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エピローグ「白夜の森に祝福を」
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あれから、幾つもの季節が巡った。
白夜の森は、今日も変わらず穏やかで、生命の輝きに満ちている。
俺は、月影城の一番高い場所にあるバルコニーで、眼下に広がる森を眺めていた。
あの頃と何も変わらない景色。けれど、俺の隣には、あの頃と同じように、カイが立っている。
「どうした、アキ。そんなに森を眺めて」
カイが、俺の腰を優しく抱き寄せながら言った。
彼の腕の中は、今も昔も、世界で一番安心できる場所だ。
「ううん。ただ、綺麗だなって思って」
俺が微笑み返すと、カイは満足そうにうなずいた。
「お前がこの森を愛してくれるから、森も輝きを増すんだ」
カイの番になってから、俺の人生は一変した。
虐げられ、誰からも必要とされなかった青年はもういない。
今の俺は、白夜の森の王の番として、多くの命を慈しみ、そして多くの命から慕われる存在となった。
俺の力は、森に豊かな実りをもたらし、傷ついた動物たちを癒した。人々は、俺を「慈愛の君」と呼び、敬ってくれる。
もちろん、その力の全ては、カイがいてくれて初めて成り立つものだ。
俺たちは、二人で一つ。互いを支え合い、補い合いながら、この森を治めてきた。
「カイ」
俺は、彼の胸に寄りかかりながら、彼の名前を呼んだ。
「なんだ」
「俺さ、たまに考えるんだ。もし、あの時、カイが俺を見つけてくれなかったらって」
それは、時折ふと胸をよぎる、仮定の話。
カイは、俺の髪に口づけを落としながら、静かに言った。
「ありえない話だ。俺は、必ずお前を見つけ出していただろう。それが、運命だからだ」
有無を言わさぬ、絶対的な自信。彼のこういうところが、俺は昔から好きだった。
「……そうだね」
俺は小さく笑った。
振り返れば、辛いこともたくさんあった。村での孤独な日々。外部からの侵略者との戦い。
けれど、その全ての出来事が、俺たちを強くし、その絆を確かなものにしてくれた。
カイがくれた、果てしない愛。それは、俺の過去の傷を全て癒し、俺に自分を愛することを教えてくれた。
今なら、はっきりと分かる。俺の肩甲骨にあるこの聖なる刻印は、呪いなどではなかった。
それは、カイという運命の相手と出会うための、道標だったのだ。
「アキ」
カイが、俺の顎に手を添え、上を向かせた。
彼の赤い瞳が、昔と少しも変わらない愛情に満ちた熱を帯びて、俺を見つめている。
「これからも、ずっと俺のそばにいろ。一瞬たりとも、離れることは許さん」
それは、まるでプロポーズのような、それでいて彼らしい独占欲に満ちた命令だった。
「言われなくても、そばにいるよ。カイが、俺の全てなんだから」
俺がそう答えると、カイは満足そうに微笑み、俺の唇を塞いだ。
それは、何度も何度も交わしてきた、けれど決して色褪せることのない、魂を確かめ合うような深い口づけだった。
風が、祝福するように俺たちを通り過ぎていく。森の木々が、ざわめきながら俺たちを讃えている。
贄として捧げられた青年の物語は、ここで終わる。
そして、ここから始まるのは、銀狼王とその番が、永遠の愛を育んでいく、終わりのない物語。
白夜の森の奥深く。
俺たちの幸せな日々は、これからもずっと、続いていく。
白夜の森は、今日も変わらず穏やかで、生命の輝きに満ちている。
俺は、月影城の一番高い場所にあるバルコニーで、眼下に広がる森を眺めていた。
あの頃と何も変わらない景色。けれど、俺の隣には、あの頃と同じように、カイが立っている。
「どうした、アキ。そんなに森を眺めて」
カイが、俺の腰を優しく抱き寄せながら言った。
彼の腕の中は、今も昔も、世界で一番安心できる場所だ。
「ううん。ただ、綺麗だなって思って」
俺が微笑み返すと、カイは満足そうにうなずいた。
「お前がこの森を愛してくれるから、森も輝きを増すんだ」
カイの番になってから、俺の人生は一変した。
虐げられ、誰からも必要とされなかった青年はもういない。
今の俺は、白夜の森の王の番として、多くの命を慈しみ、そして多くの命から慕われる存在となった。
俺の力は、森に豊かな実りをもたらし、傷ついた動物たちを癒した。人々は、俺を「慈愛の君」と呼び、敬ってくれる。
もちろん、その力の全ては、カイがいてくれて初めて成り立つものだ。
俺たちは、二人で一つ。互いを支え合い、補い合いながら、この森を治めてきた。
「カイ」
俺は、彼の胸に寄りかかりながら、彼の名前を呼んだ。
「なんだ」
「俺さ、たまに考えるんだ。もし、あの時、カイが俺を見つけてくれなかったらって」
それは、時折ふと胸をよぎる、仮定の話。
カイは、俺の髪に口づけを落としながら、静かに言った。
「ありえない話だ。俺は、必ずお前を見つけ出していただろう。それが、運命だからだ」
有無を言わさぬ、絶対的な自信。彼のこういうところが、俺は昔から好きだった。
「……そうだね」
俺は小さく笑った。
振り返れば、辛いこともたくさんあった。村での孤独な日々。外部からの侵略者との戦い。
けれど、その全ての出来事が、俺たちを強くし、その絆を確かなものにしてくれた。
カイがくれた、果てしない愛。それは、俺の過去の傷を全て癒し、俺に自分を愛することを教えてくれた。
今なら、はっきりと分かる。俺の肩甲骨にあるこの聖なる刻印は、呪いなどではなかった。
それは、カイという運命の相手と出会うための、道標だったのだ。
「アキ」
カイが、俺の顎に手を添え、上を向かせた。
彼の赤い瞳が、昔と少しも変わらない愛情に満ちた熱を帯びて、俺を見つめている。
「これからも、ずっと俺のそばにいろ。一瞬たりとも、離れることは許さん」
それは、まるでプロポーズのような、それでいて彼らしい独占欲に満ちた命令だった。
「言われなくても、そばにいるよ。カイが、俺の全てなんだから」
俺がそう答えると、カイは満足そうに微笑み、俺の唇を塞いだ。
それは、何度も何度も交わしてきた、けれど決して色褪せることのない、魂を確かめ合うような深い口づけだった。
風が、祝福するように俺たちを通り過ぎていく。森の木々が、ざわめきながら俺たちを讃えている。
贄として捧げられた青年の物語は、ここで終わる。
そして、ここから始まるのは、銀狼王とその番が、永遠の愛を育んでいく、終わりのない物語。
白夜の森の奥深く。
俺たちの幸せな日々は、これからもずっと、続いていく。
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