あなたの声が聞こえた

ベル

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窓の外を眺めながら、私は息をつく。


どれくらい時間が経ったのだろう。
ふと、あなたの笑顔が思い浮かんで、無性に会いたくなった。


「クローズ様...」


あなたは今頃何をなさっているのですか?


すぐに帰ると行って戦に出ていったっきり、戻って来られないじゃないですか。


帰ると約束していた日はもうとっくに過ぎてしまったのに。


あなたの部下達はみな戻ってこられましたよ。負傷をしている者が多かったけれど、あなた以外は全員、家族の元に戻ってきたのよ。


あなたは騎士団長でしょう?
あなたがいなくてどうするのよ。

 

ねぇ



まだ帰ってきてくれないの?







「奥様、余程ショックだったのね」
「当たり前じゃない。あぁ、奥様お可哀想に...」
「クローズ様は部下達を助けるために、お一人で立ち向かっていったそうよ」






「マリー」


ふと、声が聞こえてはっと上を見上げた。少し低めの、温かく優しいあなたの声。


「クローズ様...?」


声なんて聞こえるわけがない。
だけど、確かに聞こえたわ。確かに。


「.....っ、ぅ」


涙が溢れて止まらなかった。
幾度流してきたかわからない涙を流しながら、私は堪えきれずしゃがみ込んでしまう。


わかってるわ、わかってる。
あなたはここにはもういない。


わかってるけれど。


信じられないじゃない。


あの日、約束したじゃない。
必ず私の元に帰るから待っていてくれって。


ひどいわ、約束を守らないなんて。


「嘘つき...」
 

その時、ふわりと優しく風が私を包み込んだ。すまない、とでもいうように。


「マリー、愛してる。だからどうか幸せになってくれ」


幻聴かもしれない。
ずっとずっと、待っていたから。


でも、これは間違いなくあなたの声だとわかった。


お願いだから、帰ってきて...っ



けれど、その日以来あなたの声は聞こえてくることはなかった。
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