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本編
09 - 3 勘違いするほど甘く
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「……汗、ごめん」
呼吸を整えながら、ロゼは汗なんか気にしている。ずっと最後まで私の反応を見ながらの行為で、なんて優しい抱き方をする人なんだろう。
ロゼの頬へ労るようにキスをし、彼の湿った髪を手で梳くようになでた。汗すらも愛おしく感じる。体を重ねた相手にそんな風に思ったことは今まで一度もなかった。
「私も汗かいてるから一緒……」
笑顔を見せたロゼは軽く唇を合わせる。もう笑顔が可愛く見えるようになってしまった。そのまま見つめ合うと、角度を変えてまた唇を啄む。何度も。何度も。
彼にとってはただの慰めなのかもしれない。けれど、愛されているみたいで勘違いしそうになる。
「……キス、好きなの?」
「サリダにしたいだけ」
触れる手も、声も、何もかも愛おしく感じてしまう。だけど、割り切った関係を望んだのは私。彼もそれに同意してくれたのだから、余計な感情を抱いてはいけない。
また唇を合わせると深くなっていく。熱い吐息が漏れるとロゼは私の腰をつかんで、ベッドの真ん中に引き戻す。そのまま何度も口付けを繰り返した。中のものが抜かれないまま再び硬くなり、ゆっくり律動を始めるロゼ。その後も私たちは、体力が尽きるまで体を重ね続けた――。
微睡みの中、温もりに包まれて目が覚めた。
温かい……。
ブランケットとコンフォーターがかけてあり、後ろからロゼが抱き締めるように眠っていた。昨日、いつ頃寝たんだろう。
少し頭を上げるとベッドボードの小さな棚に時計が置かれていた。時間は五時前。仕事に行く前にシャワーを浴びないと……。
眠っているロゼは少し幼く見える。顔の輪郭をそっと指でなぞった。整えられた眉も筋の通った鼻も、上下同じ厚みの唇も今までじっくり見たことはなかった。こんなことになるまで触れたこともなかった人。
満足いくまで眺めてから、シャワーへ行くために頭を切り替えた。彼の温もりが離れ難いけれど、起こさないようにそっと体を起こす。
「サリ……」
そっと動いたつもりがロゼを起こしてしまった。長い腕が私の腰を捕まえ、ベッドの中に引き戻された。
「ロゼ、起こしちゃってごめんなさい」
「……もう、いく……?」
ほとんど目を開けずに口を開くロゼが甘える子供みたいだ。何だか可愛い一面を見てしまった。しっかりと腰を抱えるロゼの腕を手に取った。
「ううん、まだ。でもシャワー浴びないと」
「……おれもはいる……」
「ロゼはまだ寝てて。今日はそんなに早くなくていいんでしょ」
「今日は……、産業都市まで行く……」
そう言うと、ロゼは背中に頬をすり寄せて唇を押し付ける。肩や首、背中に口付けていく。大きな手は胸の膨らみを包み、手のひらで丸くなで始めた。
「や、ロゼ……っ。行けなくなっちゃうから、駄目」
胸を触る手をやんわり離してゆっくり体を起こす。ロゼは諦めたのか、繋ぎ止める手を力なくシーツの上に下ろした。それすらも可愛いと思える。
ロゼの髪をくしゃりとなでると、私はシャワールームへ向かった。
バスタブにお湯を入れ、熱めのシャワーを浴びる。中に何度も注がれたものが残っていないか確認しながら洗い流した。
三年間効果のある避妊具を中に入れていて妊娠の心配はない。それをロゼにも話したからか遠慮なく何度も注がれた。今思い返すと彼はとても回数が多いかもしれない。覚えているだけでも……彼はまだまだ若いのだろう。私と同い年のはずなのに、何となく彼の方が若い気がしてきた。
頭を洗い流していると、シャワールームの温かい湯気が入口の方へ一気に流れ始めた。扉が開いていて、ひんやりした空気と共にロゼが入ってきた。
「……起きちゃったの?」
「一緒に入る」
「シャワーひとつしかないでしょ」
「一緒に浴びる」
ロゼは私を抱き寄せるとシャワーに頭から突っ込んだ。濡れた髪をかき上げると、顔の輪郭が水滴を弾いて立体的に描画された。
呼吸を整えながら、ロゼは汗なんか気にしている。ずっと最後まで私の反応を見ながらの行為で、なんて優しい抱き方をする人なんだろう。
ロゼの頬へ労るようにキスをし、彼の湿った髪を手で梳くようになでた。汗すらも愛おしく感じる。体を重ねた相手にそんな風に思ったことは今まで一度もなかった。
「私も汗かいてるから一緒……」
笑顔を見せたロゼは軽く唇を合わせる。もう笑顔が可愛く見えるようになってしまった。そのまま見つめ合うと、角度を変えてまた唇を啄む。何度も。何度も。
彼にとってはただの慰めなのかもしれない。けれど、愛されているみたいで勘違いしそうになる。
「……キス、好きなの?」
「サリダにしたいだけ」
触れる手も、声も、何もかも愛おしく感じてしまう。だけど、割り切った関係を望んだのは私。彼もそれに同意してくれたのだから、余計な感情を抱いてはいけない。
また唇を合わせると深くなっていく。熱い吐息が漏れるとロゼは私の腰をつかんで、ベッドの真ん中に引き戻す。そのまま何度も口付けを繰り返した。中のものが抜かれないまま再び硬くなり、ゆっくり律動を始めるロゼ。その後も私たちは、体力が尽きるまで体を重ね続けた――。
微睡みの中、温もりに包まれて目が覚めた。
温かい……。
ブランケットとコンフォーターがかけてあり、後ろからロゼが抱き締めるように眠っていた。昨日、いつ頃寝たんだろう。
少し頭を上げるとベッドボードの小さな棚に時計が置かれていた。時間は五時前。仕事に行く前にシャワーを浴びないと……。
眠っているロゼは少し幼く見える。顔の輪郭をそっと指でなぞった。整えられた眉も筋の通った鼻も、上下同じ厚みの唇も今までじっくり見たことはなかった。こんなことになるまで触れたこともなかった人。
満足いくまで眺めてから、シャワーへ行くために頭を切り替えた。彼の温もりが離れ難いけれど、起こさないようにそっと体を起こす。
「サリ……」
そっと動いたつもりがロゼを起こしてしまった。長い腕が私の腰を捕まえ、ベッドの中に引き戻された。
「ロゼ、起こしちゃってごめんなさい」
「……もう、いく……?」
ほとんど目を開けずに口を開くロゼが甘える子供みたいだ。何だか可愛い一面を見てしまった。しっかりと腰を抱えるロゼの腕を手に取った。
「ううん、まだ。でもシャワー浴びないと」
「……おれもはいる……」
「ロゼはまだ寝てて。今日はそんなに早くなくていいんでしょ」
「今日は……、産業都市まで行く……」
そう言うと、ロゼは背中に頬をすり寄せて唇を押し付ける。肩や首、背中に口付けていく。大きな手は胸の膨らみを包み、手のひらで丸くなで始めた。
「や、ロゼ……っ。行けなくなっちゃうから、駄目」
胸を触る手をやんわり離してゆっくり体を起こす。ロゼは諦めたのか、繋ぎ止める手を力なくシーツの上に下ろした。それすらも可愛いと思える。
ロゼの髪をくしゃりとなでると、私はシャワールームへ向かった。
バスタブにお湯を入れ、熱めのシャワーを浴びる。中に何度も注がれたものが残っていないか確認しながら洗い流した。
三年間効果のある避妊具を中に入れていて妊娠の心配はない。それをロゼにも話したからか遠慮なく何度も注がれた。今思い返すと彼はとても回数が多いかもしれない。覚えているだけでも……彼はまだまだ若いのだろう。私と同い年のはずなのに、何となく彼の方が若い気がしてきた。
頭を洗い流していると、シャワールームの温かい湯気が入口の方へ一気に流れ始めた。扉が開いていて、ひんやりした空気と共にロゼが入ってきた。
「……起きちゃったの?」
「一緒に入る」
「シャワーひとつしかないでしょ」
「一緒に浴びる」
ロゼは私を抱き寄せるとシャワーに頭から突っ込んだ。濡れた髪をかき上げると、顔の輪郭が水滴を弾いて立体的に描画された。
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