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第3話「暴かれた秘密と主従の逆転」
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意識が戻ると、まず感じたのは慣れ親しんだ天蓋の模様と柔らかな寝台の感触だった。
そこは、俺の自室ではなく、ヴァレンティン公爵邸で最も豪奢な主君の寝室だった。
『なぜ、俺がラッセル様の寝室に……』
混乱する頭で身体を起こそうとして、すぐに異変に気づいた。
身体に力が入らない。
それどころか、骨の髄まで溶かしてしまいそうな甘い気怠さが全身を支配していた。
そして、部屋にはむせ返るほどの甘い香りが満ちている。
俺自身の身体から放たれる、Ωのフェロモンだ。
薬は完全に効果を失い、俺の身体はΩとしての本性を隠すことなく晒していた。
「目が覚めたか、レオンハルト」
すぐ側から、穏やかな声がした。
見ると、ラッセル様がベッドサイドの椅子に腰掛け、静かにこちらを見つめていた。
その表情はいつもと変わらないが、紫紺の瞳の奥には見たことのない熱が宿っている。
「ラッセル様……!申し訳ございません、俺は、とんだ醜態を……!」
慌てて寝台から降りようとするが、足がもつれてシーツの上に崩れ落ちる。
そんな無様な俺を、ラッセル様はただ静かに見つめているだけだった。
「醜態などではない。むしろ、とても美しい」
「え……?」
「ずっと、この日を待っていたんだ。お前が、本当の姿を見せてくれる日を」
ラッセル様はゆっくりと立ち上がると、俺の前にひざまずき頬にそっと手を伸ばした。
その指先が触れた瞬間、びくりと身体が跳ねる。
熱い。
まるで火傷をしそうなほど、彼の指は熱かった。
「お前がΩになったことには、随分前から気づいていた。必死に薬で隠していることにもな」
やはり、このお方はすべてお見通しだったのだ。
俺の浅はかな画策など、最初から意味をなしていなかった。
絶望に打ちひしがれる俺の髪を、ラッセル様は慈しむように梳く。
「ラッセル様、俺は……もう、あなた様にお仕えする資格はございません。どうか、この屋敷から追い出してください」
Ωになった俺が、彼の隣にいることなど許されない。
彼の輝かしい未来の足枷になるだけだ。
それが分かっているから、涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。
しかし、ラッセル様は静かに首を横に振った。
「追い出す?なぜ?お前はどこにも行かせない」
その瞬間、ラッセル様の身体から、夜会で感じたものとは比べ物にならないほど濃厚で支配的なαのフェロモンが放たれた。
それは、抗うことなど到底できない絶対的な力。
俺のΩとしての本能が、このαにひれ伏せと叫んでいる。
「あ……ぅ……」
息ができない。
身体の自由が奪われ、ただ目の前の主君を見つめることしかできなかった。
「いいか、レオンハルト。よく聞け」
ラッセル様は、俺の顎を掴んで上を向かせるとその紫紺の瞳で真っ直ぐに俺を射抜いた。
「これまでの主従関係は、今日で終わりだ」
「な……にを……」
「これからは、私が『主』で、お前が『従』ではない。私が『α』で、お前が私の『Ω』だ。私が、お前を守り、愛し、誰にも渡さずに独占する。お前はただ、私にすべてを委ねればいい」
それは、命令だった。
病弱な主君の姿はどこにもない。
そこにいたのは、獲物を手に入れた獰猛な獣のような圧倒的な支配者の顔をしたαだった。
「お前が私を守る必要はもうない。これからは、私が片時も離さずお前の世話を焼いてやる。食事も、風呂も、着替えも、すべてだ。お前は私の腕の中で、ただ甘えていればいい」
戸惑い、恐怖し、そしてなぜか、心のどこかで安堵している自分がいた。
もう、偽らなくていい。
もう、一人で苦しまなくていい。
その事実に、張り詰めていた糸がぷつりと切れた。
「そんな……こと……」
「できるさ。いや、そうする。これは決定事項だ」
ラッセル様はそう言うと、俺の唇にそっと自らの唇を重ねた。
初めて触れる、柔らかく熱い感触。
それは、忠誠を誓った主君から与えられるものではなく、一人のαがΩに与える所有の証だった。
「お前はもう、私のものだ、レオンハルト。誰にも、神にさえも、渡さない」
甘く囁かれた言葉と共に、俺の意識は再び深い闇の中へと落ちていった。
絶対だったはずの世界が、音を立てて崩れていく。
そして、新しい関係が否応なく始まろうとしていた。
そこは、俺の自室ではなく、ヴァレンティン公爵邸で最も豪奢な主君の寝室だった。
『なぜ、俺がラッセル様の寝室に……』
混乱する頭で身体を起こそうとして、すぐに異変に気づいた。
身体に力が入らない。
それどころか、骨の髄まで溶かしてしまいそうな甘い気怠さが全身を支配していた。
そして、部屋にはむせ返るほどの甘い香りが満ちている。
俺自身の身体から放たれる、Ωのフェロモンだ。
薬は完全に効果を失い、俺の身体はΩとしての本性を隠すことなく晒していた。
「目が覚めたか、レオンハルト」
すぐ側から、穏やかな声がした。
見ると、ラッセル様がベッドサイドの椅子に腰掛け、静かにこちらを見つめていた。
その表情はいつもと変わらないが、紫紺の瞳の奥には見たことのない熱が宿っている。
「ラッセル様……!申し訳ございません、俺は、とんだ醜態を……!」
慌てて寝台から降りようとするが、足がもつれてシーツの上に崩れ落ちる。
そんな無様な俺を、ラッセル様はただ静かに見つめているだけだった。
「醜態などではない。むしろ、とても美しい」
「え……?」
「ずっと、この日を待っていたんだ。お前が、本当の姿を見せてくれる日を」
ラッセル様はゆっくりと立ち上がると、俺の前にひざまずき頬にそっと手を伸ばした。
その指先が触れた瞬間、びくりと身体が跳ねる。
熱い。
まるで火傷をしそうなほど、彼の指は熱かった。
「お前がΩになったことには、随分前から気づいていた。必死に薬で隠していることにもな」
やはり、このお方はすべてお見通しだったのだ。
俺の浅はかな画策など、最初から意味をなしていなかった。
絶望に打ちひしがれる俺の髪を、ラッセル様は慈しむように梳く。
「ラッセル様、俺は……もう、あなた様にお仕えする資格はございません。どうか、この屋敷から追い出してください」
Ωになった俺が、彼の隣にいることなど許されない。
彼の輝かしい未来の足枷になるだけだ。
それが分かっているから、涙が溢れそうになるのを必死にこらえた。
しかし、ラッセル様は静かに首を横に振った。
「追い出す?なぜ?お前はどこにも行かせない」
その瞬間、ラッセル様の身体から、夜会で感じたものとは比べ物にならないほど濃厚で支配的なαのフェロモンが放たれた。
それは、抗うことなど到底できない絶対的な力。
俺のΩとしての本能が、このαにひれ伏せと叫んでいる。
「あ……ぅ……」
息ができない。
身体の自由が奪われ、ただ目の前の主君を見つめることしかできなかった。
「いいか、レオンハルト。よく聞け」
ラッセル様は、俺の顎を掴んで上を向かせるとその紫紺の瞳で真っ直ぐに俺を射抜いた。
「これまでの主従関係は、今日で終わりだ」
「な……にを……」
「これからは、私が『主』で、お前が『従』ではない。私が『α』で、お前が私の『Ω』だ。私が、お前を守り、愛し、誰にも渡さずに独占する。お前はただ、私にすべてを委ねればいい」
それは、命令だった。
病弱な主君の姿はどこにもない。
そこにいたのは、獲物を手に入れた獰猛な獣のような圧倒的な支配者の顔をしたαだった。
「お前が私を守る必要はもうない。これからは、私が片時も離さずお前の世話を焼いてやる。食事も、風呂も、着替えも、すべてだ。お前は私の腕の中で、ただ甘えていればいい」
戸惑い、恐怖し、そしてなぜか、心のどこかで安堵している自分がいた。
もう、偽らなくていい。
もう、一人で苦しまなくていい。
その事実に、張り詰めていた糸がぷつりと切れた。
「そんな……こと……」
「できるさ。いや、そうする。これは決定事項だ」
ラッセル様はそう言うと、俺の唇にそっと自らの唇を重ねた。
初めて触れる、柔らかく熱い感触。
それは、忠誠を誓った主君から与えられるものではなく、一人のαがΩに与える所有の証だった。
「お前はもう、私のものだ、レオンハルト。誰にも、神にさえも、渡さない」
甘く囁かれた言葉と共に、俺の意識は再び深い闇の中へと落ちていった。
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