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本編
12 - 2 忘れたくない
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無理やり開かれた口の隙間から舌をねじ込まれ、先ほどのピアスキャッチが口の中に入ってきた。奇妙な甘さが口の中に広がる。これはピアスキャッチじゃない。吐き出そうにも、すぐに口の中で魔法のように消えた。
アスターを思い切り蹴って体が離れると、ふらついた私は壁に体を預けた。この甘い味、知っている。思い出した……記憶をなくすほど飲んだあの日、店でアスターに渡された酒にも入っていた味。
「何を、飲ませたの……!」
アスターは大きく息をし、獲物を狙うような目で私を見ている。じっと見ていながら焦点が定まらないような、おかしな目付きで不気味な表情を見せた。
「……おかしいと思ってたんだ。俺に与えられる任務は遠出するものばかり。お前の勤務中は、俺がウィスコールに戻れないよう仕組まれてたわけだ。……どいつもこいつも邪魔しやがって……!!」
怒気を帯びたアスターの表情に恐怖心が湧き上がる。指名手配なんて、一体何をしたというのか。
伸びてきた手に抵抗するも、呆気なく腕をつかまれた。もう魔法は発動しない。ロゼのペンダントが私を守っていた。あれは本当にお守りだったんだ。
ベッドへ引きずられ、力尽くで押し倒される。どう足掻いてもアスターの力には敵わない。大声を出そうとすると口を塞がれ、首を振れば顎と首を押さえられる。呼吸が苦しくなる中、何度も深く口付け、ねっとりした唾液が口の中で混じり、全身に不快感が走る。
つかまれている両手を解こうと暴れると、上に乗られて胃が圧迫され、呼吸もままならず吐き気を催した。苦しさに悶えている間に衣服が破られていく。
「うぐ……や……っ!」
声を出そうとしたら、破かれた衣服を口の中に詰め込まれた。喉の奥に届きそうなほど押し込まれ、苦しくて苦しくて何度も嘔吐き、目尻に涙が溜まる。
「声で攻撃されたら堪らないからな。大人しくしとけよ」
両手首は何かで縛り上げられ、血が止まりそうなほど痛む。アスターの血が滲む横腹を蹴ろうとすれば、太腿を抱えるように押さえつけられた。圧倒的な力の差で抵抗すらできず、無念さに口の中の詰め物を噛み締める。数分前にこの男の手当てをしようなんて考えた自分を殴りたい。
それに私の知るアスターは、こんな犯罪を犯すほどおかしな男ではなかった。何故こんな行動に出たのか。疑問だらけの頭とは裏腹に鼓動は早まり、アスターの触れるところがゾクゾクし始める。
「まさかロゼに横取りされるとはな。クソ……、止め刺しておけば良かった。この傷も全部アイツのせいで……!!」
と、どめ……。ロゼに何をしたの……!?
見下ろすアスターの目は血走っていて、不気味でゾッとした。なのに体が勝手に感じてしまう。固く膨らんだものを押し付けられるとジワリと濡れていく。
嫌だ、触らないで。触らないで。
やめて、やめて……!
ザラリとした舌が胸の膨らみを這い、先端を強く吸われて全身が痺れるようにゾクゾクする。不快なのに快感を覚える自分の体はまるで別物のよう。太い指が割れ目を広げて秘部を擦るとジンジンと疼いた。
「ん、んうぅ……っ!」
「サリダ、欲しくて堪らないだろう? すぐ入れてやるよ」
ニヤリと浮かべる笑みが、甘いマスクのアスターとはほど遠い別人のような醜悪な笑み。この男は本当にあのアスターなのか。
呼吸が苦しい。口で息をしたい。酸素が足りない。暴れたせいか息が上がり、酸欠状態になっていく。
フッ、フッ、フッ、と鼻で浅い息を繰り返す私は、どれほど苦痛に顔を歪めているだろう。アスターの顔から笑みが消え、長年剣を握って節くれ立った手が私の頬をなでた。
「なんで、アイツなんだ……!? 俺の方がずっと……っ」
目の前の苦しげに歪んだ顔。熱いものが視界を滲ませ、私の目尻を伝う。アスターは私の目尻からそれを指ですくい取り、悲痛な声を吐き出した。
「サリダ……好きだった、ずっと」
ひとつ。ふたつ。私の頬に上から落ちてくる熱い雫。
こんな状況でそんな言葉、聞きたくなかった。
そんな顔、見たくなかった。
どこで間違えたんだろう。
アスターがこんな風に変わってしまったのは、私のせい……?
浅い呼吸が続く中、苦しさも徐々にわからなくなり、意識が朦朧としていく。
ロゼ……無事でいて……。
ロゼ……ロゼ……。
混濁していく意識の中で彼の名を呼び続けた。
アスターを思い切り蹴って体が離れると、ふらついた私は壁に体を預けた。この甘い味、知っている。思い出した……記憶をなくすほど飲んだあの日、店でアスターに渡された酒にも入っていた味。
「何を、飲ませたの……!」
アスターは大きく息をし、獲物を狙うような目で私を見ている。じっと見ていながら焦点が定まらないような、おかしな目付きで不気味な表情を見せた。
「……おかしいと思ってたんだ。俺に与えられる任務は遠出するものばかり。お前の勤務中は、俺がウィスコールに戻れないよう仕組まれてたわけだ。……どいつもこいつも邪魔しやがって……!!」
怒気を帯びたアスターの表情に恐怖心が湧き上がる。指名手配なんて、一体何をしたというのか。
伸びてきた手に抵抗するも、呆気なく腕をつかまれた。もう魔法は発動しない。ロゼのペンダントが私を守っていた。あれは本当にお守りだったんだ。
ベッドへ引きずられ、力尽くで押し倒される。どう足掻いてもアスターの力には敵わない。大声を出そうとすると口を塞がれ、首を振れば顎と首を押さえられる。呼吸が苦しくなる中、何度も深く口付け、ねっとりした唾液が口の中で混じり、全身に不快感が走る。
つかまれている両手を解こうと暴れると、上に乗られて胃が圧迫され、呼吸もままならず吐き気を催した。苦しさに悶えている間に衣服が破られていく。
「うぐ……や……っ!」
声を出そうとしたら、破かれた衣服を口の中に詰め込まれた。喉の奥に届きそうなほど押し込まれ、苦しくて苦しくて何度も嘔吐き、目尻に涙が溜まる。
「声で攻撃されたら堪らないからな。大人しくしとけよ」
両手首は何かで縛り上げられ、血が止まりそうなほど痛む。アスターの血が滲む横腹を蹴ろうとすれば、太腿を抱えるように押さえつけられた。圧倒的な力の差で抵抗すらできず、無念さに口の中の詰め物を噛み締める。数分前にこの男の手当てをしようなんて考えた自分を殴りたい。
それに私の知るアスターは、こんな犯罪を犯すほどおかしな男ではなかった。何故こんな行動に出たのか。疑問だらけの頭とは裏腹に鼓動は早まり、アスターの触れるところがゾクゾクし始める。
「まさかロゼに横取りされるとはな。クソ……、止め刺しておけば良かった。この傷も全部アイツのせいで……!!」
と、どめ……。ロゼに何をしたの……!?
見下ろすアスターの目は血走っていて、不気味でゾッとした。なのに体が勝手に感じてしまう。固く膨らんだものを押し付けられるとジワリと濡れていく。
嫌だ、触らないで。触らないで。
やめて、やめて……!
ザラリとした舌が胸の膨らみを這い、先端を強く吸われて全身が痺れるようにゾクゾクする。不快なのに快感を覚える自分の体はまるで別物のよう。太い指が割れ目を広げて秘部を擦るとジンジンと疼いた。
「ん、んうぅ……っ!」
「サリダ、欲しくて堪らないだろう? すぐ入れてやるよ」
ニヤリと浮かべる笑みが、甘いマスクのアスターとはほど遠い別人のような醜悪な笑み。この男は本当にあのアスターなのか。
呼吸が苦しい。口で息をしたい。酸素が足りない。暴れたせいか息が上がり、酸欠状態になっていく。
フッ、フッ、フッ、と鼻で浅い息を繰り返す私は、どれほど苦痛に顔を歪めているだろう。アスターの顔から笑みが消え、長年剣を握って節くれ立った手が私の頬をなでた。
「なんで、アイツなんだ……!? 俺の方がずっと……っ」
目の前の苦しげに歪んだ顔。熱いものが視界を滲ませ、私の目尻を伝う。アスターは私の目尻からそれを指ですくい取り、悲痛な声を吐き出した。
「サリダ……好きだった、ずっと」
ひとつ。ふたつ。私の頬に上から落ちてくる熱い雫。
こんな状況でそんな言葉、聞きたくなかった。
そんな顔、見たくなかった。
どこで間違えたんだろう。
アスターがこんな風に変わってしまったのは、私のせい……?
浅い呼吸が続く中、苦しさも徐々にわからなくなり、意識が朦朧としていく。
ロゼ……無事でいて……。
ロゼ……ロゼ……。
混濁していく意識の中で彼の名を呼び続けた。
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