16 / 33
間違え
しおりを挟む
「由佳子さん」
優しい声で目がさめる。
「あ....サキさん。あれ、すみません。私寝てました?」
ほんの少しの間だけ、目を閉じたつもりだった。
パシャッ.....
足元に、水が当たるのがわかった。
「え?ここ...」
「由佳子さん。私、間違えていたみたいです」
「え....?」
どういう意味か、わからない。
サキさんは、戸惑う私を落ち着かせるように、穏やかな口調で続けた。
「由佳子さん。あなたはまだ、この世界に来るには早すぎました」
「どういう、ことですか?」
「由佳子。あなたは元の世界に戻りなさい」
「おばあちゃん....」
気づくと、隣に祖母がいた。
いつものように、にこにこ笑顔で私を見つめる。
私、人としての人生を終えたからここにいるんじゃないの?
どういうこと?
戻るって、どこに?
「まだここに来るには早過ぎたの。由佳子、あなたはまだまだ人としての人生が残ってる。だから、元の世界に帰りなさい」
「私、もう人生を終えたんじゃないの?」
「よく、考えてみて。あなたの寿命はまだまだ残ってるの。それに、さっきからあなたをずっと呼んでいる人がいるのよ」
そして、祖母はぎゅっと私を抱きしめた。
「久しぶりにあなたと会えて、本当に嬉しかった。こんなに成長したあなたと、こうして話せて、抱きしめられる。こんなに幸せな事はないわ」
不意に、涙が溢れた。
戻れば、元の世界に帰れば、祖母とはもう会えない。
それがわかったから。
「嫌だっ.....なんで戻れなんて言うの?戻るなら、おばあちゃんも一緒に戻ろう?」
震える声で祖母に訴える。
「由佳子」
体を離し、祖母はにっこりと笑う。
「あなたはもう分かっているでしょう?それは出来ないの。いくらこの世界が自由で何でもできる世界だとしても、それは出来ない」
「でもっ....」
「おばあちゃんね、あなたが私の孫として産まれてきてくれて、本当に嬉しかった。それに、こうして成長したあなたと会えるなんて。幸せ者よ。心配しなくても、また会えるわ」
気がつくと、この世界に来た時の船に乗っていた。
「おばあちゃん!!!」
「由佳子、心配しないで。私はここで幸せに過ごしてるの。だから、あなたはあなたの人生をしっかりと生きて。絶対よ。あと.....」
由佳子を乗せた船が、どんどん小さくなって.....
やがて、光に包まれて消えていった。
この世界に、悲しみは存在しない。
あるのは、幸福な気持ちだけ。
「うふふっ.....おかしいわねぇっ.....、どうして....こんなに、涙が溢れるのかしらね」
祖母は、微笑みながら、由佳子が消えていく方を眺めて静かに涙を流した。
「サキさん。あなたは、本当にあの子を想っているのね」
「.....何のことですか?」
「あの子は元々、本当にこの世界にくるかもしれなかった。それを変えたのはあなたでしょう?それに、良かったの?あの子に伝えたい事があったんじゃないの?」
溢れる涙を拭いながら、祖母はそっとサキさんを見た。
「いいんです。私は、由佳子さんの守護霊ですから」
まるで自分の子どもを見つめるように、サキさんは由佳子が消えていった方を眺めた。
そして、すっ....と輝く光の玉へと姿を変える。
「あの子の事、お願いしますね」
祖母の言葉に応えるように、光の玉はくるくると祖母の周りを周り、やがて光の方へ消えていった。
優しい声で目がさめる。
「あ....サキさん。あれ、すみません。私寝てました?」
ほんの少しの間だけ、目を閉じたつもりだった。
パシャッ.....
足元に、水が当たるのがわかった。
「え?ここ...」
「由佳子さん。私、間違えていたみたいです」
「え....?」
どういう意味か、わからない。
サキさんは、戸惑う私を落ち着かせるように、穏やかな口調で続けた。
「由佳子さん。あなたはまだ、この世界に来るには早すぎました」
「どういう、ことですか?」
「由佳子。あなたは元の世界に戻りなさい」
「おばあちゃん....」
気づくと、隣に祖母がいた。
いつものように、にこにこ笑顔で私を見つめる。
私、人としての人生を終えたからここにいるんじゃないの?
どういうこと?
戻るって、どこに?
「まだここに来るには早過ぎたの。由佳子、あなたはまだまだ人としての人生が残ってる。だから、元の世界に帰りなさい」
「私、もう人生を終えたんじゃないの?」
「よく、考えてみて。あなたの寿命はまだまだ残ってるの。それに、さっきからあなたをずっと呼んでいる人がいるのよ」
そして、祖母はぎゅっと私を抱きしめた。
「久しぶりにあなたと会えて、本当に嬉しかった。こんなに成長したあなたと、こうして話せて、抱きしめられる。こんなに幸せな事はないわ」
不意に、涙が溢れた。
戻れば、元の世界に帰れば、祖母とはもう会えない。
それがわかったから。
「嫌だっ.....なんで戻れなんて言うの?戻るなら、おばあちゃんも一緒に戻ろう?」
震える声で祖母に訴える。
「由佳子」
体を離し、祖母はにっこりと笑う。
「あなたはもう分かっているでしょう?それは出来ないの。いくらこの世界が自由で何でもできる世界だとしても、それは出来ない」
「でもっ....」
「おばあちゃんね、あなたが私の孫として産まれてきてくれて、本当に嬉しかった。それに、こうして成長したあなたと会えるなんて。幸せ者よ。心配しなくても、また会えるわ」
気がつくと、この世界に来た時の船に乗っていた。
「おばあちゃん!!!」
「由佳子、心配しないで。私はここで幸せに過ごしてるの。だから、あなたはあなたの人生をしっかりと生きて。絶対よ。あと.....」
由佳子を乗せた船が、どんどん小さくなって.....
やがて、光に包まれて消えていった。
この世界に、悲しみは存在しない。
あるのは、幸福な気持ちだけ。
「うふふっ.....おかしいわねぇっ.....、どうして....こんなに、涙が溢れるのかしらね」
祖母は、微笑みながら、由佳子が消えていく方を眺めて静かに涙を流した。
「サキさん。あなたは、本当にあの子を想っているのね」
「.....何のことですか?」
「あの子は元々、本当にこの世界にくるかもしれなかった。それを変えたのはあなたでしょう?それに、良かったの?あの子に伝えたい事があったんじゃないの?」
溢れる涙を拭いながら、祖母はそっとサキさんを見た。
「いいんです。私は、由佳子さんの守護霊ですから」
まるで自分の子どもを見つめるように、サキさんは由佳子が消えていった方を眺めた。
そして、すっ....と輝く光の玉へと姿を変える。
「あの子の事、お願いしますね」
祖母の言葉に応えるように、光の玉はくるくると祖母の周りを周り、やがて光の方へ消えていった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる