Vodzigaの日は遠く過ぎ去り。

宮塚恵一

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2.対怪獣部隊HERM

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 私が物心ついた時には、怪獣災害は当たり前のものになっていた。

 ある日、東京で突然起きた怪獣災害。

 それを境に世界中に出現し始めた怪獣は、数多の被害を出し、人々を震撼させた。
 中でも最も多くの被害を出すのは、ヴォズィガと呼称された大怪獣。

 東京に出現した最初の怪獣も、ヴォズィガと同型の怪獣だったと記録されている。

 ヴォズィガ単体で被害を及ぼすこともあれば、他の怪獣と争う形で被害を拡大させることもあった。

 その大きさは50メートルを超えた。私の通っていた学校の高さくらいならゆうに飛び越えられる巨大さだ。
 その見た目は二足歩行したイグアナに似ていると思う。
 全身鱗に覆われた姿で街中を闊歩し、ビルを、田畑を踏み躙る。

 圧倒的な質量と絶望的な強度で襲い来る、人の手には余る大災害。

 事実、長らくの間、怪獣災害を防ぐ手立てはなかった。

 怪獣は一度現れたらその場で何名かの被害を出してから、その姿を消す。地中に姿を消すモノもあれば、空中に消えていくモノ、気付けばその場から跡形もなく痕跡をなくすモノと、その消え方は様々だった。
 怪獣が現れた場所に大怪獣ヴォズィガが遅れて出現して一方的に殺した後、ヴォズィガが去ることもあった。

 ヴォズィガにせよ他の怪獣にせよ、怪獣とはつまり、人類にとって通り過ぎるのを待つしかない災害の一つだった。

 怪獣を倒す。
 その手立てが国を通して発表されたのは、私が十歳の時だ。

 怪獣に対抗し、怪獣を駆除することの出来る対怪獣部隊HERMヘルマが設立されたとのニュースが当時、喝采を浴びながら世界中を駆け巡った。

 HERMヘルマと共に発表された数多くの武装兵器は、そのシステムの細部は極秘とされたが、その武器をもってしてHERMヘルマは、怪獣に対抗し得る唯一の部隊として、世界に受け入れられた。

 HERMヘルマは公式発表後の翌日、尖閣諸島で起きた怪獣災害を、出現した海蛇のような怪獣(怪獣は後にアルゴスと名付けられた)を駆除することで、物の見事に沈めてみせた。

 初の怪獣退治。初の怪獣討伐。

 世界は熱狂した。特に怪獣災害の起こる頻度が高いとされた日本のお祭り騒ぎと言ったらなかった。
 連日のようにHERMヘルマの活躍が報じられた。

 怪獣災害は怪獣を耐え忍ぶしかなかったモノから、怪獣を駆除または鎮圧して防げるモノへと変わったのだ。

 そんなニュースもあって。
 ヴォズィガを始めとした怪獣は確かに恐るべき存在だったけれど、私にとって怪獣とは、地震や台風と同じ、どこにでも、必ず来るもので、それよりも少しだけ頻度の高い災害に過ぎなかった。

 けれどその認識は一変した。十四歳の頃に。

 中学2年生のゴールデンウィーク、友達と遊びに行ったショッピングモールに怪獣が出現した。最初に出現したのは、後にザモザと呼称されることになった怪獣。ザモザは比較的小型だったが、それでもその体躯はトラックほどの大きさ程。

 ザモザの見た目は肥え太ったガマガエルのようだった。焦点の合わない目で、蛙のような姿とは裏腹に、ドタドタと四肢をバタつかせてショッピングモールを闊歩した。

 ザモザはショッピングモール屋内に現れた。それも複数で。

 ショッピングモール内の人間を襲い、頭から丸呑みするザモザに、店内の客から店員まで皆が恐怖し、逃げ惑った。
 何百人もの多くの死傷者が出、その犠牲に多くの人々が哀しみに暮れた。
 幸い、一緒に遊びに来た友達は皆ザモザから逃げおおせた。だからあれだけの大きな怪獣災害だったけれど、私は奇跡的に何も失っていない。それは幸運なことだったと思う。

 逃げ遅れたのは私の方だった。
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