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ともすればそのまま去ってしまいそうな青年の腕を掴み、私は彼を引き止めた。エリックは少し驚いたような顔をした後、面倒臭そうに答える。
「俺がなんで君に説明しなくちゃいけないのかな?」
『とにかく、助手なんていらないから帰ってくれればいい』と彼は続けた。けれど、そういうわけにはいかない。私はエルドレッドに『やっぱり無理でした』と言いたくなかったし、彼には何としてでも王都に行ってもらわければならないのだ。
もしかしたらエリックには迷惑な話かもしれないが、最終的に出世の道が開けるのだから悪い話でもないんじゃないか、と思う。
「私は、監視じゃなくて本当にあなたの助手になるために来たんです。このまま帰ったら叱られてしまいます」
今の私に助手が務まるのかというと、多分難しいだろう。でも私の役職がそう伝えられている以上、勝手に変えることもできない。
どうにかごまかしてやり過ごせるんじゃないか、と楽観視するしかなかった。
「……どうしても困るって言うなら、勝手にいればいいよ。ただ、あんまり意味はないと思うけどね。どうせしばらくしたら、俺は辞めることになるだろうから」
「えっ……どういうことですか?」
私はそう訊ねたが答えは返ってこなかった。これ以上話すことはない、というように私の手を振り払い、エリックは歩いて行ってしまったからだ。
帰れと言われなかっただけマシだと気持ちを切り替え、私は今どういう状況なのか把握するために動くことにした。
『辞めることになる』というのは、穏やかな話ではない。そんなことになったら、引き抜き云々の話じゃなくなる。
エルドレッドはまるで簡単なことのように『戻って来い』と言うが、引退した精霊使いが復帰するなんていうのは並大抵のことではない。
手続きが複雑なんていうものではなく、そのためだけに王都から契約に必要となる専門家を呼び、さらに難易度の高いテストに合格する必要もあった。
地方都市で働いている人材が辞めたからと、例外で復帰への道を開いてくれるわけはない。特例で、などと言い出したら、余計に話がややこしくなるだろう。
資料によると、彼は第ニ部隊に所属していたはずだった。とにかく、誰かに話を聞こう。エルドレッドの作った資料の適当さと根回しの最悪さに心の中で悪態をつきつつ、私は現場へと向かった。
「俺がなんで君に説明しなくちゃいけないのかな?」
『とにかく、助手なんていらないから帰ってくれればいい』と彼は続けた。けれど、そういうわけにはいかない。私はエルドレッドに『やっぱり無理でした』と言いたくなかったし、彼には何としてでも王都に行ってもらわければならないのだ。
もしかしたらエリックには迷惑な話かもしれないが、最終的に出世の道が開けるのだから悪い話でもないんじゃないか、と思う。
「私は、監視じゃなくて本当にあなたの助手になるために来たんです。このまま帰ったら叱られてしまいます」
今の私に助手が務まるのかというと、多分難しいだろう。でも私の役職がそう伝えられている以上、勝手に変えることもできない。
どうにかごまかしてやり過ごせるんじゃないか、と楽観視するしかなかった。
「……どうしても困るって言うなら、勝手にいればいいよ。ただ、あんまり意味はないと思うけどね。どうせしばらくしたら、俺は辞めることになるだろうから」
「えっ……どういうことですか?」
私はそう訊ねたが答えは返ってこなかった。これ以上話すことはない、というように私の手を振り払い、エリックは歩いて行ってしまったからだ。
帰れと言われなかっただけマシだと気持ちを切り替え、私は今どういう状況なのか把握するために動くことにした。
『辞めることになる』というのは、穏やかな話ではない。そんなことになったら、引き抜き云々の話じゃなくなる。
エルドレッドはまるで簡単なことのように『戻って来い』と言うが、引退した精霊使いが復帰するなんていうのは並大抵のことではない。
手続きが複雑なんていうものではなく、そのためだけに王都から契約に必要となる専門家を呼び、さらに難易度の高いテストに合格する必要もあった。
地方都市で働いている人材が辞めたからと、例外で復帰への道を開いてくれるわけはない。特例で、などと言い出したら、余計に話がややこしくなるだろう。
資料によると、彼は第ニ部隊に所属していたはずだった。とにかく、誰かに話を聞こう。エルドレッドの作った資料の適当さと根回しの最悪さに心の中で悪態をつきつつ、私は現場へと向かった。
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