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第5話 グレイヴマンとアダム
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國彦とラチカはホテルで休息をしていた。
いつもひっきりなしに動き続けているわけではない。今日はたまたま、ラチカの助けたい複数の女の窮地が重なっていた。
「暫くはゆっくりできる、と思う」
ラチカは、ばふりと布団に倒れるとそう言った。
「急に思い出すことはあるかもしれねえが」
「ラチカの行動が唐突なのは今に始まったことじゃない」
「馬鹿にしてんのか?」
ラチカは人類を侵略せんとした怪人として、数多の人生を辿った。
彼女はその人生の殆ど全てを覚えている。
昔観た映画の内容くらいのぼんやりした記憶だ、とラチカは語る。
かつて自身が体験した別人の人生。時空を超えた数多の転生を、ラチカは忘れられない。
「じゃあおやすみ」
「ああ、おやすみ」
どちらともなく目を閉じて、明日に備える。
ラチカは罪滅ぼしの為に。
國彦はいつかの再会の為に。
その日、國彦は夢を見た。
グレイヴマン──剣持大河との戦いの記憶の再演。
怪人との戦いで、幾度となく剣持大河と牙城國彦は衝突した。
グレイヴマンとして、剣持大河がオルムの子供達と闘う為にドンナーから与えられた、怪人と同じ性質を持つ外骨格。
それを元に政府が開発した人類の叡智の結晶、アウターディメンショナルメタモルフォセズ。通称アダムの適合者に選ばれた牙城國彦は、人に仇なす怪人を殺し続けた。
だがそれでは無意味だと、救える命は救うべきだと、政府とは無関係に怪人と戦う剣持大河と意見が割れていた。
結果、正しかったのは剣持大河だ。
オルムの侵略方法。
死に瀕した人間は、オルムの触手に感応しやすい。
故にオルムは、今にも人生を終えようとする人間に寄生し、使命を与えた。
一人目の使命が終わるか失敗すれば、また次の子供を探し、また寄生する。
しかしそれは単純に次を探すわけではない。
オルムの地球侵略は、時空を超えていた。
一人目の寄生が終われば、世界に楔を打つ。
そして過去に触手を伸ばし、更に自身の生存圏を広げていく。
オルムに都合の良い道筋を世界が辿ればそれを保存し、都合の悪い道筋を世界が辿ればその事実を削除する。
その繰り返しで、人類の大半が気付かないうちに侵略を終えることが、オルムの目論みであった。
怪人を殺しても意味はなかった。
オルムは何度でも、こちらが気づかないうちに失敗をやり直せるのだから。
だから、ドンナーから力を与えられたグレイヴマンがオルムに書き換えられた現実を、怪人を倒した現実に更に書き換える必要があった。
「向こうが苦労して進めたセーブデータに、こっちの勝利って言うセーブデータを上書きする。それで初めて、人間の勝ちだ」
剣持大河もそのことは知らなかった。
それを牙城國彦が知ったのは、戦いの中で一人の怪人を知ったが為だ。
何度でもやり直すことができるとは言え、ドンナーの意志とは無関係に怪人を殺し続けるアダムを目障りに感じたオルムは、牙城國彦に刺客を送り込んだ。
それがエルラチカ。
既に過去に送られ、百回以上の転生を繰り返していたエルラチカは、國彦の婚約者として転生していた。
國彦を堕とすために送り込まれた彼女は、彼女自身もそれとは知らずに國彦と恋に落ちた。
そしてある日、使命を思い出した彼女は、國彦を寝首を掻こうとする。
だが、國彦はそれを撃退。
エルラチカの首を絞め、殺害しようとした──が、出来なかった。
エルラチカもまた、もう一度國彦を殺そうとする気にはなれなかった。
結局エルラチカは、國彦への愛故に、オルムの目論見を全て國彦に伝えた。
その時から、牙城國彦と剣持大河と本当の意味での共闘が始まった。
いつもひっきりなしに動き続けているわけではない。今日はたまたま、ラチカの助けたい複数の女の窮地が重なっていた。
「暫くはゆっくりできる、と思う」
ラチカは、ばふりと布団に倒れるとそう言った。
「急に思い出すことはあるかもしれねえが」
「ラチカの行動が唐突なのは今に始まったことじゃない」
「馬鹿にしてんのか?」
ラチカは人類を侵略せんとした怪人として、数多の人生を辿った。
彼女はその人生の殆ど全てを覚えている。
昔観た映画の内容くらいのぼんやりした記憶だ、とラチカは語る。
かつて自身が体験した別人の人生。時空を超えた数多の転生を、ラチカは忘れられない。
「じゃあおやすみ」
「ああ、おやすみ」
どちらともなく目を閉じて、明日に備える。
ラチカは罪滅ぼしの為に。
國彦はいつかの再会の為に。
その日、國彦は夢を見た。
グレイヴマン──剣持大河との戦いの記憶の再演。
怪人との戦いで、幾度となく剣持大河と牙城國彦は衝突した。
グレイヴマンとして、剣持大河がオルムの子供達と闘う為にドンナーから与えられた、怪人と同じ性質を持つ外骨格。
それを元に政府が開発した人類の叡智の結晶、アウターディメンショナルメタモルフォセズ。通称アダムの適合者に選ばれた牙城國彦は、人に仇なす怪人を殺し続けた。
だがそれでは無意味だと、救える命は救うべきだと、政府とは無関係に怪人と戦う剣持大河と意見が割れていた。
結果、正しかったのは剣持大河だ。
オルムの侵略方法。
死に瀕した人間は、オルムの触手に感応しやすい。
故にオルムは、今にも人生を終えようとする人間に寄生し、使命を与えた。
一人目の使命が終わるか失敗すれば、また次の子供を探し、また寄生する。
しかしそれは単純に次を探すわけではない。
オルムの地球侵略は、時空を超えていた。
一人目の寄生が終われば、世界に楔を打つ。
そして過去に触手を伸ばし、更に自身の生存圏を広げていく。
オルムに都合の良い道筋を世界が辿ればそれを保存し、都合の悪い道筋を世界が辿ればその事実を削除する。
その繰り返しで、人類の大半が気付かないうちに侵略を終えることが、オルムの目論みであった。
怪人を殺しても意味はなかった。
オルムは何度でも、こちらが気づかないうちに失敗をやり直せるのだから。
だから、ドンナーから力を与えられたグレイヴマンがオルムに書き換えられた現実を、怪人を倒した現実に更に書き換える必要があった。
「向こうが苦労して進めたセーブデータに、こっちの勝利って言うセーブデータを上書きする。それで初めて、人間の勝ちだ」
剣持大河もそのことは知らなかった。
それを牙城國彦が知ったのは、戦いの中で一人の怪人を知ったが為だ。
何度でもやり直すことができるとは言え、ドンナーの意志とは無関係に怪人を殺し続けるアダムを目障りに感じたオルムは、牙城國彦に刺客を送り込んだ。
それがエルラチカ。
既に過去に送られ、百回以上の転生を繰り返していたエルラチカは、國彦の婚約者として転生していた。
國彦を堕とすために送り込まれた彼女は、彼女自身もそれとは知らずに國彦と恋に落ちた。
そしてある日、使命を思い出した彼女は、國彦を寝首を掻こうとする。
だが、國彦はそれを撃退。
エルラチカの首を絞め、殺害しようとした──が、出来なかった。
エルラチカもまた、もう一度國彦を殺そうとする気にはなれなかった。
結局エルラチカは、國彦への愛故に、オルムの目論見を全て國彦に伝えた。
その時から、牙城國彦と剣持大河と本当の意味での共闘が始まった。
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