元精霊使いのささやかなミッション

RIO

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 私、エリカ・メイヤーは、精霊と話ができる。

 精霊とはどんなものかというと、火の玉であったり、光球であったり、それぞれ形が違う。ときには人型になることもあるが、それはごくごく稀だ。

 そして、その火の玉もどきと話ができることがどのくらいすごいことなのか、と言えば、日常生活にはまったく影響がない。



 おそらく、誰かに話したところで『頭でもおかしくなったのか?』と本気で疑われるだろう。『精霊と話ができる』というのは、『その辺の犬と話ができる』と話すのに近いらしい。

 もしかすると、犬なら飼い主と気持ちが通じ合っているかもしれないが、精霊はどちらかというと猛獣に近いイメージだ。

 つまり、『私はライオンと話ができます』と言ってまわるのに近いだろう。ようするに、誰も信用しない。結局のところ私が精霊と話ができたとして、日常生活に影響があるはずもないのだった。



 そもそも精霊はその辺をうろうろしているものではない。しかるべき機関に認められ、細かい手順を踏んで初めて彼らを『使う』ことができる。そういうことになっているのだ。一般的には。

 私がなぜ日常生活に一切関係がないはずの『精霊と話ができる』なんてことを知っているのかというと、『しかるべき機関に認められ、彼らを使っていたことがある』からだ。

 私が精霊にかかわっていたのは、3年という短い期間だった。

 ある日、私は精霊使いと呼ばれる仕事を辞めて、この地方都市に移住した。それは1年前のこと。

 それから今日まで、『精霊』と名のつくものを徹底的に避けてきた。そして、これからもかかわるつもりはない、はずだった。
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