元精霊使いのささやかなミッション

RIO

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「────お待ちしていたんですよ。僕たちの訴えを聞いてくださって、ありがとうございます」

 演習場に着いてから、私が最初に聞いたのはそんな言葉だった。王都から派遣された助手であることを伝えた瞬間、私は熱烈な歓迎を受けたのだった。

 私を迎え入れたのはレナルドという、部隊の責任者でもある青年だった。

「ええと、訴えと言うのは……。ああ、もしかして」

 正直なところ、あまり見当はつかなかったけれど、私はそれとなく知った素振りで彼の言葉を促す。やっぱり、エルドレッドの資料はどう考えてもおかしい。肝心な情報が全部抜け落ちている。わざとなのか、何も気にせず丸投げにしたのかどっちなんだ。

「そうなんです。ターナーの件なんですがね……僕たちも困っているんですよ」

 レナルドは大げさな身振りでため息をつき、肩をすくめる。

「それは、つまり……彼の悪い噂のことでしょうか?」

「お間違いなく。噂ではなく、事実ですよ。ですから、僕たちは以前から訴えていたんです」

 おそらく、『仕事をサボる』だとか『まともに演習に参加しない』だとか、その類いの話だろう。とは言え、エルドレッドの話だけを聞くと、それは周囲にも問題があるということになる。

 ただ、私はエルドレッドの話を少し疑い始めていた。とにかく、偏見なくレナルドの話を聞いてみないと始まらない。

「こちらの上層部にお話をされたということですよね?」

「そうなんです。ただ、あいつは一応成績だけは悪くないことになっているでしょう。ちょっとした素行不良だけでは決定的な話にはならないんです。今回、実際に見てもらえれば分かりますよ」

 どうやら、第二部隊は本格的にエリックを辞めさせようとしているようだ。エルドレッドは、わざわざ『王都から処分の査定のために人員を派遣する』とでも言ったのだろうか。

 確かに引き抜きを考えているなんてことがバレるリスクは低いけれど、引き抜きたい相手を貶めてどうするのだ。何をしたいのかさっぱり分からない。今度会ったら問いただしてやろう、と私は心に決めた。

「ただ、いくら素行不良と言っても、見られていると分かっていておかしなことをする人もいないのでは?」

「まあ、普通はそう思うでしょう。でも、現に今もあいつは来ていないですからね」

 確かに、エリックは私と別れてから、この演習場に現れてはいないようだった。

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