15 / 15
エピローグ「銀色の髪に祝福を」
しおりを挟む
あれから、五年が経った。
ヴァレンティン公爵領は、かつてないほどの繁栄を謳歌していた。
俺が導入した農業改革は領内全土に広まり、安定した食料供給を実現した。
さらに、開発した特産品は他国との交易の目玉となり、公爵家の財政は潤い領民たちの暮らしは豊かになった。
そして、その中心には常に公爵であるラッセルと、その伴侶である俺がいた。
「レオン、見ろ。今年も豊作だ」
黄金色に輝く麦畑を見下ろす丘の上で、ラッセルが俺の肩を抱きながら言った。
五年の月日は、彼をさらに洗練された威厳のある当主へと成長させていた。
だが、俺に向けるその眼差しだけは昔と少しも変わらず、深い愛情に満ちている。
「ああ。みんなが頑張ったからだな、ラス」
俺も、すっかりその愛称で彼を呼ぶことに慣れていた。
俺たちの関係も、穏やかで満ち足りたものだった。
時折、彼が執務室で根を詰めすぎていると、俺が夜食を持って行って無理やり休ませる。
逆に、俺が新しい領地改革の案に夢中になっていると、彼が「少しは私のことも構え」と拗ねてみせる。
主従だった頃には考えられなかった、対等で甘やかな日々。
それが、俺たちの日常だった。
そんな俺たちの間には、三年前、新しい家族が増えていた。
「父様!見てください!」
丘の下から、元気な声が聞こえる。
声のする方を見ると、小さな男の子がこちらに向かって一生懸命に手を振っていた。
銀色の髪と、紫紺の瞳。
ラッセルにそっくりなその子は、俺たちの子、エミリオだ。
Ωである俺が、ラッセルの子を身ごもったのは奇跡のような出来事だった。
エミリオが生まれた日、ラッセルは俺の手を握りしめ、ただ「ありがとう」と繰り返しながら静かに涙を流していた。
「エミリオ、危ないから走るな!」
俺が声をかけると、エミリオはへらりと笑ってこてんと麦畑の中に転がった。
すぐにむくりと起き上がり、服についた土を払って、こちらへ駆け寄ってくる。
その元気な姿に、俺もラッセルも思わず笑みをこぼした。
エミリオは、αでもΩでもないβとして生を受けた。
それが、俺たちにとっては、何よりの喜びだった。
性に縛られることなく、彼自身の力で自由に生きていってほしい。
そう願っていたからだ。
「お前は、本当に強い子だな」
俺の腕の中に飛び込んできたエミリオの頭を、ラッセルが優しく撫でる。
「大きくなったら、父様みたいに、レオン父様を守るんだ!」
エミリオは、胸を張ってそう言った。
その言葉に、俺とラッセルは顔を見合わせてまた笑った。
かつて、俺はラッセルを守ることだけが生き甲斐だった。
そして、立場が逆転し彼に守られるようになった。
今は、二人でこの子を、そしてこの領地を守っている。
運命は、時に残酷な試練を与える。
だが、それを乗り越えた先にはこんなにも温かく、幸せな未来が待っていることを俺は知っている。
夕日が、黄金色の麦畑と俺たち家族を優しく照らし出していた。
俺は、愛する夫と愛する息子の手を、強く握りしめた。
この幸せが、永遠に続きますように。
銀色に輝く三つの髪が、穏やかな風に吹かれて優しく揺れていた。
ヴァレンティン公爵領は、かつてないほどの繁栄を謳歌していた。
俺が導入した農業改革は領内全土に広まり、安定した食料供給を実現した。
さらに、開発した特産品は他国との交易の目玉となり、公爵家の財政は潤い領民たちの暮らしは豊かになった。
そして、その中心には常に公爵であるラッセルと、その伴侶である俺がいた。
「レオン、見ろ。今年も豊作だ」
黄金色に輝く麦畑を見下ろす丘の上で、ラッセルが俺の肩を抱きながら言った。
五年の月日は、彼をさらに洗練された威厳のある当主へと成長させていた。
だが、俺に向けるその眼差しだけは昔と少しも変わらず、深い愛情に満ちている。
「ああ。みんなが頑張ったからだな、ラス」
俺も、すっかりその愛称で彼を呼ぶことに慣れていた。
俺たちの関係も、穏やかで満ち足りたものだった。
時折、彼が執務室で根を詰めすぎていると、俺が夜食を持って行って無理やり休ませる。
逆に、俺が新しい領地改革の案に夢中になっていると、彼が「少しは私のことも構え」と拗ねてみせる。
主従だった頃には考えられなかった、対等で甘やかな日々。
それが、俺たちの日常だった。
そんな俺たちの間には、三年前、新しい家族が増えていた。
「父様!見てください!」
丘の下から、元気な声が聞こえる。
声のする方を見ると、小さな男の子がこちらに向かって一生懸命に手を振っていた。
銀色の髪と、紫紺の瞳。
ラッセルにそっくりなその子は、俺たちの子、エミリオだ。
Ωである俺が、ラッセルの子を身ごもったのは奇跡のような出来事だった。
エミリオが生まれた日、ラッセルは俺の手を握りしめ、ただ「ありがとう」と繰り返しながら静かに涙を流していた。
「エミリオ、危ないから走るな!」
俺が声をかけると、エミリオはへらりと笑ってこてんと麦畑の中に転がった。
すぐにむくりと起き上がり、服についた土を払って、こちらへ駆け寄ってくる。
その元気な姿に、俺もラッセルも思わず笑みをこぼした。
エミリオは、αでもΩでもないβとして生を受けた。
それが、俺たちにとっては、何よりの喜びだった。
性に縛られることなく、彼自身の力で自由に生きていってほしい。
そう願っていたからだ。
「お前は、本当に強い子だな」
俺の腕の中に飛び込んできたエミリオの頭を、ラッセルが優しく撫でる。
「大きくなったら、父様みたいに、レオン父様を守るんだ!」
エミリオは、胸を張ってそう言った。
その言葉に、俺とラッセルは顔を見合わせてまた笑った。
かつて、俺はラッセルを守ることだけが生き甲斐だった。
そして、立場が逆転し彼に守られるようになった。
今は、二人でこの子を、そしてこの領地を守っている。
運命は、時に残酷な試練を与える。
だが、それを乗り越えた先にはこんなにも温かく、幸せな未来が待っていることを俺は知っている。
夕日が、黄金色の麦畑と俺たち家族を優しく照らし出していた。
俺は、愛する夫と愛する息子の手を、強く握りしめた。
この幸せが、永遠に続きますように。
銀色に輝く三つの髪が、穏やかな風に吹かれて優しく揺れていた。
140
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。
行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。
異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる