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旦那様は悩む
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「...団長の様子が変だぞ」
「誰か、聞いてみろ」
「ほらお前行けよ」
敵国の軍が攻めてきた時に備え、今日は月に一度行われる騎士たちの集まりがありました。
ヒソヒソと周囲が騒がしいのにも気づかず、当の本人は険しい顔をして腕を組みながら下を見つめています。
...やってしまった。
今まで手を出さずに耐えてきていたのに。
昨夜のことを思い出しながらアクリウスはふぅとため息をつきます。
今まで女性とまともに関わりを持ってこなかった為、接し方がなかなか分からず戸惑っていたのだが...
堅物のアクリウスですが、ソフィアの献身的な支えに益々彼女に惹かれ、最近あからさまに彼を誘うような素振りや格好をするもので、彼自身もいよいよそれに耐えられないようでした。
一度手を出してしまえば、元の私に戻るのはおそらく不可能だ。
今朝の彼女はどこか動揺した様子だったし、失敗したようだ...
出かける前、アクリウスはそっと手を掴んで触れるだけのキスをしました。周りの使用人たちの生温かい視線は相変わらずです。
「何だ、アクリウス。ひどい顔してるぞ」
途中からきたマリウスが、笑いながら話しかけてきました。
「放っておけ」
「ほら見ろ、部下が困ってるじゃないか」
「あぁ、すまない。お前たち、一旦休憩にしよう」
「「はいっ」」
アクリウスがそう伝えると、周りの騎士たちは各々自由に席を立ち始めます。その場で水を飲んだりする者もいました。
「...マリウス」
「おう、どうした?」
アクリウスは真剣な眼差しで、少しだけ声を潜めてマリウスに話しかけました。
「妻が可愛すぎて手を出しそうな場合はどうすればいい」
「ゔゔんっ」
「ゲホッゴホッ」
「んんんんっ」
アクリウス本人は声を潜めているつもりでしたが、普段から指揮を取っている彼の声はとても通りやすく、少し静かにしていれば部屋の隅々まで聞こえる大きさでした。
周りで寛いでいた騎士達は一斉に咳き込みはじめます。水を飲んでいたものは吹き出しそうなところを必死でプルプルと堪えています。
孤高の騎士であり公爵と言う名高い地位を持ち、女性を寄せ付けなかった彼(正確に言うと怖がられていたのですが)の口からそのような言葉が出るとは思わず、周りの騎士たちは動揺を隠せません。
し、静かにしなければ。だが気になる...
彼らの戦いが静かに始まりました。
そんな事とはつゆ知らず、アクリウスは本気でした。何だかよくわからないが騒がしいなと思いながらも、マリウスを見ます。
今まで異常なほどにモテてきたマリウスならどう対応すれば良いか知っているはずだと思ったのです。
マリウスはゲラゲラと笑いながら、あっけらかんと言います。
「いや、もう妻なんだからいくらでも手を出せば良いじゃないか。何を悩むんだ」
「いや、だから...彼女とは政略結婚だし、その...大事にしたいんだ」
語尾は消え入りそうな声で、顔を赤くしながらアクリウスは言いました。
彼女が好きだからこそ大事にしたい。けれどこのままだと、壊れるほど愛してしまいそうで怖い。私の体格と彼女の体格では差がありすぎる。それに、経験が乏しい分加減がわからない...
アクリウスはソフィアに対して加減ができるかどうかが心配なのでした。
「んんんっ」
「ゔっ...けほっけほっ」
周りでは、あの堅物のアクリウスから出る発言だとは思えず、動揺を隠そうと必死で、何とか誤魔化そうと咳き込む声が聞こえます。
...やけにうるさいな。
まさかしっかり聞こえているとは思っていないアクリウスがちらっと部下の騎士達を見ると、彼らはプルプルと震えながらもシャキッと背筋を正しました。
マリウスはポンっと彼の方を叩き、にこやかに笑いました。
「大丈夫。なんとかなる」
「...私は真剣なんだ。ふざけた答えが欲しいわけじゃない」
「ソフィア令嬢に聞いたら良いさ。そんなに不安なら本人の了承を得てから手を出せば良いじゃないか」
「...そうか」
納得したように頷くアクリウスを、これで納得するのかと笑いを堪えながらもマリウスは楽しそうに見ていました。
幼馴染の彼とこんな話をする日が来るとは想像もしていなかったからです。
ソフィア令嬢、彼女ならきっと受け入れてくれるだろう。いや、むしろ今までの話を聞く限り彼女の方がそれを望んでいるのではないのか?
そんなことを考えながら、やはり一度会ってみたいものだとソフィアに興味を示すのでした。
「誰か、聞いてみろ」
「ほらお前行けよ」
敵国の軍が攻めてきた時に備え、今日は月に一度行われる騎士たちの集まりがありました。
ヒソヒソと周囲が騒がしいのにも気づかず、当の本人は険しい顔をして腕を組みながら下を見つめています。
...やってしまった。
今まで手を出さずに耐えてきていたのに。
昨夜のことを思い出しながらアクリウスはふぅとため息をつきます。
今まで女性とまともに関わりを持ってこなかった為、接し方がなかなか分からず戸惑っていたのだが...
堅物のアクリウスですが、ソフィアの献身的な支えに益々彼女に惹かれ、最近あからさまに彼を誘うような素振りや格好をするもので、彼自身もいよいよそれに耐えられないようでした。
一度手を出してしまえば、元の私に戻るのはおそらく不可能だ。
今朝の彼女はどこか動揺した様子だったし、失敗したようだ...
出かける前、アクリウスはそっと手を掴んで触れるだけのキスをしました。周りの使用人たちの生温かい視線は相変わらずです。
「何だ、アクリウス。ひどい顔してるぞ」
途中からきたマリウスが、笑いながら話しかけてきました。
「放っておけ」
「ほら見ろ、部下が困ってるじゃないか」
「あぁ、すまない。お前たち、一旦休憩にしよう」
「「はいっ」」
アクリウスがそう伝えると、周りの騎士たちは各々自由に席を立ち始めます。その場で水を飲んだりする者もいました。
「...マリウス」
「おう、どうした?」
アクリウスは真剣な眼差しで、少しだけ声を潜めてマリウスに話しかけました。
「妻が可愛すぎて手を出しそうな場合はどうすればいい」
「ゔゔんっ」
「ゲホッゴホッ」
「んんんんっ」
アクリウス本人は声を潜めているつもりでしたが、普段から指揮を取っている彼の声はとても通りやすく、少し静かにしていれば部屋の隅々まで聞こえる大きさでした。
周りで寛いでいた騎士達は一斉に咳き込みはじめます。水を飲んでいたものは吹き出しそうなところを必死でプルプルと堪えています。
孤高の騎士であり公爵と言う名高い地位を持ち、女性を寄せ付けなかった彼(正確に言うと怖がられていたのですが)の口からそのような言葉が出るとは思わず、周りの騎士たちは動揺を隠せません。
し、静かにしなければ。だが気になる...
彼らの戦いが静かに始まりました。
そんな事とはつゆ知らず、アクリウスは本気でした。何だかよくわからないが騒がしいなと思いながらも、マリウスを見ます。
今まで異常なほどにモテてきたマリウスならどう対応すれば良いか知っているはずだと思ったのです。
マリウスはゲラゲラと笑いながら、あっけらかんと言います。
「いや、もう妻なんだからいくらでも手を出せば良いじゃないか。何を悩むんだ」
「いや、だから...彼女とは政略結婚だし、その...大事にしたいんだ」
語尾は消え入りそうな声で、顔を赤くしながらアクリウスは言いました。
彼女が好きだからこそ大事にしたい。けれどこのままだと、壊れるほど愛してしまいそうで怖い。私の体格と彼女の体格では差がありすぎる。それに、経験が乏しい分加減がわからない...
アクリウスはソフィアに対して加減ができるかどうかが心配なのでした。
「んんんっ」
「ゔっ...けほっけほっ」
周りでは、あの堅物のアクリウスから出る発言だとは思えず、動揺を隠そうと必死で、何とか誤魔化そうと咳き込む声が聞こえます。
...やけにうるさいな。
まさかしっかり聞こえているとは思っていないアクリウスがちらっと部下の騎士達を見ると、彼らはプルプルと震えながらもシャキッと背筋を正しました。
マリウスはポンっと彼の方を叩き、にこやかに笑いました。
「大丈夫。なんとかなる」
「...私は真剣なんだ。ふざけた答えが欲しいわけじゃない」
「ソフィア令嬢に聞いたら良いさ。そんなに不安なら本人の了承を得てから手を出せば良いじゃないか」
「...そうか」
納得したように頷くアクリウスを、これで納得するのかと笑いを堪えながらもマリウスは楽しそうに見ていました。
幼馴染の彼とこんな話をする日が来るとは想像もしていなかったからです。
ソフィア令嬢、彼女ならきっと受け入れてくれるだろう。いや、むしろ今までの話を聞く限り彼女の方がそれを望んでいるのではないのか?
そんなことを考えながら、やはり一度会ってみたいものだとソフィアに興味を示すのでした。
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