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番外編
聖女が世界を救う〜現代〜②
ティア先生の編集担当者の人から待ち合わせ場所として伝えられたのは、ホテルの最上階にあるカフェだった。まるでヨーロッパのお城の中のような内装だ。
なんだか、懐かしさを感じる。
きっと、昔の自分が住んでいた環境にそっくりな作りだからだろう。
体重をかけると沈み込みそうなほどふかふかなソファに、ゆっくりと腰掛ける。
ゆったりと時間が流れているかのようなカフェの雰囲気とは裏腹に、彼女はソワソワと落ち着きがなかった。
メニューをしばらく眺め、時計を見る。
サイン会が終わっても、後片付けなどでおそらくまだ時間がかかるだろう。
よし、ケーキでも食べよう。
今週は特に忙しかったし、たまにはご褒美も必要だ。
美味しそうなケーキが並ぶメニューの写真を眺めながら、一番気になるフルーツタルトを頼むことにした。
メニューから近くにいるウエイターに視線をうつす。
「お決まりですか?」
男性ウエイターは、人当たりの良さそうな笑顔を向けてくる。
「フルーツタルトと、ホットコーヒーをお願いします」
「かしこまりました」
男性はニコッと再度微笑むと、サッとその場を離れていく。
よく分からないけど、なんだか昔からの知り合いのような気がする。
ティア先生…いや、クリスティアがこの世界にいると気づいてから、なんだか不思議な出来事が起きるのだ。
なんとも言葉では表せない。
けれど確実に、この世界には私が過去に生きていた時に出会った人々が、同じように姿形を変えて生きている。
そう、確信できた。
「お待たせいたしました、フルーツタルトとホットコーヒーでございます」
先ほどと同じ男性ウエイターが再び席までやってきた。
「ありがとうございます」
普段食べているものとは明らかに輝きの違う果物がふんだんに乗ったタルト。さすが、ホテルのケーキは輝きが違う。
「あの…」
タルトに夢中になっていると、ふと男性ウエイターがまだ側にいることに気づいた。
何かを言いかけたのか、途中から迷ったように視線を逸らす。
なんだろう?
不思議に思いながら、男性へと目を向ける。
さっきまでは気づかなかったけど、よく見たらとても整った顔立ちをしている。
この顔で優しそうな雰囲気の人だから、相当モテるだろうな、この人。
「違ったら申し訳ありませんが、あなたは…」
「遅くなってごめんなさい!」
男性が再び何かを言いかけた時、背後から可愛らしい声が聞こえた。
思わず立ち上がる。
「待ったでしょう?後片付けが思ったよりも長引いちゃって…あら?」
きっと急いできたのだろう。
額に汗を滲ませながら、パタパタと手で仰ぐその姿も、美人だと様になる。
相変わらず、とても可愛い人だ。
何を話そう。
何から話せばいいかな。
急にソワソワと落ち着きがなくなる。
会ったら話したいことがたくさんあった。
それなのに、いざ彼女を目の前にすると言葉が出てこない。
サイン会に行くと決めてから、あれだけ頭の中でイメージしたというのに。
そんな私とは裏腹に、彼女は男性ウエイターに視線を向けていた。
そして、ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべたかと思うと、思いもしなかった言葉を口にした。
「やっぱり来たのね、ルカ様」
なんだか、懐かしさを感じる。
きっと、昔の自分が住んでいた環境にそっくりな作りだからだろう。
体重をかけると沈み込みそうなほどふかふかなソファに、ゆっくりと腰掛ける。
ゆったりと時間が流れているかのようなカフェの雰囲気とは裏腹に、彼女はソワソワと落ち着きがなかった。
メニューをしばらく眺め、時計を見る。
サイン会が終わっても、後片付けなどでおそらくまだ時間がかかるだろう。
よし、ケーキでも食べよう。
今週は特に忙しかったし、たまにはご褒美も必要だ。
美味しそうなケーキが並ぶメニューの写真を眺めながら、一番気になるフルーツタルトを頼むことにした。
メニューから近くにいるウエイターに視線をうつす。
「お決まりですか?」
男性ウエイターは、人当たりの良さそうな笑顔を向けてくる。
「フルーツタルトと、ホットコーヒーをお願いします」
「かしこまりました」
男性はニコッと再度微笑むと、サッとその場を離れていく。
よく分からないけど、なんだか昔からの知り合いのような気がする。
ティア先生…いや、クリスティアがこの世界にいると気づいてから、なんだか不思議な出来事が起きるのだ。
なんとも言葉では表せない。
けれど確実に、この世界には私が過去に生きていた時に出会った人々が、同じように姿形を変えて生きている。
そう、確信できた。
「お待たせいたしました、フルーツタルトとホットコーヒーでございます」
先ほどと同じ男性ウエイターが再び席までやってきた。
「ありがとうございます」
普段食べているものとは明らかに輝きの違う果物がふんだんに乗ったタルト。さすが、ホテルのケーキは輝きが違う。
「あの…」
タルトに夢中になっていると、ふと男性ウエイターがまだ側にいることに気づいた。
何かを言いかけたのか、途中から迷ったように視線を逸らす。
なんだろう?
不思議に思いながら、男性へと目を向ける。
さっきまでは気づかなかったけど、よく見たらとても整った顔立ちをしている。
この顔で優しそうな雰囲気の人だから、相当モテるだろうな、この人。
「違ったら申し訳ありませんが、あなたは…」
「遅くなってごめんなさい!」
男性が再び何かを言いかけた時、背後から可愛らしい声が聞こえた。
思わず立ち上がる。
「待ったでしょう?後片付けが思ったよりも長引いちゃって…あら?」
きっと急いできたのだろう。
額に汗を滲ませながら、パタパタと手で仰ぐその姿も、美人だと様になる。
相変わらず、とても可愛い人だ。
何を話そう。
何から話せばいいかな。
急にソワソワと落ち着きがなくなる。
会ったら話したいことがたくさんあった。
それなのに、いざ彼女を目の前にすると言葉が出てこない。
サイン会に行くと決めてから、あれだけ頭の中でイメージしたというのに。
そんな私とは裏腹に、彼女は男性ウエイターに視線を向けていた。
そして、ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべたかと思うと、思いもしなかった言葉を口にした。
「やっぱり来たのね、ルカ様」
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