15 / 15
エピローグ「白夜の森に祝福を」
しおりを挟む
あれから、幾つもの季節が巡った。
白夜の森は、今日も変わらず穏やかで、生命の輝きに満ちている。
俺は、月影城の一番高い場所にあるバルコニーで、眼下に広がる森を眺めていた。
あの頃と何も変わらない景色。けれど、俺の隣には、あの頃と同じように、カイが立っている。
「どうした、アキ。そんなに森を眺めて」
カイが、俺の腰を優しく抱き寄せながら言った。
彼の腕の中は、今も昔も、世界で一番安心できる場所だ。
「ううん。ただ、綺麗だなって思って」
俺が微笑み返すと、カイは満足そうにうなずいた。
「お前がこの森を愛してくれるから、森も輝きを増すんだ」
カイの番になってから、俺の人生は一変した。
虐げられ、誰からも必要とされなかった青年はもういない。
今の俺は、白夜の森の王の番として、多くの命を慈しみ、そして多くの命から慕われる存在となった。
俺の力は、森に豊かな実りをもたらし、傷ついた動物たちを癒した。人々は、俺を「慈愛の君」と呼び、敬ってくれる。
もちろん、その力の全ては、カイがいてくれて初めて成り立つものだ。
俺たちは、二人で一つ。互いを支え合い、補い合いながら、この森を治めてきた。
「カイ」
俺は、彼の胸に寄りかかりながら、彼の名前を呼んだ。
「なんだ」
「俺さ、たまに考えるんだ。もし、あの時、カイが俺を見つけてくれなかったらって」
それは、時折ふと胸をよぎる、仮定の話。
カイは、俺の髪に口づけを落としながら、静かに言った。
「ありえない話だ。俺は、必ずお前を見つけ出していただろう。それが、運命だからだ」
有無を言わさぬ、絶対的な自信。彼のこういうところが、俺は昔から好きだった。
「……そうだね」
俺は小さく笑った。
振り返れば、辛いこともたくさんあった。村での孤独な日々。外部からの侵略者との戦い。
けれど、その全ての出来事が、俺たちを強くし、その絆を確かなものにしてくれた。
カイがくれた、果てしない愛。それは、俺の過去の傷を全て癒し、俺に自分を愛することを教えてくれた。
今なら、はっきりと分かる。俺の肩甲骨にあるこの聖なる刻印は、呪いなどではなかった。
それは、カイという運命の相手と出会うための、道標だったのだ。
「アキ」
カイが、俺の顎に手を添え、上を向かせた。
彼の赤い瞳が、昔と少しも変わらない愛情に満ちた熱を帯びて、俺を見つめている。
「これからも、ずっと俺のそばにいろ。一瞬たりとも、離れることは許さん」
それは、まるでプロポーズのような、それでいて彼らしい独占欲に満ちた命令だった。
「言われなくても、そばにいるよ。カイが、俺の全てなんだから」
俺がそう答えると、カイは満足そうに微笑み、俺の唇を塞いだ。
それは、何度も何度も交わしてきた、けれど決して色褪せることのない、魂を確かめ合うような深い口づけだった。
風が、祝福するように俺たちを通り過ぎていく。森の木々が、ざわめきながら俺たちを讃えている。
贄として捧げられた青年の物語は、ここで終わる。
そして、ここから始まるのは、銀狼王とその番が、永遠の愛を育んでいく、終わりのない物語。
白夜の森の奥深く。
俺たちの幸せな日々は、これからもずっと、続いていく。
白夜の森は、今日も変わらず穏やかで、生命の輝きに満ちている。
俺は、月影城の一番高い場所にあるバルコニーで、眼下に広がる森を眺めていた。
あの頃と何も変わらない景色。けれど、俺の隣には、あの頃と同じように、カイが立っている。
「どうした、アキ。そんなに森を眺めて」
カイが、俺の腰を優しく抱き寄せながら言った。
彼の腕の中は、今も昔も、世界で一番安心できる場所だ。
「ううん。ただ、綺麗だなって思って」
俺が微笑み返すと、カイは満足そうにうなずいた。
「お前がこの森を愛してくれるから、森も輝きを増すんだ」
カイの番になってから、俺の人生は一変した。
虐げられ、誰からも必要とされなかった青年はもういない。
今の俺は、白夜の森の王の番として、多くの命を慈しみ、そして多くの命から慕われる存在となった。
俺の力は、森に豊かな実りをもたらし、傷ついた動物たちを癒した。人々は、俺を「慈愛の君」と呼び、敬ってくれる。
もちろん、その力の全ては、カイがいてくれて初めて成り立つものだ。
俺たちは、二人で一つ。互いを支え合い、補い合いながら、この森を治めてきた。
「カイ」
俺は、彼の胸に寄りかかりながら、彼の名前を呼んだ。
「なんだ」
「俺さ、たまに考えるんだ。もし、あの時、カイが俺を見つけてくれなかったらって」
それは、時折ふと胸をよぎる、仮定の話。
カイは、俺の髪に口づけを落としながら、静かに言った。
「ありえない話だ。俺は、必ずお前を見つけ出していただろう。それが、運命だからだ」
有無を言わさぬ、絶対的な自信。彼のこういうところが、俺は昔から好きだった。
「……そうだね」
俺は小さく笑った。
振り返れば、辛いこともたくさんあった。村での孤独な日々。外部からの侵略者との戦い。
けれど、その全ての出来事が、俺たちを強くし、その絆を確かなものにしてくれた。
カイがくれた、果てしない愛。それは、俺の過去の傷を全て癒し、俺に自分を愛することを教えてくれた。
今なら、はっきりと分かる。俺の肩甲骨にあるこの聖なる刻印は、呪いなどではなかった。
それは、カイという運命の相手と出会うための、道標だったのだ。
「アキ」
カイが、俺の顎に手を添え、上を向かせた。
彼の赤い瞳が、昔と少しも変わらない愛情に満ちた熱を帯びて、俺を見つめている。
「これからも、ずっと俺のそばにいろ。一瞬たりとも、離れることは許さん」
それは、まるでプロポーズのような、それでいて彼らしい独占欲に満ちた命令だった。
「言われなくても、そばにいるよ。カイが、俺の全てなんだから」
俺がそう答えると、カイは満足そうに微笑み、俺の唇を塞いだ。
それは、何度も何度も交わしてきた、けれど決して色褪せることのない、魂を確かめ合うような深い口づけだった。
風が、祝福するように俺たちを通り過ぎていく。森の木々が、ざわめきながら俺たちを讃えている。
贄として捧げられた青年の物語は、ここで終わる。
そして、ここから始まるのは、銀狼王とその番が、永遠の愛を育んでいく、終わりのない物語。
白夜の森の奥深く。
俺たちの幸せな日々は、これからもずっと、続いていく。
147
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
呪われ竜騎士とヤンデレ魔法使いの打算
てんつぶ
BL
「呪いは解くので、結婚しませんか?」
竜を愛する竜騎士・リウは、横暴な第二王子を庇って代わりに竜の呪いを受けてしまった。
痛みに身を裂かれる日々の中、偶然出会った天才魔法使い・ラーゴが痛みを魔法で解消してくれた上、解呪を手伝ってくれるという。
だがその条件は「ラーゴと結婚すること」――。
初対面から好意を抱かれる理由は分からないものの、竜騎士の死は竜の死だ。魔法使い・ラーゴの提案に飛びつき、偽りの婚約者となるリウだったが――。
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
生贄傷物令息は竜人の寵愛で甘く蕩ける
てんつぶ
BL
「僕を食べてもらっても構わない。だからどうか――」
庶子として育ったカラヒは母の死後、引き取られた伯爵家でメイドにすら嗤われる下働き以下の生活を強いられていた。その上義兄からは火傷を負わされるほどの異常な執着を示される。
そんなある日、義母である伯爵夫人はカラヒを神竜の生贄に捧げると言いだして――?
「カラヒ。おれの番いは嫌か」
助けてくれた神竜・エヴィルはカラヒを愛を囁くものの、カラヒは彼の秘密を知ってしまった。
どうして初対面のカラヒを愛する「フリ」をするのか。
どうして竜が言葉を話せるのか。
所詮偽りの番いだとカラヒは分かってしまった。それでも――。
私の番がスパダリだった件について惚気てもいいですか?
バナナマヨネーズ
BL
この世界の最強種である【バイパー】の青年ファイは、番から逃げるために自らに封印魔術を施した。
時は流れ、生きているうちに封印が解けたことを知ったファイは愕然とする間もなく番の存在に気が付くのだ。番を守るためにファイがとった行動は「どうか、貴方様の僕にしてください。ご主人様!!」という、とんでもないものだったが、何故かファイは僕として受け入れられてしまう。更には、番であるクロスにキスやそれ以上を求められてしまって?
※独自バース設定あり
全17話
※小説家になろう様にも掲載しています。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる