男子の本懐

ぱすとらる

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二話

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「酷い有り様じゃな」
「古典の教本通りの~300年前の戦をやろうとしていました。あれでは勝てません。」
「我々の倍の兵を並べながら・・・あ?逃げる兵と、前進する兵が~あーあ、同士討ちを始めています。」
「小六殿も呆れておられるのでしょう。追撃を止めてしまわれました。」
「義兄上も、戦列を退かれて~曲輪山に備えておられまする。」
一息置き、よく日焼けした女子が~年長の女丈婦に問いかける。
「姉上~あの曲輪山の陣~『お上』にあらせられましょうや?」
既婚者の証しである~書き眉をした女性が答える。
「~間違いないでしょう。見知った旗棹ばかり。~我等の中でも選りすぐりが、御守りする『御方』と申さば~」
戦場には不釣り合いな女子が三人~陣中の卓を囲んでいる。
一番の下座~日焼けした女子は、沈黙に耐えられず、焦れた様子で
「三郎殿はナニをいたしておる?我等は『君側の奸』を成敗し、『お上』に平らかな世を統べて戴くために、はるばる兵を進めて来たと申すに!」
「御母堂様が~人質に捕らわれるのを懸念されておられるのであろう。」
上座に座る『少女』の発言に~日焼けした女子は押し黙る。今一人の、年長の女性は、無表情に沈黙している。日焼けした女子は狼狽えた風に~
「さ、さすがに~そのような恥知らずな真似をしてまで、戦に臨むとは~」
「双葉。『天下無双の武人』を謳われた『父上』を謀殺した輩ぞ?いくら我等の武略が勝っていようと~こと、政略に関しては、赤子も同じじゃ。」
『少女』が発言。続いて、一番の年長の女丈婦が~
「いずれにせよ~『お上』が『東の叛徒』どもを誅滅するには~我等『南の賊軍』の精兵が是我非にも必要です。」
長姉の皮肉めいた~だが適格な現状認識に~
「姉上!『お上』が御降臨あそばされ、『勅』を下していただければ~我は、平伏して従いますぞ?」
「平伏どころか『五体投地』さえ、しかねませんね」
姉の言に、口をへの字に曲げる双葉。図星なだけに、言い返せない。
「皆が得心する理由をつけて~我が軍を『お上』に『接収』して頂く・・・か・・・
『父上』が御健在ならば~この様な面倒は無かったモノを・・・」
「えぇい!あの『寝小便垂れ』はナニをしておる!この様な時の為に、『お上』の御側にお仕えさせているであろうに!」
主君の忘れ形見の『少女』の嘆息に居たたまれなくなった双葉は~愚弟の三郎に毒づいてしまう。長姉である女丈婦は~次妹が、その様な暴言を『敢えて発している』事を理解していた。妹が『役目』を果たしたのならば~長姉である自分が~打開策を提示する番であることも理解していた。
「一姫様。ここは、使者を立てるのが定石かと。」
さして冴えた考えでも無いが~一番『堅実』な策であるのは確かであろう。問題は『誰』を送るかであるが~
「私が!」
双葉が立候補する~が、即座に~
「貴女はダメです。此方の使者に相対するは~どう考えても、三郎殿でしょう。貴女が三郎殿に対して、言を敬し奉る事が~出来るはずがありません!」
実家の嫡男たる三弟に敬称を使いながらも~姉弟間の力関係を、誰よりも長く見ている長姉~派遣軍・第三席・軍監の断言に~返す言葉が無い次妹。
「此処は、権五郎の出番であろう。初葉、直ぐに権五郎を呼んでおくれ。」
『総大将』の少女は~曲輪山に一番近い位置に陣取る~派遣軍・総軍師を努めている『初葉の夫』にお役目を任じた~南の宿老の次席という序列からも~先年まで『お上の近衛』隊長を勤めていた知見からも~そうなることは、自明であろう。
「姫様。有り難う御座います。お役目、立派に果たしてご覧にいれます。」
『夫』に代わり、主君の忘れ形見で『従妹』でもある『一姫』に礼を述べる初葉。次妹に~『長幼』の順よりも尊重しなければならない『序列』~を明示しつつ、手続きを進める。
伝令が伝わり~権五郎とおぼしき一群が、伝達事項の相談のために本陣に向かって来る。が~本陣に向かって来るのは~初葉の夫だけでは無かった。
「姉上!曲輪山に動きが?」
「『お上』も御使者を下されたか?礼を失しては成らぬぞ。ぁ、いや。先ずは私が相対させていただきましょう。」
「いえ、アレは~数がおかしい?~曲輪山の全軍が真っ直ぐ、この本陣に向かって来ます!!」
双葉が叫ぶ。
初葉が顔をひきつらせる。
一姫は深く嘆息し、天を仰いだ。





















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