、天候不順で弱った植物を活性化させたりするのに、大いに役立った。
 最初は俺を警戒していた森の住人たちも、次第に俺を「王の番」として認め、慕ってくれるようになった。
 虐げられ、誰にも必要とされていなかった俺が、今では多くの命を癒し、感謝されている。
 それは、カイが与えてくれた、何物にも代えがたい幸福だった。

 もちろん、カイの独占欲が薄れたわけではない。
 むしろ、俺が城の外で活動する時間が増えた分、二人の時間になると、彼は以前にも増して甘く、そして激しく俺を求めるようになった。

「今日は、あの若い鹿とおしゃべりが長かったな」

 夜、寝台の中で俺を後ろから抱きしめながら、カイが拗ねたように呟く。
 その声には、嫉妬の色が隠しきれていなかった。

「しょうがないだろ、足に怪我をしてたんだから」

 俺が苦笑しながら答えると、カイは俺の首筋に顔をうずめ、甘噛みするように吸い付いた。

「んっ……!」
「……お前は、俺のものだということを、体に分からせてやる必要があるな」

 彼の低い声が、背後から囁かれる。
 振り返る間もなく、大きな手が俺の体を巧みに愛撫し始め、俺はあっという間に彼の作り出す快感の渦に呑み込まれていく。
 番になってからというもの、俺の体はカイに触れられることを常に望むように、すっかり変えられてしまっていた。
 毎晩のように繰り返される愛の交歓は、互いの魂を結びつけ、その絆をより一層深いものにしてくれた。

 ある晴れた日の午後、俺とカイは、森で一番高い丘の上に来ていた。
 そこは、俺たちが初めて出会った樫の木がよく見える、見晴らしの良い場所だった。
 二人で並んで草の上に座り、眼下に広がる雄大な森を眺める。心地よい風が、俺たちの髪を優しく撫でていった。

「ここから見ると、森が全部見えるんだな」
「ああ。俺が、そして俺たちが治める国だ」

 カイはそう言うと、俺の肩をそっと抱き寄せた。
 俺は彼の肩に、こてんと頭をもたせかける。

「なあ、カイ」
「なんだ」
「俺、カイに出会えて、本当に良かった」

 しみじみと、心の底からそう思った。
 もし、あの日、俺が贄としてこの森に捧げられていなかったら。もし、カイが俺を見つけてくれなかったら。
 今頃俺は、孤独と絶望の中で、とっくに息絶えていただろう。

「馬鹿を言え。礼を言うのは俺の方だ」

 カイは、俺の髪に顔をうずめるようにして言った。

「お前がいない世界など、想像もできん。お前は、俺の光だ、アキ」

 その言葉に、胸がいっぱいになる。
 俺は彼の腕の中で、そっと目を閉じた。
 村で虐げられていた頃の記憶が、ふと蘇る。あの頃は、明日が来ることさえ怖かった。自分の存在価値が分からず、ただ息を潜めて生きていた。
 けれど、今は違う。隣には、絶対的な愛情で俺を包んでくれる人がいる。俺を必要としてくれる世界がある。
 聖なる刻印は、もはや俺を苦しめる呪いではない。それは、カイと俺とを結びつける、愛の証だ。

「カイ」
「ん?」
「好きだよ」

 俺がそう言うと、カイは一瞬驚いたように動きを止めたが、すぐに俺の体を強く抱きしめ返してくれた。

「……知っている。俺は、お前を愛している」

 耳元で囁かれるその言葉が、世界で一番甘い響きを持って、俺の心に溶けていく。
 俺は顔を上げ、カイの唇に、自分から口づけをした。
 穏やかな日差しの中で交わす口づけは、どこまでも優しくて、温かかった。

 絶対的な力を持つ銀狼王と、その唯一の弱点であり、同時に最大の力でもある聖なる刻印の青年。
 俺たちの物語は、絶望の淵から始まった。けれど、これからは、光に満ちた未来だけが待っている。
 この白夜の森の奥深くで、誰にも邪魔されることなく、俺たちは永遠の愛を誓い、睦み合い、そして共に生きていくのだ。
 眼下に広がる美しい森を眺めながら、俺はカイの温もりを感じていた。
 銀狼の愛は、深く、そして果てしなく、俺の魂を永遠に満たし続けるだろう。
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