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第4章 いそげ、姉妹関係の儀式
020 5日目 アリムさんは聞き上手
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オルアがアリムのいる待合室に駆け込んでから、30分くらい経とうとしていた。
アリムは、オルアが泣きやむまで、そばにいて待っていた。
◇
アリム
「あったかい紅茶を入れたよ。お砂糖は2つにする?」
オルア=サーパース
「いつもは入れないけれど、今日は1つ入れてくれる?」
アリム
「1個ね。 さあ、どうぞ。」
アリムさんは、あたたかい紅茶とティッシュボックスを渡してくれた。
オルアは眼を閉じて、あふれた分の涙をティッシュに吸わせていた。
そして、鼻をかんだ。
オルアはゆっくりと紅茶を飲んだ。
飲み終わると、アリムさんは、おかわりを注いでくれた。
アリム
「砂糖を入れるかどうかは、飲む直前に決めてね。」
オルアの手元に、砂糖入れを置いてくれた。
オルア=サーパース
「みっともないところを見せちゃったね。」
アリム
「そんなことないよ。 ボクと感情を共有しようとしてくれて、うれしかったよ。」
オルア=サーパース
「じーん。 アリムさん。」
アリム
「さてと、ボクはどこまで踏み込むことを許されるだろうか?
なにがあったか聞いても良いのかな?」
オルア=サーパース
「うん、聞いて欲しい。
真々美と冬香がね。 ひどいの。」
アリム
「真々美さんは、ボクにアリムの名前をくれた司会のひとかな?
冬香さんは、ボクにつらい記憶は箱に閉じ込めても良いのでは?と言ってくれた医師のひとかな?」
出典: 005 オルアさんと、わたしの新しい名前
オルア=サーパース
「そうよ。
司会のひとは、中路真々美。
医師のひとは、白石冬香。」
オルアは、アリムが覚えやすいように、文字に書いてくれた。
=================
2023年8月5日 17:10
司会 中路真々美
医師 白石冬香
わたし オルア サーパース
=================
ナレーション(筆者の解説)
「アリムさんは、聴覚情報処理の障害があるため、音声のままでは記憶できない場合が多いことを、オルアは配慮しました。」
アリム
「中路さんと白石さんに、ひどいことを言われたの? それともひどいことをされたの?」
オルア=サーパース
「ひどいことを言われたわ。」
アリム
「信頼している人に、ひどいことを言われたら泣きたくなるよね。」
オルア=サーパース
「わたしが真々美と冬香のことを信頼しているって分かるの?」
アリム
「うん、オルアさんの雰囲気からなんとなくね。」
オルア=サーパース
「ふーん、そんなもんなんだ。」
アリム
「くわしく聞いてもいいかな。それとも、聞いたらダメな話かな?」
オルア=サーパース
「ううん。 ぜひ、聞いて欲しい。」
オルアは、なにがあったかを一気に話したいと思った。
しかし、アリムさんは聴覚情報処理を苦手にしている。
話が長くなったり、話すスピードが速すぎると、虫食いだらけの文章を読むような状態になって、内容が伝わらない。
だから、1つずつ話題を区切って話すことにした。
オルア=サーパース
「わたしはね。 真々美と冬香の部下として働いていたつもりだったけれど、わたしは正式な部下じゃなくて、補助者の立場だったんだって。」
アリム
「それは、がっかりしてしまうね。 正式な部下になるためには何が必要なの?」
オルア=サーパース
「姉妹関係を結ぶことだって。」
アリム
「オルアさんと中路さん、オルアさんと白石さんは、姉妹のように仲良さそうに見えたけど、そういう意味じゃないってことかな?」
オルア=サーパース
「あのね、引かないでね。 百合を超えてレズの関係になって、肉体関係を結ぶことなんだって。
男性同士の恋愛とか、女性同士の恋愛とか、嫌がる人が多いよね。」
アリム
「引かないよ。
同性愛に嫌悪感を示す人は、少なくとも同性からは愛されないよね。
自意識過剰というか十回生まれ変わって出直してこいって、思う。」
オルア=サーパース
「アリムさんは、同性愛を賛成する派なの?」
アリム
「愛し合うことは素晴らしいことだと思う。
お互いが同意の上ならね。
正しく手順を踏んで、真剣に口説くことは、異性間でも同性間でも大事だと考えている。
そして、異性間でも恋愛できる人に出会って、子孫を残せれば最高かな。」
オルア=サーパース
「アリムさんは、バイセクシャル、両性愛者なのかな?」
アリム
「うーん、どうだろう。
人柄次第だな。
裏表があるひとは、どんなに美しくても嫌だし、会話履歴が汚いひとはお断りしたい。
逆に、容姿がそれなり以下でも好きと感じるひとに出会ったことがある。」
オルア=サーパース
「その辺の話は、今度くわしく聞かせてね。
それでね。
真々美と冬香が言うには、冬香と私が姉妹関係を結ぶために、レズることが必要なんだって、しかも今日中に。」
アリム
「ずいぶん、急だね。
それとも、前から言われていたの?」
オルア=サーパース
「ううん、言われてなかったわ。
しかも、私のためなんだって、言われて腹が立ったわ。」
アリム
「お為ごかし。
あなたのためなのよ、と強調しながら、実のところは、発言者の利益のために言うズルイ言葉だよね。
そりゃあ、腹が立ったよね。
もしかして、蹴りを10発くらい入れたの?」
オルア=サーパース
「まさかあ、腹は立ったけれど、そんなことしないわよ。オホホ。」
オルア=サーパース こころの声
『踏み蹴りしようかと思ったけれど、思いとどまった私は、えらい。
自分で自分をほめてあげなきゃね。』
アリム
「不思議だよね。
中路さんと白石さんは、
<<< オルアさんファースト (オルアさんが一番大事) >>>
で生きているように感じたけれどね。
おふたりと会話した時間は短いから、勘違いかな。」
オルア=サーパース
「間違ってはいないと思うわ。
真々美と冬香は、私が一番信じて頼りにしている存在だから。
だからこそ、わたしのために!なんて、わざわざ言うことに違和感を感じるのよ。」
アリム
「そうすると、なにか余程あせるようなことが起こったのかな?
もしくは、新しい情報が届いたとか?」
オルア=サーパース
「確かに変な気がするわ。
昼食後に話したときは、ふたりとも、あせってなかったのに。」
アリム
「他にはなにか言ってなかった?」
オルア=サーパース
「私を移民審査船に乗せた理由について話していたわ。
1つ目は、合格者の訓練を担当させること、
2つ目は、わたしが逃げられない船の上で、姉妹関係の話をすること。」
オルア=サーパース こころの声
『私の生殖刑のことは伏せたい。』
アリム
「3つ目は?」
オルア=サーパース
「3つ目って?」
アリム
「賢いひとたちは、3つのポイントを選んで用意するよ。
中路さんも白石さんもかなり賢いように見えるから、3つ目を説明したと思うけれど、どんな内容だったの?」
オルア=サーパース
「聞いてないわ。 居たたまれなくて飛び出してきたから。」
アリム
「そうか、じゃあ後で聞いた方が良いかもね。
それと、オルアさんは姉妹関係という仕組みに反対なの?」
オルア=サーパース
「姉妹関係なんて必要ないと思うけれど、相手が冬香なら私にとっては、問題ないわね。」
アリム
「すると、中路さんと白石さんは、レズってもいいと思える数少ない女性のひとりなんだね。」
オルア=サーパース
少し、ほほを赤らめた。
「えっ? そんな話したかなあ?」
アリム
「ベーシックインカムの研修のときに、オルアさん言ってたよ。」
> アリム
> 「カセイダード王って、すごいひとだね。」
> オルア・サーパス
> 「わたしがレズっても良いと思える数少ない女性のひとりですね。」
引用元: 012 [読み飛ばしOK] ベーシックインカム制度を成功できた理由
オルア=サーパース
少し、ほほを赤らめた。
「よく覚えていたわね。」
アリム
「レズっても良いとか、ホモっても良いという言葉は、同性に向ける最高の敬愛表現だとボクは考えているからね。
もしかしたら、オルアさんもそうなのかなって、思っていた。」
オルア=サーパース
「そうよね。 これ以上の敬愛表現は無いわよね。
話変わるけれど、異性に対する最高の敬愛表現は、何だと思う?」
アリム
「わたしの子供を生んで欲しい。とか、
あなたの子供が欲しいの。だと思う。」
オルア=サーパース
「アリムさん、握手しましょう。」
オルアは、ご機嫌にアリムと握手した。
アリム
「うーん。」
オルア=サーパース
「どうしたの?」
アリム
「中路さんと白石さんは、オルアさんへのアプローチの仕方を間違った気がするなあ。」
オルア=サーパース
「というと?」
アリム
「中路さんと白石さんにとっての最愛の表現と、
オルアさんが望む最愛の表現が違った気がする。」
オルア=サーパース
「真々美と冬香にとっての最愛表現は、どんなものだと思うの?」
アリム
「オルアを守りたい。 かな。」
オルア=サーパース
「わたし、そこまで弱くないよ。」
アリム
「そうだよね。
だから、オルアさんが欲しかった言葉は、
「レズの相手を選ぶ権限というか権力を行使できるなら、それをオルアに使いたい。
オルアよりも可愛いと思える女性は他にいないわ。
そして、他の女性がオルアに触れるなんて、ゆるせない。
だから、私と関係を結んで欲しい。 大好きよ。」
という口説き文句だと推理する。」
オルア=サーパース
「えっ? まあ、そんな風に言われたら、
『あなたがそこまで私を望むなら・・・』
って、そのまま身を任せたかもしれないわ。
そうよ。 建前や美辞麗句を言わずに、情熱的に口説いてくれたら、わたしの返事も違っていたわ。」
アリム
「白石さんがオルアさんを口説こうとしていれば、姉妹関係の制度?は問題なかったみたいだね。」
オルア=サーパース
「うーん、それはどうかな?
多くの人の場合、真々美、冬香、私のような信頼関係は成立しないと思う。
だから、他の信頼関係や、組織制度を考えるべきよね。
アリムさんも、そう思うでしょ。」
アリム
「ごめんね。 そうは思わないよ。
姉妹関係の制度?の方が優れていると思うよ。」
オルア=サーパース
「どうして、そう思うの?」
オルアは、アリムさんの考え方はおかしいと反対したくなったが、その前に考え方を聞いてみたいと考えた。
反論したり、わたしが思う方向に修正指導することは、それからでも遅くない。
それに、いままで私にYESしか言わなかったひとがNOを言うからには、よほど大事なことかもしれないと予感した。
アリム
「ひとのこころは、弱いんだよ。
いつも裏切られるかもしれないと心配しているんだ。
光元国の過去の歴史のなかで、部屋村時代、通称、戦士時代と呼ばれる時期があったんだ。」
オルア=サーパース
「うんうん。」
アリム
「そのときに、戦士の集まりのトップ同士で信頼関係を確かめあうために、男性同士の愛情交換があったという話は有名です。 カセイダード王国の言い方では、兄弟関係の制度?になるのかな。 そのときの方がお互いを信じられるかどうかを目に見えるもので確認できたから、信頼関係を築くことができた気がする。
しかし、現代では、そのような行為は神事的にけがれていると言われて、他の行為で団結することになったんだ。」
オルア=サーパース
「その行為を知りたいわ。 そうすれば姉妹関係なんて不要にできそうよ。」
アリム
「他の行為とは、いじめのことだよ。」
オルア=サーパース
「いじめって、まさか? おとなや教師が止めるでしょ!」
アリム
「止めないよ! その方が全体にとっては都合がいいからだ。」
オルア=サーパース
「まさか、そんなことって!」
アリム
「カセイダード大学の人文基本3学問の本能学のどこかに書いてないかな?
にわとりのツツきの順位とか、お魚のオメガフェップスが有名だけど。」
オルア=サーパース
「うそでしょ! 人間と鳥と魚を一緒にしないでよ。」
オルア=サーパース こころの声
『確かに、アリムさんが言う記述があった。
極端な例を書いて、最悪なケースを想定しただけと思っていた。』
アリム
「光元国の国土はせまいからね。
人間にとっての学校や職場は、にわとりにとっての鶏小屋と変わらないのかもしれないね。」
オルア=サーパース
「百歩譲って仮にそうだとして、一体何のために、いじめをするのよ。」
アリム
「順位を決めるためだよ。
自分の順位を上げるために、他人を落とし入れる嘘をついたり、噂を流したりするんだ。
そして、あまりにも優秀な個体がいる場合は、何らかの理由を作って全員で攻撃する。
それこそ、その個体がいなくなるまで続ける。」
オルア=サーパース
「そんなことをしなくても、正々堂々と競争すればいいし、努力すれば勝てるようになるわよ。」
アリム
「時間と労力を掛けたくないのだろうね。 それに、努力が報われない人の方が多い。」
オルア=サーパース
「それは確かに、そうかもしれないけれど。
姉妹関係の制度?があれば、いじめの問題が解決されるというの?」
アリム
「おそらく、解決されている。
カセイダード王国の順位は、
1番がカセイダード国王(女性)、
2番がオルアさんが雲の上の人と言っていた白沢絵美様、
3番が中路さん、
4番が白石さんだと思う。
そして、5番目にオルアさんを入れることで、オルアさんに対して誰にも手出しさせない鉄壁の防御態勢を確立させたいという狙いがあると推理している。」
オルア=サーパース
「確かに、そうかもしれないけれど、冬香の下に私がつかなくても大丈夫だと思うけれど、ダメなの?」
アリム
「白石さんの下に誰かさん、たとえば、Xさんが付いたとしたら、Xさんはオルアさんを排除すると予想する。
それも、120%の確率で。」
オルア=サーパース
「そんなことになったら、真々美と冬香が助けてくれると思う。
ううん、絶対に助けてくれる!」
アリム
「それが許されない状況に変わるとしたら?」
オルア=サーパース
「変わるって、そんなことないわよ。
いままでだって、大丈夫だったから。」
アリム
「そうとでも考えないと、つじつまが合わないんだよ。
じゃあ、反例を示して欲しいけれど、それ以外の理由で、
[中路さんと白石さんのおふたりがオルアさんと衝突する理由がある]
とは考えられない。
オルアさんの話だと、
[中路さんと白石さんのおふたりが今日中にオルアさんとの関係をせまる]
と発言したそうだけれど、そう発言した理由が説明できない。
ねえ、なにか言い忘れたことはない?」
オルア=サーパース
「真々美が無表情な怖い顔をして言ってたわ。」
> オルア=サーパース
> 「どうやって、納得しろと? できるわけないわ。」
> 司会(中路真々美)
> 「実を言うと、オルアが納得してくれない場合は、力づくでもと考えている。
> わたしだけでなく、冬香もな。」
引用元: 019 5日目 冬香と真々美からオルアへ
アリム
「あのおふたりがそこまで言うなら、余程のことが起こっているか、これから起こるのだろうね。
中路さんと白石さんのところに戻って、話の続きを聞いてきた方が良いと考えます。」
オルア=サーパース
「どんな顔して戻ればいいの?」
アリム
「うーん、言いたいことをそのまま言えば良いのでは?
たとえば、
『冬香!
思い出したら腹が立ったから戻ってきたわ。
権力で相手の女性を指名できるなら、一番抱きたいと思う女性を選べばいいわ。
わたしでガマンする必要はないじゃないですか。
それとも、かなりうぬぼれたことを言うけれど、私を欲しいと思ってくれるなら、ちゃんと口説いて、その気にさせる努力をして欲しいわ。
真々美も真々美よ!
大事な冬香を誰とも共有したくない。
絶対に誰かと冬香を共有しなければ駄目だという状況ならば、共有しても良いと思える唯一の女性は可愛いオルアだけだ。
って、そういうべきじゃない。
それを私のためだとか言うズルい言い方をして欲しくないわ。』
という感じかな?」
オルア=サーパース
「アリムさん、小説家になれるかもね。
小説書いてみたら? わたし、読んでみたいな。」
アリム
「あああ、そうかな。ハハッ、考えておくよ。
じゃあ、早く戻った方がいいね。
もう、19時だよ。」
オルア=サーパース
「明日じゃダメかな。こころの準備をしたい。」
アリム
「明日では間に合わないかもしれない。
じゃあ、ぼくと一緒に晩御飯を食べてくれないかな。
その後で戻れば間に合うと思う。
そして、白石さんの気が変わってなくて、オルアさんと姉妹関係を結んでくれるなら、その場で結んだ方が良いはずだよ。」
オルア=サーパース
「時間が掛かる儀式かも知れないから、今夜中に帰れないかもしれないよ。
アリムさん、さびしくないの?」
アリム
「さびしいけれど、オルアさんと中路さん&白石さんとのご縁が切れたら悲しくなるし、申し訳ないと思ってしまう。
だから、一晩くらい我慢するよ。
それに、姉妹関係を無事に結べたら、明日が無事に来ると信じているから。」
オルア=サーパース
「アリムさん。
じゃあ、晩御飯を食べたら、真々美と冬香のもとに戻って話の続きをするわ。
そして、もっと詳しい話を最後まで聞いて、冬香に姉妹関係を結んでもらえるようにお願いするわ。」
アリム
「そうしてくれたら、うれしいな。
オルアさんから受けた恩を少しだけでも返せた気がして、うれしいよ。」
◇
真々美と冬香は、オルアが残していった見守りテレビを視聴していた。
司会(中路真々美)
「アリムさんは、予想を超えたな。」
医師(白石冬香)
「ええ、まさか、ここまでオルアを説得できるとは信じられませんね。」
司会(中路真々美)
「オルアが戻る前に、我々も食事を済ませておくか。」
医師(白石冬香)
「そうね。 そうしましょう。 これなら上手く行くかもって思えたら、お腹がすいたわ。」
ふたりは安心した表情で晩御飯を食べることができた。
アリムは、オルアが泣きやむまで、そばにいて待っていた。
◇
アリム
「あったかい紅茶を入れたよ。お砂糖は2つにする?」
オルア=サーパース
「いつもは入れないけれど、今日は1つ入れてくれる?」
アリム
「1個ね。 さあ、どうぞ。」
アリムさんは、あたたかい紅茶とティッシュボックスを渡してくれた。
オルアは眼を閉じて、あふれた分の涙をティッシュに吸わせていた。
そして、鼻をかんだ。
オルアはゆっくりと紅茶を飲んだ。
飲み終わると、アリムさんは、おかわりを注いでくれた。
アリム
「砂糖を入れるかどうかは、飲む直前に決めてね。」
オルアの手元に、砂糖入れを置いてくれた。
オルア=サーパース
「みっともないところを見せちゃったね。」
アリム
「そんなことないよ。 ボクと感情を共有しようとしてくれて、うれしかったよ。」
オルア=サーパース
「じーん。 アリムさん。」
アリム
「さてと、ボクはどこまで踏み込むことを許されるだろうか?
なにがあったか聞いても良いのかな?」
オルア=サーパース
「うん、聞いて欲しい。
真々美と冬香がね。 ひどいの。」
アリム
「真々美さんは、ボクにアリムの名前をくれた司会のひとかな?
冬香さんは、ボクにつらい記憶は箱に閉じ込めても良いのでは?と言ってくれた医師のひとかな?」
出典: 005 オルアさんと、わたしの新しい名前
オルア=サーパース
「そうよ。
司会のひとは、中路真々美。
医師のひとは、白石冬香。」
オルアは、アリムが覚えやすいように、文字に書いてくれた。
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2023年8月5日 17:10
司会 中路真々美
医師 白石冬香
わたし オルア サーパース
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ナレーション(筆者の解説)
「アリムさんは、聴覚情報処理の障害があるため、音声のままでは記憶できない場合が多いことを、オルアは配慮しました。」
アリム
「中路さんと白石さんに、ひどいことを言われたの? それともひどいことをされたの?」
オルア=サーパース
「ひどいことを言われたわ。」
アリム
「信頼している人に、ひどいことを言われたら泣きたくなるよね。」
オルア=サーパース
「わたしが真々美と冬香のことを信頼しているって分かるの?」
アリム
「うん、オルアさんの雰囲気からなんとなくね。」
オルア=サーパース
「ふーん、そんなもんなんだ。」
アリム
「くわしく聞いてもいいかな。それとも、聞いたらダメな話かな?」
オルア=サーパース
「ううん。 ぜひ、聞いて欲しい。」
オルアは、なにがあったかを一気に話したいと思った。
しかし、アリムさんは聴覚情報処理を苦手にしている。
話が長くなったり、話すスピードが速すぎると、虫食いだらけの文章を読むような状態になって、内容が伝わらない。
だから、1つずつ話題を区切って話すことにした。
オルア=サーパース
「わたしはね。 真々美と冬香の部下として働いていたつもりだったけれど、わたしは正式な部下じゃなくて、補助者の立場だったんだって。」
アリム
「それは、がっかりしてしまうね。 正式な部下になるためには何が必要なの?」
オルア=サーパース
「姉妹関係を結ぶことだって。」
アリム
「オルアさんと中路さん、オルアさんと白石さんは、姉妹のように仲良さそうに見えたけど、そういう意味じゃないってことかな?」
オルア=サーパース
「あのね、引かないでね。 百合を超えてレズの関係になって、肉体関係を結ぶことなんだって。
男性同士の恋愛とか、女性同士の恋愛とか、嫌がる人が多いよね。」
アリム
「引かないよ。
同性愛に嫌悪感を示す人は、少なくとも同性からは愛されないよね。
自意識過剰というか十回生まれ変わって出直してこいって、思う。」
オルア=サーパース
「アリムさんは、同性愛を賛成する派なの?」
アリム
「愛し合うことは素晴らしいことだと思う。
お互いが同意の上ならね。
正しく手順を踏んで、真剣に口説くことは、異性間でも同性間でも大事だと考えている。
そして、異性間でも恋愛できる人に出会って、子孫を残せれば最高かな。」
オルア=サーパース
「アリムさんは、バイセクシャル、両性愛者なのかな?」
アリム
「うーん、どうだろう。
人柄次第だな。
裏表があるひとは、どんなに美しくても嫌だし、会話履歴が汚いひとはお断りしたい。
逆に、容姿がそれなり以下でも好きと感じるひとに出会ったことがある。」
オルア=サーパース
「その辺の話は、今度くわしく聞かせてね。
それでね。
真々美と冬香が言うには、冬香と私が姉妹関係を結ぶために、レズることが必要なんだって、しかも今日中に。」
アリム
「ずいぶん、急だね。
それとも、前から言われていたの?」
オルア=サーパース
「ううん、言われてなかったわ。
しかも、私のためなんだって、言われて腹が立ったわ。」
アリム
「お為ごかし。
あなたのためなのよ、と強調しながら、実のところは、発言者の利益のために言うズルイ言葉だよね。
そりゃあ、腹が立ったよね。
もしかして、蹴りを10発くらい入れたの?」
オルア=サーパース
「まさかあ、腹は立ったけれど、そんなことしないわよ。オホホ。」
オルア=サーパース こころの声
『踏み蹴りしようかと思ったけれど、思いとどまった私は、えらい。
自分で自分をほめてあげなきゃね。』
アリム
「不思議だよね。
中路さんと白石さんは、
<<< オルアさんファースト (オルアさんが一番大事) >>>
で生きているように感じたけれどね。
おふたりと会話した時間は短いから、勘違いかな。」
オルア=サーパース
「間違ってはいないと思うわ。
真々美と冬香は、私が一番信じて頼りにしている存在だから。
だからこそ、わたしのために!なんて、わざわざ言うことに違和感を感じるのよ。」
アリム
「そうすると、なにか余程あせるようなことが起こったのかな?
もしくは、新しい情報が届いたとか?」
オルア=サーパース
「確かに変な気がするわ。
昼食後に話したときは、ふたりとも、あせってなかったのに。」
アリム
「他にはなにか言ってなかった?」
オルア=サーパース
「私を移民審査船に乗せた理由について話していたわ。
1つ目は、合格者の訓練を担当させること、
2つ目は、わたしが逃げられない船の上で、姉妹関係の話をすること。」
オルア=サーパース こころの声
『私の生殖刑のことは伏せたい。』
アリム
「3つ目は?」
オルア=サーパース
「3つ目って?」
アリム
「賢いひとたちは、3つのポイントを選んで用意するよ。
中路さんも白石さんもかなり賢いように見えるから、3つ目を説明したと思うけれど、どんな内容だったの?」
オルア=サーパース
「聞いてないわ。 居たたまれなくて飛び出してきたから。」
アリム
「そうか、じゃあ後で聞いた方が良いかもね。
それと、オルアさんは姉妹関係という仕組みに反対なの?」
オルア=サーパース
「姉妹関係なんて必要ないと思うけれど、相手が冬香なら私にとっては、問題ないわね。」
アリム
「すると、中路さんと白石さんは、レズってもいいと思える数少ない女性のひとりなんだね。」
オルア=サーパース
少し、ほほを赤らめた。
「えっ? そんな話したかなあ?」
アリム
「ベーシックインカムの研修のときに、オルアさん言ってたよ。」
> アリム
> 「カセイダード王って、すごいひとだね。」
> オルア・サーパス
> 「わたしがレズっても良いと思える数少ない女性のひとりですね。」
引用元: 012 [読み飛ばしOK] ベーシックインカム制度を成功できた理由
オルア=サーパース
少し、ほほを赤らめた。
「よく覚えていたわね。」
アリム
「レズっても良いとか、ホモっても良いという言葉は、同性に向ける最高の敬愛表現だとボクは考えているからね。
もしかしたら、オルアさんもそうなのかなって、思っていた。」
オルア=サーパース
「そうよね。 これ以上の敬愛表現は無いわよね。
話変わるけれど、異性に対する最高の敬愛表現は、何だと思う?」
アリム
「わたしの子供を生んで欲しい。とか、
あなたの子供が欲しいの。だと思う。」
オルア=サーパース
「アリムさん、握手しましょう。」
オルアは、ご機嫌にアリムと握手した。
アリム
「うーん。」
オルア=サーパース
「どうしたの?」
アリム
「中路さんと白石さんは、オルアさんへのアプローチの仕方を間違った気がするなあ。」
オルア=サーパース
「というと?」
アリム
「中路さんと白石さんにとっての最愛の表現と、
オルアさんが望む最愛の表現が違った気がする。」
オルア=サーパース
「真々美と冬香にとっての最愛表現は、どんなものだと思うの?」
アリム
「オルアを守りたい。 かな。」
オルア=サーパース
「わたし、そこまで弱くないよ。」
アリム
「そうだよね。
だから、オルアさんが欲しかった言葉は、
「レズの相手を選ぶ権限というか権力を行使できるなら、それをオルアに使いたい。
オルアよりも可愛いと思える女性は他にいないわ。
そして、他の女性がオルアに触れるなんて、ゆるせない。
だから、私と関係を結んで欲しい。 大好きよ。」
という口説き文句だと推理する。」
オルア=サーパース
「えっ? まあ、そんな風に言われたら、
『あなたがそこまで私を望むなら・・・』
って、そのまま身を任せたかもしれないわ。
そうよ。 建前や美辞麗句を言わずに、情熱的に口説いてくれたら、わたしの返事も違っていたわ。」
アリム
「白石さんがオルアさんを口説こうとしていれば、姉妹関係の制度?は問題なかったみたいだね。」
オルア=サーパース
「うーん、それはどうかな?
多くの人の場合、真々美、冬香、私のような信頼関係は成立しないと思う。
だから、他の信頼関係や、組織制度を考えるべきよね。
アリムさんも、そう思うでしょ。」
アリム
「ごめんね。 そうは思わないよ。
姉妹関係の制度?の方が優れていると思うよ。」
オルア=サーパース
「どうして、そう思うの?」
オルアは、アリムさんの考え方はおかしいと反対したくなったが、その前に考え方を聞いてみたいと考えた。
反論したり、わたしが思う方向に修正指導することは、それからでも遅くない。
それに、いままで私にYESしか言わなかったひとがNOを言うからには、よほど大事なことかもしれないと予感した。
アリム
「ひとのこころは、弱いんだよ。
いつも裏切られるかもしれないと心配しているんだ。
光元国の過去の歴史のなかで、部屋村時代、通称、戦士時代と呼ばれる時期があったんだ。」
オルア=サーパース
「うんうん。」
アリム
「そのときに、戦士の集まりのトップ同士で信頼関係を確かめあうために、男性同士の愛情交換があったという話は有名です。 カセイダード王国の言い方では、兄弟関係の制度?になるのかな。 そのときの方がお互いを信じられるかどうかを目に見えるもので確認できたから、信頼関係を築くことができた気がする。
しかし、現代では、そのような行為は神事的にけがれていると言われて、他の行為で団結することになったんだ。」
オルア=サーパース
「その行為を知りたいわ。 そうすれば姉妹関係なんて不要にできそうよ。」
アリム
「他の行為とは、いじめのことだよ。」
オルア=サーパース
「いじめって、まさか? おとなや教師が止めるでしょ!」
アリム
「止めないよ! その方が全体にとっては都合がいいからだ。」
オルア=サーパース
「まさか、そんなことって!」
アリム
「カセイダード大学の人文基本3学問の本能学のどこかに書いてないかな?
にわとりのツツきの順位とか、お魚のオメガフェップスが有名だけど。」
オルア=サーパース
「うそでしょ! 人間と鳥と魚を一緒にしないでよ。」
オルア=サーパース こころの声
『確かに、アリムさんが言う記述があった。
極端な例を書いて、最悪なケースを想定しただけと思っていた。』
アリム
「光元国の国土はせまいからね。
人間にとっての学校や職場は、にわとりにとっての鶏小屋と変わらないのかもしれないね。」
オルア=サーパース
「百歩譲って仮にそうだとして、一体何のために、いじめをするのよ。」
アリム
「順位を決めるためだよ。
自分の順位を上げるために、他人を落とし入れる嘘をついたり、噂を流したりするんだ。
そして、あまりにも優秀な個体がいる場合は、何らかの理由を作って全員で攻撃する。
それこそ、その個体がいなくなるまで続ける。」
オルア=サーパース
「そんなことをしなくても、正々堂々と競争すればいいし、努力すれば勝てるようになるわよ。」
アリム
「時間と労力を掛けたくないのだろうね。 それに、努力が報われない人の方が多い。」
オルア=サーパース
「それは確かに、そうかもしれないけれど。
姉妹関係の制度?があれば、いじめの問題が解決されるというの?」
アリム
「おそらく、解決されている。
カセイダード王国の順位は、
1番がカセイダード国王(女性)、
2番がオルアさんが雲の上の人と言っていた白沢絵美様、
3番が中路さん、
4番が白石さんだと思う。
そして、5番目にオルアさんを入れることで、オルアさんに対して誰にも手出しさせない鉄壁の防御態勢を確立させたいという狙いがあると推理している。」
オルア=サーパース
「確かに、そうかもしれないけれど、冬香の下に私がつかなくても大丈夫だと思うけれど、ダメなの?」
アリム
「白石さんの下に誰かさん、たとえば、Xさんが付いたとしたら、Xさんはオルアさんを排除すると予想する。
それも、120%の確率で。」
オルア=サーパース
「そんなことになったら、真々美と冬香が助けてくれると思う。
ううん、絶対に助けてくれる!」
アリム
「それが許されない状況に変わるとしたら?」
オルア=サーパース
「変わるって、そんなことないわよ。
いままでだって、大丈夫だったから。」
アリム
「そうとでも考えないと、つじつまが合わないんだよ。
じゃあ、反例を示して欲しいけれど、それ以外の理由で、
[中路さんと白石さんのおふたりがオルアさんと衝突する理由がある]
とは考えられない。
オルアさんの話だと、
[中路さんと白石さんのおふたりが今日中にオルアさんとの関係をせまる]
と発言したそうだけれど、そう発言した理由が説明できない。
ねえ、なにか言い忘れたことはない?」
オルア=サーパース
「真々美が無表情な怖い顔をして言ってたわ。」
> オルア=サーパース
> 「どうやって、納得しろと? できるわけないわ。」
> 司会(中路真々美)
> 「実を言うと、オルアが納得してくれない場合は、力づくでもと考えている。
> わたしだけでなく、冬香もな。」
引用元: 019 5日目 冬香と真々美からオルアへ
アリム
「あのおふたりがそこまで言うなら、余程のことが起こっているか、これから起こるのだろうね。
中路さんと白石さんのところに戻って、話の続きを聞いてきた方が良いと考えます。」
オルア=サーパース
「どんな顔して戻ればいいの?」
アリム
「うーん、言いたいことをそのまま言えば良いのでは?
たとえば、
『冬香!
思い出したら腹が立ったから戻ってきたわ。
権力で相手の女性を指名できるなら、一番抱きたいと思う女性を選べばいいわ。
わたしでガマンする必要はないじゃないですか。
それとも、かなりうぬぼれたことを言うけれど、私を欲しいと思ってくれるなら、ちゃんと口説いて、その気にさせる努力をして欲しいわ。
真々美も真々美よ!
大事な冬香を誰とも共有したくない。
絶対に誰かと冬香を共有しなければ駄目だという状況ならば、共有しても良いと思える唯一の女性は可愛いオルアだけだ。
って、そういうべきじゃない。
それを私のためだとか言うズルい言い方をして欲しくないわ。』
という感じかな?」
オルア=サーパース
「アリムさん、小説家になれるかもね。
小説書いてみたら? わたし、読んでみたいな。」
アリム
「あああ、そうかな。ハハッ、考えておくよ。
じゃあ、早く戻った方がいいね。
もう、19時だよ。」
オルア=サーパース
「明日じゃダメかな。こころの準備をしたい。」
アリム
「明日では間に合わないかもしれない。
じゃあ、ぼくと一緒に晩御飯を食べてくれないかな。
その後で戻れば間に合うと思う。
そして、白石さんの気が変わってなくて、オルアさんと姉妹関係を結んでくれるなら、その場で結んだ方が良いはずだよ。」
オルア=サーパース
「時間が掛かる儀式かも知れないから、今夜中に帰れないかもしれないよ。
アリムさん、さびしくないの?」
アリム
「さびしいけれど、オルアさんと中路さん&白石さんとのご縁が切れたら悲しくなるし、申し訳ないと思ってしまう。
だから、一晩くらい我慢するよ。
それに、姉妹関係を無事に結べたら、明日が無事に来ると信じているから。」
オルア=サーパース
「アリムさん。
じゃあ、晩御飯を食べたら、真々美と冬香のもとに戻って話の続きをするわ。
そして、もっと詳しい話を最後まで聞いて、冬香に姉妹関係を結んでもらえるようにお願いするわ。」
アリム
「そうしてくれたら、うれしいな。
オルアさんから受けた恩を少しだけでも返せた気がして、うれしいよ。」
◇
真々美と冬香は、オルアが残していった見守りテレビを視聴していた。
司会(中路真々美)
「アリムさんは、予想を超えたな。」
医師(白石冬香)
「ええ、まさか、ここまでオルアを説得できるとは信じられませんね。」
司会(中路真々美)
「オルアが戻る前に、我々も食事を済ませておくか。」
医師(白石冬香)
「そうね。 そうしましょう。 これなら上手く行くかもって思えたら、お腹がすいたわ。」
ふたりは安心した表情で晩御飯を食べることができた。
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