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第16話「戦いの狼煙」
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ジャファルの断固たる拒絶は、すぐにサルディス王ゴルザールの元へと届けられた。
「……面白い。あの若造、この俺に楯突くか」
ゴルザールは、報告を聞くと、玉座で不気味なほど静かに笑った。その目は、一切笑っていない。
「良い口実ができたというものだ。全軍に通達せよ。生意気なバシラに、我が国の恐ろしさを骨の髄まで教え込んでやると」
「はっ!」
「目標は、バシラの王都。そして、『影の聖人』ノアの身柄確保だ。生け捕りにしろ。奴は、我が国が砂漠の覇者となるための、重要な駒となる」
ゴルザールの号令一下、サルディス国は瞬く間に臨戦態勢に入った。圧倒的な数を誇る兵士たちが、武具の音を鳴らし、地響きを立てながら国境へと集結していく。
そして、数日後。
サルディス国は、「バシラ王国による度重なる侮辱的行為」を口実に、正式に宣戦を布告。
その報は、バシラ王宮を大きく揺るがした。
「サルディスが、攻めてくる……」
謁見の間でその知らせを聞いたノアは、顔面蒼白になった。
自分のせいで。
自分がこの国に来たせいで。
自分の力に、サルディスが目をつけたせいで、戦争が起きてしまう。
罪悪感が、冷たい刃となってノアの心を突き刺す。もし自分がここにいなければ、ジャファルが苦しむことも、バシラの民が戦火に怯えることもなかったのではないか。
「私のせいだ……。私が、この国に災いを……」
その場で崩れ落ちそうになったノアの体を、逞しい腕が背後から力強く支えた。振り返るまでもなく、それがジャファルであるとわかった。
「違う、ノア」
耳元で囁かれる、落ち着いた、それでいて力強い声。
「お前のせいではない。これは、以前からバシラを狙っていたサルディスの野心が、お前という存在を口実に、表に出てきたに過ぎない。いつかは必ず起きていた戦いだ」
ジャファルはノアの体を自分の方へと向かせ、その震える両肩を掴んだ。
「お前は災いなどではない。お前は、この戦いに勝利するための、我らの希望の光だ」
「でも……!」
「私を信じろ、ノア」
瑠璃色の瞳が、ノアの不安をすべて見透かすように、じっと見つめている。
「私は、お前も、この国も、必ず守ってみせる。だから、自分を責めるな」
その言葉は、不思議な力を持っていた。ジャファルにそう言われると、本当に大丈夫だという気がしてくる。ノアは、こくりと頷いた。
ジャファルは、集まった大臣や将軍たちに向き直る。その顔は、もはやノアに見せた優しい恋人のものではなく、国を背負う王の顔に戻っていた。
「全軍に告ぐ!直ちに迎撃の準備を整えよ!我らは、一歩も退かぬ!我らが愛するバシラを、土足で踏み荒らそうとする蛮族どもに、鉄槌を下すのだ!」
王の檄に、その場にいた者たちの士気が一気に高まる。
「「「オオオォォォ!!」」」
雄叫びが、王宮を揺るがした。
バシラとサルディス、砂漠の二大国の存亡をかけた戦いの狼煙が、今、上がった。
「……面白い。あの若造、この俺に楯突くか」
ゴルザールは、報告を聞くと、玉座で不気味なほど静かに笑った。その目は、一切笑っていない。
「良い口実ができたというものだ。全軍に通達せよ。生意気なバシラに、我が国の恐ろしさを骨の髄まで教え込んでやると」
「はっ!」
「目標は、バシラの王都。そして、『影の聖人』ノアの身柄確保だ。生け捕りにしろ。奴は、我が国が砂漠の覇者となるための、重要な駒となる」
ゴルザールの号令一下、サルディス国は瞬く間に臨戦態勢に入った。圧倒的な数を誇る兵士たちが、武具の音を鳴らし、地響きを立てながら国境へと集結していく。
そして、数日後。
サルディス国は、「バシラ王国による度重なる侮辱的行為」を口実に、正式に宣戦を布告。
その報は、バシラ王宮を大きく揺るがした。
「サルディスが、攻めてくる……」
謁見の間でその知らせを聞いたノアは、顔面蒼白になった。
自分のせいで。
自分がこの国に来たせいで。
自分の力に、サルディスが目をつけたせいで、戦争が起きてしまう。
罪悪感が、冷たい刃となってノアの心を突き刺す。もし自分がここにいなければ、ジャファルが苦しむことも、バシラの民が戦火に怯えることもなかったのではないか。
「私のせいだ……。私が、この国に災いを……」
その場で崩れ落ちそうになったノアの体を、逞しい腕が背後から力強く支えた。振り返るまでもなく、それがジャファルであるとわかった。
「違う、ノア」
耳元で囁かれる、落ち着いた、それでいて力強い声。
「お前のせいではない。これは、以前からバシラを狙っていたサルディスの野心が、お前という存在を口実に、表に出てきたに過ぎない。いつかは必ず起きていた戦いだ」
ジャファルはノアの体を自分の方へと向かせ、その震える両肩を掴んだ。
「お前は災いなどではない。お前は、この戦いに勝利するための、我らの希望の光だ」
「でも……!」
「私を信じろ、ノア」
瑠璃色の瞳が、ノアの不安をすべて見透かすように、じっと見つめている。
「私は、お前も、この国も、必ず守ってみせる。だから、自分を責めるな」
その言葉は、不思議な力を持っていた。ジャファルにそう言われると、本当に大丈夫だという気がしてくる。ノアは、こくりと頷いた。
ジャファルは、集まった大臣や将軍たちに向き直る。その顔は、もはやノアに見せた優しい恋人のものではなく、国を背負う王の顔に戻っていた。
「全軍に告ぐ!直ちに迎撃の準備を整えよ!我らは、一歩も退かぬ!我らが愛するバシラを、土足で踏み荒らそうとする蛮族どもに、鉄槌を下すのだ!」
王の檄に、その場にいた者たちの士気が一気に高まる。
「「「オオオォォォ!!」」」
雄叫びが、王宮を揺るがした。
バシラとサルディス、砂漠の二大国の存亡をかけた戦いの狼煙が、今、上がった。
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