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傷つくお姫様
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「.....う..ん...」
目が覚めると、そこは薄暗い物置のような場所でした。
ここはどこ?
体の感覚が戻り、そこで手足を縛られていることに気付きました。これは一体...
マリアが突然階段から落ちてコーラス様が取り乱されたように叫んで...そうだわ。マリアは、マリアは無事なの?記憶が蘇り、私は急に不安になりました。
ガタンっ
突然近くで物音がして、私はビクッと体を震わせました。助けを呼ぼうと走って人にぶつかって、そこからの記憶がないわ。どれくらいここにいるのかしら...
「....おい、そこをどけ」
とても低く高圧的な声が聞こえてきました。苛立ちを隠せないような、そんな声。
「いけません、これ以上は...っ!」
啜り泣く女性の声が聞こえてきました。
だけどこの声は...
「ラエル、様...?」
掠れた声で彼の名を呟きます。そこで初めて自分の声が枯れていることに気が付きました。
次の瞬間、凄い音を立てて何かが壊される音がし、私は声にならない悲鳴をあげて目を瞑りました。
何が起こっているの?!
恐怖でガタガタと体が震え、身動きが取れない私は死を覚悟しました。
「ローズ...っ、ローズ!」
ふわっと温もりに包まれたかと思うと、目の前に愛しい方が見えました。
「ラエル、様...」
「...っ、よかった、...良かった」
私の姿を確認すると、ぎゅうっと抱きしめてきます。かすかに彼の体が震えていました。
何が起きたのか、何故こんな場所に私がいるのかわからないけれど、ラエル様が助けに来てくださったのだとぼんやりと理解しました。
「ローズ...、あぁくそっ、すぐに外すからね」
ラエル様は私が手足を縛られていることに気づくと声を荒げ、手足にキスをしながら縛っていた縄を外してくれました。
「遅くなってすまなかった。本当に...無事でよかった...」
縄を外し終わると再び私を抱きしめ、優しく頭を撫でてくれました。気のせいでしょうか、彼の目に涙が滲んでいるように見えて、私はそっとラエル様の目元を拭いました。
ラエル様はその手を愛しそうに撫で、顔を近づけて優しく口付けをします。
そして安心したのも束の間、私ははっとマリアを思い出し、ラエル様に尋ねました。
「マリアはっ...マリアは無事なのですか!?」
「あぁ。私の担当医に診てもらって治療を受けている頃だ。大事には至らないそうだから安心して」
「良かった...よかった」
マリアに何かあったら私は...彼女は私の大事な親友なのだから。
「さぁ、ローズ。帰ろうか」
ラエル様は私を抱き上げて、ちゅっとおでこにキスを落とし、外へと出ました。
外へと出た瞬間見た光景に、私は息を呑みました。
数十人の騎士たちに数名の男たちが捕らえられていました。男たちは、その...顔が、無惨にも原型を留めていないほど酷いものでした。
そして、見覚えのある女性たちが目に入り、私は驚きました。
ユリアンヌ様とシルキー様、それにいつも行動を共にする数名の令嬢たち。髪の毛はボサボサ、服はビリビリに破れた箇所もありぼろぼろになっています。
何故彼女たちがここに...?
「ラエル公爵様っ!!何故なのですか!?!」
ラエル様を見た瞬間、彼女たちが叫びました。そしてシルキー様は私の姿を見つけると、はっ、と嘲笑うような笑みを浮かべました。
「...なんだ、生きてたのね」
それを聞いて、私は背筋がゾッとしびくりと体を動かしました。ラエル様がそれに気づき、怒りで顔を歪ませます。
まさか、これは全部彼女たちが...?
「ラエル公爵様、何故こんな地味な下流伯爵令嬢なんかが相手なのですか?あなたに相応しいのは私なのに!」
「...黙れ」
「ローズ様、いいことを教えてあげるわ。ラエル公爵様と私は恋仲だったのよ。度々私の家に通ってくださったし、私達はとてもいい関係だったのに...あなたがそれを奪ったのよ!!」
「...黙れと言うのが聞こえないのか?おい、こいつを捕らえろ」
「離しなさいよっ。私を誰だと思っているの?上流階級の伯爵令嬢よ!捕まえるならこの女を捕まえなさい!!」
「...ローズ、すまない。嫌なものを見せてしまったな」
ラエル様は険しい顔をして手で私の視界を遮りました。
「私は嘘なんかついてないわ。ラエル公爵様、忘れたのですか?私の家に通ってくださっていたじゃないですか!?!ねぇ!!!」
悲鳴に近い声を上げるシルキー様を無視し、ラエル様は黙ったまま馬車へと乗り込みました。
「...疲れただろう、ローズ。家に帰ってゆっくり休むといい。ニコラド伯爵様も心配していらっしゃるだろう」
いつもと変わらない笑みを浮かべ、ラエル様はそっと私を抱き寄せました。
その腕に抱かれながら、私はシルキー様の言葉が耳から離れず、呟くように尋ねました。
「...シルキー様のところへ通っていらっしゃったというのは本当ですか?」
一瞬、ラエル様が固まったような気がしました。けれどすぐに優しく私の頭を撫でながら言いました。
「彼女の言うことは気にしなくていい。今は体を休めることを優先してくれ。いいね?」
にこりと笑みを浮かべるラエル様を見ながら、彼が嘘をついているのだとなんとなく分かってしまいました。
そしてそれは、シルキー様から向けられた暴言よりもひどく私を傷つけたのでした。
目が覚めると、そこは薄暗い物置のような場所でした。
ここはどこ?
体の感覚が戻り、そこで手足を縛られていることに気付きました。これは一体...
マリアが突然階段から落ちてコーラス様が取り乱されたように叫んで...そうだわ。マリアは、マリアは無事なの?記憶が蘇り、私は急に不安になりました。
ガタンっ
突然近くで物音がして、私はビクッと体を震わせました。助けを呼ぼうと走って人にぶつかって、そこからの記憶がないわ。どれくらいここにいるのかしら...
「....おい、そこをどけ」
とても低く高圧的な声が聞こえてきました。苛立ちを隠せないような、そんな声。
「いけません、これ以上は...っ!」
啜り泣く女性の声が聞こえてきました。
だけどこの声は...
「ラエル、様...?」
掠れた声で彼の名を呟きます。そこで初めて自分の声が枯れていることに気が付きました。
次の瞬間、凄い音を立てて何かが壊される音がし、私は声にならない悲鳴をあげて目を瞑りました。
何が起こっているの?!
恐怖でガタガタと体が震え、身動きが取れない私は死を覚悟しました。
「ローズ...っ、ローズ!」
ふわっと温もりに包まれたかと思うと、目の前に愛しい方が見えました。
「ラエル、様...」
「...っ、よかった、...良かった」
私の姿を確認すると、ぎゅうっと抱きしめてきます。かすかに彼の体が震えていました。
何が起きたのか、何故こんな場所に私がいるのかわからないけれど、ラエル様が助けに来てくださったのだとぼんやりと理解しました。
「ローズ...、あぁくそっ、すぐに外すからね」
ラエル様は私が手足を縛られていることに気づくと声を荒げ、手足にキスをしながら縛っていた縄を外してくれました。
「遅くなってすまなかった。本当に...無事でよかった...」
縄を外し終わると再び私を抱きしめ、優しく頭を撫でてくれました。気のせいでしょうか、彼の目に涙が滲んでいるように見えて、私はそっとラエル様の目元を拭いました。
ラエル様はその手を愛しそうに撫で、顔を近づけて優しく口付けをします。
そして安心したのも束の間、私ははっとマリアを思い出し、ラエル様に尋ねました。
「マリアはっ...マリアは無事なのですか!?」
「あぁ。私の担当医に診てもらって治療を受けている頃だ。大事には至らないそうだから安心して」
「良かった...よかった」
マリアに何かあったら私は...彼女は私の大事な親友なのだから。
「さぁ、ローズ。帰ろうか」
ラエル様は私を抱き上げて、ちゅっとおでこにキスを落とし、外へと出ました。
外へと出た瞬間見た光景に、私は息を呑みました。
数十人の騎士たちに数名の男たちが捕らえられていました。男たちは、その...顔が、無惨にも原型を留めていないほど酷いものでした。
そして、見覚えのある女性たちが目に入り、私は驚きました。
ユリアンヌ様とシルキー様、それにいつも行動を共にする数名の令嬢たち。髪の毛はボサボサ、服はビリビリに破れた箇所もありぼろぼろになっています。
何故彼女たちがここに...?
「ラエル公爵様っ!!何故なのですか!?!」
ラエル様を見た瞬間、彼女たちが叫びました。そしてシルキー様は私の姿を見つけると、はっ、と嘲笑うような笑みを浮かべました。
「...なんだ、生きてたのね」
それを聞いて、私は背筋がゾッとしびくりと体を動かしました。ラエル様がそれに気づき、怒りで顔を歪ませます。
まさか、これは全部彼女たちが...?
「ラエル公爵様、何故こんな地味な下流伯爵令嬢なんかが相手なのですか?あなたに相応しいのは私なのに!」
「...黙れ」
「ローズ様、いいことを教えてあげるわ。ラエル公爵様と私は恋仲だったのよ。度々私の家に通ってくださったし、私達はとてもいい関係だったのに...あなたがそれを奪ったのよ!!」
「...黙れと言うのが聞こえないのか?おい、こいつを捕らえろ」
「離しなさいよっ。私を誰だと思っているの?上流階級の伯爵令嬢よ!捕まえるならこの女を捕まえなさい!!」
「...ローズ、すまない。嫌なものを見せてしまったな」
ラエル様は険しい顔をして手で私の視界を遮りました。
「私は嘘なんかついてないわ。ラエル公爵様、忘れたのですか?私の家に通ってくださっていたじゃないですか!?!ねぇ!!!」
悲鳴に近い声を上げるシルキー様を無視し、ラエル様は黙ったまま馬車へと乗り込みました。
「...疲れただろう、ローズ。家に帰ってゆっくり休むといい。ニコラド伯爵様も心配していらっしゃるだろう」
いつもと変わらない笑みを浮かべ、ラエル様はそっと私を抱き寄せました。
その腕に抱かれながら、私はシルキー様の言葉が耳から離れず、呟くように尋ねました。
「...シルキー様のところへ通っていらっしゃったというのは本当ですか?」
一瞬、ラエル様が固まったような気がしました。けれどすぐに優しく私の頭を撫でながら言いました。
「彼女の言うことは気にしなくていい。今は体を休めることを優先してくれ。いいね?」
にこりと笑みを浮かべるラエル様を見ながら、彼が嘘をついているのだとなんとなく分かってしまいました。
そしてそれは、シルキー様から向けられた暴言よりもひどく私を傷つけたのでした。
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