3 / 5
後編
しおりを挟む
『アスベル
久しぶり。彼から話は聞きました。どうかお姉様をここから救ってあげて。お姉様を幸せにできるのはあなたしかいないの。私が全面的に協力します』
そこで初めて、アスベルの友人騎士とマリアがこっそりと交際していた事を知ったという。
「黙っていて悪かったな。こっちも色々と事情があってさ。私もマリアをすぐに迎えに行きたいところなんだけど、彼女にとってはお姉さんが一番最優先事項らしい。私も協力するよ」
こうしてマリアの全面協力の元、私とアスベルは結婚式を挙げることができた。バレないように仮面をつけての結婚式だったけれど、皮肉にも両親祝福のもと、正式なかたちで式を挙げることができたのだ。
話を聞いて、私は涙が止まらなかった。
ずっと、マリアだけは私の味方でいてくれた。何も言わずに、側にいてくれたのに。私はマリアに嫉妬ばかりしてたわ。
式の時だって、マリアを疑ってた。なんてひどい姉なの。
「アリア?」
「マリアにひどい事をしたわ。お礼もきちんと言えてない」
「大丈夫。マリアお嬢様はもうすぐ私の友人と結婚する予定です。色々と手続きを踏んでいるらしいから少しだけ時間はかかるようですが、マリアお嬢様もきっとアリアの気持ちをわかってくれているはずですから、泣かないでください」
アスベルは私のそっと背中に手を回し、トントンと優しく叩きながら抱きしめてくれた。
その日の夜、そんな気分ではないだろうとアスベルは私の気持ちを優先してくれて、けれど側にいたいから一緒に手を繋いで寝ようと提案してくれた。
アスベルが隣にいてくれる。妻として、ずっと側にいられる。そう思うと幸せで、嬉しくて。
安心感に包まれた私はうとうとと意識が遠のいていった。
「アリア…私の元に来てくれてありがとう。もう離しませんからね」
遠くの方で、アスベルの声が聞こえた。
***
「マリア!」
「お姉様ー!!」
マリアと再会したのは、私とアスベルの結婚式から半年後の事だった。花嫁姿のマリアは、それはそれは美しかった。
お互いに抱きしめ合い、気づくとわんわん泣いていた。
「マリアっ…ごめんなさい…私、ずっとあなたにお礼も言えてなくて」
「もうっ、お姉様ったらそんな事で罪悪感を感じないで。私がどれだけお姉様に救われたか分かっていないなんて、お姉様は自分の価値を下げすぎです」
もうっ!と怒ったような表情を浮かべながらも、どこか嬉しそうなマリア。
「幸せになってね、マリア」
「えぇ。お姉様も」
そう言って、ふっとお互いに微笑み合った。あれから両親はどうなったかは知らない。マリアが口に出さないと言う事と、この式に招待されていないということが物語っている。あえて訊ねる必要もない。
「アリア、いつまで抱き合っているんですか?」
背後から不機嫌そうな声が聞こえる。
振り向かなくても、声だけでどう言う表情をしているのか手に取るようにわかる。
「あら、アスベル。あまり束縛すると嫌われるわよ?」
「なっ…!」
マリアの方がどうやら上手のようだ。
「それじゃ、そろそろ怒られそうだからお姉様をお返しするわね」
そう言ってマリアは私をぐいっとアスベルの方へと引き渡した。その反動で思わずよろけてしまい、すっぽりと彼の腕の中に収まる。
「マリア!」
「ふふっ。それじゃあまた式でね」
そう言うとマリアはパタンっと扉を閉じた。
「ちょっ、アスベル!?」
「そろそろ慣れてください。結婚して半年も経つんですから」
後ろからぎゅっと抱きしめられ、思わず顔が赤くなる私を愛おしそうに見つめながら、アスベルが言った。
「アリア」
「何?」
「…そろそろ、解禁してもよろしいですか?」
ちゅっと首元にキスをされ、ビクッと身体が反応する。
アスベルは私の気持ちを優先して今までずっと待ってくれていた。下手にマリアに連絡してしまえば、マリアの計画を台無しにしてしまうかもしれない。そう思って連絡をしたくてもできなかった臆病な私。それが解決しないときっとできないでしょうと、アスベルは我慢強く待ってくれた。
普通であれば、意味がわからないと思うだろう。けれどアスベルは私の気持ちを一番に考えてくれていた。
こくりと頷く私を見て、アスベルはさらに強く私を抱きしめた。
「やっぱりなしは、ないですからね」
「わ、分かってるわよ。…アスベル」
「ん?」
「…ありがとう。大好き」
ふっ、と固まるアスベル。
それが面白くて。
「アスベル、大好きよ」
「…っ、不意打ちはずるいです」
「ふふっ…んっ、ちょっ、ここではダメ!!」
次第に深くなる口付けに慌ててアスベルを押し返す。
私の表情を嬉しそうに見ながら、アスベルは耳元でそっと囁いた。
「これから覚悟してくださいね」
半年前の私は、この場所で人生に絶望すら抱いていた。まさかこんなに幸せな生活が待ってるなんて、誰が予想したのだろう。
大切な妹のおかげで、彼のおかげで、そして周りの人たちのおかげで私はこんなにも幸せになれた。
「ありがとう」
「お礼を言うのは私の方ですよ」
愛しいこの人と、これからの人生を共に歩んでいく。
~完~
久しぶり。彼から話は聞きました。どうかお姉様をここから救ってあげて。お姉様を幸せにできるのはあなたしかいないの。私が全面的に協力します』
そこで初めて、アスベルの友人騎士とマリアがこっそりと交際していた事を知ったという。
「黙っていて悪かったな。こっちも色々と事情があってさ。私もマリアをすぐに迎えに行きたいところなんだけど、彼女にとってはお姉さんが一番最優先事項らしい。私も協力するよ」
こうしてマリアの全面協力の元、私とアスベルは結婚式を挙げることができた。バレないように仮面をつけての結婚式だったけれど、皮肉にも両親祝福のもと、正式なかたちで式を挙げることができたのだ。
話を聞いて、私は涙が止まらなかった。
ずっと、マリアだけは私の味方でいてくれた。何も言わずに、側にいてくれたのに。私はマリアに嫉妬ばかりしてたわ。
式の時だって、マリアを疑ってた。なんてひどい姉なの。
「アリア?」
「マリアにひどい事をしたわ。お礼もきちんと言えてない」
「大丈夫。マリアお嬢様はもうすぐ私の友人と結婚する予定です。色々と手続きを踏んでいるらしいから少しだけ時間はかかるようですが、マリアお嬢様もきっとアリアの気持ちをわかってくれているはずですから、泣かないでください」
アスベルは私のそっと背中に手を回し、トントンと優しく叩きながら抱きしめてくれた。
その日の夜、そんな気分ではないだろうとアスベルは私の気持ちを優先してくれて、けれど側にいたいから一緒に手を繋いで寝ようと提案してくれた。
アスベルが隣にいてくれる。妻として、ずっと側にいられる。そう思うと幸せで、嬉しくて。
安心感に包まれた私はうとうとと意識が遠のいていった。
「アリア…私の元に来てくれてありがとう。もう離しませんからね」
遠くの方で、アスベルの声が聞こえた。
***
「マリア!」
「お姉様ー!!」
マリアと再会したのは、私とアスベルの結婚式から半年後の事だった。花嫁姿のマリアは、それはそれは美しかった。
お互いに抱きしめ合い、気づくとわんわん泣いていた。
「マリアっ…ごめんなさい…私、ずっとあなたにお礼も言えてなくて」
「もうっ、お姉様ったらそんな事で罪悪感を感じないで。私がどれだけお姉様に救われたか分かっていないなんて、お姉様は自分の価値を下げすぎです」
もうっ!と怒ったような表情を浮かべながらも、どこか嬉しそうなマリア。
「幸せになってね、マリア」
「えぇ。お姉様も」
そう言って、ふっとお互いに微笑み合った。あれから両親はどうなったかは知らない。マリアが口に出さないと言う事と、この式に招待されていないということが物語っている。あえて訊ねる必要もない。
「アリア、いつまで抱き合っているんですか?」
背後から不機嫌そうな声が聞こえる。
振り向かなくても、声だけでどう言う表情をしているのか手に取るようにわかる。
「あら、アスベル。あまり束縛すると嫌われるわよ?」
「なっ…!」
マリアの方がどうやら上手のようだ。
「それじゃ、そろそろ怒られそうだからお姉様をお返しするわね」
そう言ってマリアは私をぐいっとアスベルの方へと引き渡した。その反動で思わずよろけてしまい、すっぽりと彼の腕の中に収まる。
「マリア!」
「ふふっ。それじゃあまた式でね」
そう言うとマリアはパタンっと扉を閉じた。
「ちょっ、アスベル!?」
「そろそろ慣れてください。結婚して半年も経つんですから」
後ろからぎゅっと抱きしめられ、思わず顔が赤くなる私を愛おしそうに見つめながら、アスベルが言った。
「アリア」
「何?」
「…そろそろ、解禁してもよろしいですか?」
ちゅっと首元にキスをされ、ビクッと身体が反応する。
アスベルは私の気持ちを優先して今までずっと待ってくれていた。下手にマリアに連絡してしまえば、マリアの計画を台無しにしてしまうかもしれない。そう思って連絡をしたくてもできなかった臆病な私。それが解決しないときっとできないでしょうと、アスベルは我慢強く待ってくれた。
普通であれば、意味がわからないと思うだろう。けれどアスベルは私の気持ちを一番に考えてくれていた。
こくりと頷く私を見て、アスベルはさらに強く私を抱きしめた。
「やっぱりなしは、ないですからね」
「わ、分かってるわよ。…アスベル」
「ん?」
「…ありがとう。大好き」
ふっ、と固まるアスベル。
それが面白くて。
「アスベル、大好きよ」
「…っ、不意打ちはずるいです」
「ふふっ…んっ、ちょっ、ここではダメ!!」
次第に深くなる口付けに慌ててアスベルを押し返す。
私の表情を嬉しそうに見ながら、アスベルは耳元でそっと囁いた。
「これから覚悟してくださいね」
半年前の私は、この場所で人生に絶望すら抱いていた。まさかこんなに幸せな生活が待ってるなんて、誰が予想したのだろう。
大切な妹のおかげで、彼のおかげで、そして周りの人たちのおかげで私はこんなにも幸せになれた。
「ありがとう」
「お礼を言うのは私の方ですよ」
愛しいこの人と、これからの人生を共に歩んでいく。
~完~
119
あなたにおすすめの小説
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
結婚して5年、初めて口を利きました
宮野 楓
恋愛
―――出会って、結婚して5年。一度も口を聞いたことがない。
ミリエルと旦那様であるロイスの政略結婚が他と違う点を挙げよ、と言えばこれに尽きるだろう。
その二人が5年の月日を経て邂逅するとき
【完結】没交渉の婚約者より、図書館で会った人の方が素敵でした
ぽぽよ
恋愛
レイチェルには、十年間一度も会ったことのない婚約者がいた。
名前しか知らない、奇妙な婚約。
ある日、図書館で出会った男性に、レイチェルは心を奪われる。
穏やかで優しい彼に惹かれていくが、レイチェルには婚約者がいた――
見た目だけでは分からない、本当に大切なものとは?
すれ違いを描く、短編ラブストーリー。
ショートショート全5話。
侯爵様の懺悔
宇野 肇
恋愛
女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。
そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。
侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。
その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。
おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。
――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。
絵姿
金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。
それなのに……。
独自の異世界の緩いお話です。
女騎士と文官男子は婚約して10年の月日が流れた
宮野 楓
恋愛
幼馴染のエリック・リウェンとの婚約が家同士に整えられて早10年。 リサは25の誕生日である日に誕生日プレゼントも届かず、婚約に終わりを告げる事決める。 だがエリックはリサの事を……
どうせ愛されない子なので、呪われた婚約者のために命を使ってみようと思います
下菊みこと
恋愛
愛されずに育った少女が、唯一優しくしてくれた婚約者のために自分の命をかけて呪いを解こうとするお話。
ご都合主義のハッピーエンドのSS。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる