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第17話 処理※エドモンド視点
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「計画通りに行動するように」
エドモンドの低い声が、夜の静けさの中で響いた。
「突入したら、すぐに出入り口を塞いで。誰一人として逃がすな。特に、あの人物には注意しろ」
出入り口の位置や配置についてもう一度細かくチェックする。部下たちが頷くのを確認して、エドモンドは剣の柄に手をかけた。
「作戦、開始」
彼の言葉とともに、騎士たちが一斉に動き出した。鍵師が素早く玄関の鍵を開け、前衛部隊が静かに館内に忍び込む。エドモンド自身も剣を抜き、建物内に突入した。
薄暗い廊下を進むと、奥の部屋から声が漏れ聞こえてきた。ドアの前で立ち止まり、内側の様子に耳を澄ます。
「いいわね。明日の夜に決行する。ウィンターフェイド家が結婚式を行う前に、あの女を……」
聞き覚えのある女の声だった。エドモンドは目配せし、部下たちに合図を送った。
「全員、捕らえろ! 誰も逃がすなよ!」
「なっ!?」
エドモンドの一声で、騎士たちがドアを蹴破り、部屋に飛び込んだ。中にいた男たちは驚きの声を上げたが、反応する間もなく次々と取り押さえられていく。
混乱の中、エドモンドは部屋の様子を素早く把握した。ヴィヴィアンを含め、十数名の男女がいた。集まっていたのは、ならず者たち。どうやら警戒もしていなかったようだ。
わずか数分で、部屋の中は制圧された。全員が武装解除され、後ろ手に縛られていく。ここは任せて大丈夫だろうと、エドモンドは他の部屋も確認して回る。誰も逃がしていないだろうか。一人も逃さないように、目を光らせる。
「隊長、全ての容疑者を確保しました」
「よくやった」
戻ってくると、部下の一人が報告に来た。無事に全員を確保できたらしい。だが、その表情には何か引っかかるものがあった。苦虫を噛み潰したような顔で、言葉を続けるのに躊躇しているようだった。
「どうかしたのか?」
エドモンドが問いかけようとした瞬間、騒々しい声が聞こえてきた。
「ちょっと、離しなさいよ! 私を、誰だと思っているの!?」
「なるほど、あれか」
部下の表情の理由を察したエドモンド。たしかに、あれは厄介そうだ。
「アンタたち、誰よ! 後で酷い目にあうわよ! そうならないうちに、早く離しなさい!」
キンキンとした声が響き渡る。
「それの言葉は無視していい。さっさと連れて行け」
冷淡な声で命じると、部下たちは頷いた。廊下を引きずられてきたヴィヴィアンは、エドモンドを見つけて目を見開く。
「エドモンド様……?」
一瞬の驚きの後、彼女の表情は媚びるような愛想の良さに変わった。
「助けて、エドモンド様!コレは何かの間違いで——」
エドモンドは彼女を完全に無視し、部下に向かって尋ねた。
「それで、何人捕まえた?」
「はい。今のところ——」
「ちょっと!私の話を聞いて!」
ヴィヴィアンは引きずられながらも必死に前に出ようとして、エドモンドの注意を引こうとした。
「それを黙らせろ」
エドモンドの冷たい指示に、部下が素早く動いた。
「んっ!」
布を噛まされたヴィヴィアンの声が途切れ、暴れる彼女を二人がかりで押さえつける。彼女は最後までエドモンドに視線を向け、助けを求めていたが、彼は二度と彼女の方を見ることはなかった。
「んっー! んんっー!」
牢に全員を送り込んだ後、エドモンドは報告書をまとめていた。
ウィンターフェイド家の報告により王宮から叱責を受けたヴァンローゼ家。それに不満を持った彼らが、何か問題を起こす兆候があることは、彼の情報網がすでに察知していた。
首謀者はヴィヴィアン。彼女が婚約関係を元に戻したいと考えていたらしい。そのためには邪魔なエレノアを排除する必要があった。ならず者を集めて、ウィンターフェイド家で間もなく行われる予定の結婚式を襲撃し、混乱に乗じてエレノアを誘拐するという計画だったようだ。
「まさか、騎士系の貴族であるウィンターフェイド家に襲撃をかけようなんて……」
エドモンドは溜息をつきながら呟いた。あまりの愚かさに呆れていた。彼らは自分たちの計画が事前に察知されているとは夢にも思っていなかったのだろう。決起集会のタイミングで部隊を整え、彼女たちが計画を実行する前に捕獲した。エドモンドの指示で全てが簡単に終わった。
襲撃が成功したところで、その後どうするつもりだったのか。エレノアを誘拐して、どう交渉するつもりだったのか。どうやっても、エドモンドには上手くいく方法が思いつかない。
そもそも、第一段階の襲撃で失敗している時点で、その後の計画など意味がないが。
「彼女は、いったい何を考えていたのだろうか」
理解できない。報告書の最後に、エドモンドは自分の意見を加えた。
「ヴァンローゼ家、およびヴィヴィアン・ヴァンローゼの今後の処遇については、王宮の判断に委ねるが、彼らの行動はもはや貴族としての資格を疑わせるものである」
彼らの未来は絶望的になるだろう。それだけは明らかだった。
報告書を完成させて、最後に署名し、エドモンドは立ち上がった。窓の外を見れば、朝日が昇り始めていた。新たな一日の始まりと、彼とエレノアの新しい人生の始まり。
エドモンドの口元に、小さな微笑みが浮かんだ。面倒なことを、結婚式の前に処理できてよかった。結婚式まであと数日。今回の事件は、彼らの幸せを邪魔することはできなかった。
エドモンドの低い声が、夜の静けさの中で響いた。
「突入したら、すぐに出入り口を塞いで。誰一人として逃がすな。特に、あの人物には注意しろ」
出入り口の位置や配置についてもう一度細かくチェックする。部下たちが頷くのを確認して、エドモンドは剣の柄に手をかけた。
「作戦、開始」
彼の言葉とともに、騎士たちが一斉に動き出した。鍵師が素早く玄関の鍵を開け、前衛部隊が静かに館内に忍び込む。エドモンド自身も剣を抜き、建物内に突入した。
薄暗い廊下を進むと、奥の部屋から声が漏れ聞こえてきた。ドアの前で立ち止まり、内側の様子に耳を澄ます。
「いいわね。明日の夜に決行する。ウィンターフェイド家が結婚式を行う前に、あの女を……」
聞き覚えのある女の声だった。エドモンドは目配せし、部下たちに合図を送った。
「全員、捕らえろ! 誰も逃がすなよ!」
「なっ!?」
エドモンドの一声で、騎士たちがドアを蹴破り、部屋に飛び込んだ。中にいた男たちは驚きの声を上げたが、反応する間もなく次々と取り押さえられていく。
混乱の中、エドモンドは部屋の様子を素早く把握した。ヴィヴィアンを含め、十数名の男女がいた。集まっていたのは、ならず者たち。どうやら警戒もしていなかったようだ。
わずか数分で、部屋の中は制圧された。全員が武装解除され、後ろ手に縛られていく。ここは任せて大丈夫だろうと、エドモンドは他の部屋も確認して回る。誰も逃がしていないだろうか。一人も逃さないように、目を光らせる。
「隊長、全ての容疑者を確保しました」
「よくやった」
戻ってくると、部下の一人が報告に来た。無事に全員を確保できたらしい。だが、その表情には何か引っかかるものがあった。苦虫を噛み潰したような顔で、言葉を続けるのに躊躇しているようだった。
「どうかしたのか?」
エドモンドが問いかけようとした瞬間、騒々しい声が聞こえてきた。
「ちょっと、離しなさいよ! 私を、誰だと思っているの!?」
「なるほど、あれか」
部下の表情の理由を察したエドモンド。たしかに、あれは厄介そうだ。
「アンタたち、誰よ! 後で酷い目にあうわよ! そうならないうちに、早く離しなさい!」
キンキンとした声が響き渡る。
「それの言葉は無視していい。さっさと連れて行け」
冷淡な声で命じると、部下たちは頷いた。廊下を引きずられてきたヴィヴィアンは、エドモンドを見つけて目を見開く。
「エドモンド様……?」
一瞬の驚きの後、彼女の表情は媚びるような愛想の良さに変わった。
「助けて、エドモンド様!コレは何かの間違いで——」
エドモンドは彼女を完全に無視し、部下に向かって尋ねた。
「それで、何人捕まえた?」
「はい。今のところ——」
「ちょっと!私の話を聞いて!」
ヴィヴィアンは引きずられながらも必死に前に出ようとして、エドモンドの注意を引こうとした。
「それを黙らせろ」
エドモンドの冷たい指示に、部下が素早く動いた。
「んっ!」
布を噛まされたヴィヴィアンの声が途切れ、暴れる彼女を二人がかりで押さえつける。彼女は最後までエドモンドに視線を向け、助けを求めていたが、彼は二度と彼女の方を見ることはなかった。
「んっー! んんっー!」
牢に全員を送り込んだ後、エドモンドは報告書をまとめていた。
ウィンターフェイド家の報告により王宮から叱責を受けたヴァンローゼ家。それに不満を持った彼らが、何か問題を起こす兆候があることは、彼の情報網がすでに察知していた。
首謀者はヴィヴィアン。彼女が婚約関係を元に戻したいと考えていたらしい。そのためには邪魔なエレノアを排除する必要があった。ならず者を集めて、ウィンターフェイド家で間もなく行われる予定の結婚式を襲撃し、混乱に乗じてエレノアを誘拐するという計画だったようだ。
「まさか、騎士系の貴族であるウィンターフェイド家に襲撃をかけようなんて……」
エドモンドは溜息をつきながら呟いた。あまりの愚かさに呆れていた。彼らは自分たちの計画が事前に察知されているとは夢にも思っていなかったのだろう。決起集会のタイミングで部隊を整え、彼女たちが計画を実行する前に捕獲した。エドモンドの指示で全てが簡単に終わった。
襲撃が成功したところで、その後どうするつもりだったのか。エレノアを誘拐して、どう交渉するつもりだったのか。どうやっても、エドモンドには上手くいく方法が思いつかない。
そもそも、第一段階の襲撃で失敗している時点で、その後の計画など意味がないが。
「彼女は、いったい何を考えていたのだろうか」
理解できない。報告書の最後に、エドモンドは自分の意見を加えた。
「ヴァンローゼ家、およびヴィヴィアン・ヴァンローゼの今後の処遇については、王宮の判断に委ねるが、彼らの行動はもはや貴族としての資格を疑わせるものである」
彼らの未来は絶望的になるだろう。それだけは明らかだった。
報告書を完成させて、最後に署名し、エドモンドは立ち上がった。窓の外を見れば、朝日が昇り始めていた。新たな一日の始まりと、彼とエレノアの新しい人生の始まり。
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