役立たずと勇者パーティーから追放された俺、人間嫌いの魔族様に「君は私の光だ」と求婚され溺愛される

水凪しおん

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番外編 第2話「森の領主様は嫉妬深い」

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 リアムとゼノンの噂は、森の動物たちや風の精霊たちを通じて、少しずつ近隣の種族にも伝わっていった。そんなある日、一人の若者が森を訪ねてきた。長く尖った耳と、透き通るような美しさを持つ、エルフの青年だった。彼は希少な薬草を探しに来たと言い、森の主であるゼノンに礼儀正しく挨拶をした。
「君が、リアムだね。噂は聞いているよ。君の癒やしの力は、森の精霊たちからも祝福されているそうだ」
 エルフの青年──エリアスは、リアムの持つ清らかな魔力と、誰に対しても分け隔てなく接する優しい人柄にすぐに感銘を受け、親しげに話しかけてきた。リアムも、久しぶりに自分たち以外の誰かと話せるのが嬉しくて、エリアスと薬草の話で盛り上がっていた。
 その様子を、少し離れた場所からゼノンがじっと見つめている。その金の瞳には、明らかに「面白くない」という感情が宿っていた。
 エリアスが、薬草の見分け方を教えるためにリアムの手にそっと触れた瞬間、ゼノンの眉がピクリと動いた。次の瞬間、エリアスが持っていた薬草かごが、突風によって彼の頭上に落ちてきた。
「わっ!」
 幸い怪我はなかったが、偶然にしては出来すぎている。
 その後も、エリアスがリアムに近づこうとするたびに、なぜか木の枝が彼の行く手を阻んだり、足元の蔓が絡みついたりといった、ささやかな不運が彼を襲った。リアムは全く気づいていないが、エリアスは背後から注がれる、冷たくも強力なプレッシャーをひしひしと感じていた。
 夕食の席でも、リアムの隣に座ろうとしたエリアスの椅子だけが、なぜかガタリと音を立てて倒れる。結局、彼はリアムの正面、ゼノンのすぐ隣という針の筵のような席に座らされることになった。
 その夜、エリアスが客室へと戻った後、リアムはどこか不機嫌そうなゼノンに首を傾げた。
「ゼノンさん、どうしたんですか? 今日はなんだか、静かですね」
 ゼノンは書物を読むふりをしながら、視線も合わせずにぶっきらぼうに答える。
「……別に、いつも通りだ」
 どう見てもいつも通りではない。リアムが彼の顔を覗き込むようにすると、ゼノンは気まずそうに顔を背けた。その姿が、まるで拗ねている子供のようで、リアムは思わず微笑んでしまう。
「もしかして……やきもち、ですか?」
 図星だったらしい。ゼノンの肩が微かに跳ねた。彼はしばらく黙り込んでいたが、やがて観念したように、低い声で本音を漏らした。
「……お前は、誰にでも優しすぎる」
 そして、リアムの手を取ると、自分の胸に引き寄せた。
「……お前は、私だけのものだ」
 その独占欲に満ちた言葉と、不安げに揺れる金の瞳に、リアムの心は愛しさでいっぱいになった。この強大な魔族の領主が、自分のことでこんなにも心を乱している。それがたまらなく嬉しい。
 リアムは、ゼノンの首に腕を回すと、彼の唇にそっと自分の唇を重ねた。
「僕は、ゼノンさんだけのものですよ」
 甘いキスが、彼の不安をゆっくりと溶かしていく。嫉妬深い森の領主様は、リアムからの愛情表現にだけは、全く敵わないのだった。
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