『お前よりも好きな娘がいる』と婚約を破棄させられた令嬢は、最強の魔法使いだった~捨てた王子と解放した令嬢の結末~

キョウキョウ

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第34話 誤解と理解 ※エドガー王子視点

 少し前に、父から俺が王位継承権第一位になったことを聞いた。王位継承権第一位だった兄が権利を剥奪されて、辺境へ行ってしまったから。エレノア嬢が望んだことらしい。それから、彼女と婚約することも告げられた。これからは、エレノアが支えてくれる。父の言葉を聞きながら、俺の中で複雑な感情が渦巻いていた。

 今まで婚約の申し込みは断ってきた。政治的な思惑や打算で結ばれる関係に巻き込まれないように避けてきた。兄の邪魔をしないように、関わらないようにしてきた。

 今回、エレノア嬢との婚約に関しては不思議と断る気にならなかった。もちろん、兄の失脚により状況が一変したことが大きい。覚悟を決めようと思った。

 ただ、正直なところ、もう少しだけ受け入れるための時間が欲しい。

 エレノア嬢との婚約が決まったことに、不満はない。むしろ嬉しい。これまで何度か彼女を見てきた。婚約破棄の場面や、魔法学園で友人たちと魔法の腕を磨いているところ、兄上と例の女性がグルになってエレノア嬢を貶めようとしたところ。

 そのたびに、とても印象が良かった。常に冷静で、魔法の才能があるのに偉ぶらず、友人たちを指導する余裕がある。その姿は、まるで光り輝くようだった。そんな魅力的な女性が、妻になってくれるというのだから不満などない。

 どうやら、彼女の方も不満はないらしいと聞いている。

 お互いに望んでいる婚約なら、大歓迎だった。でも、やっぱりもうちょっと覚悟を決める時間が欲しいな。

 待たせてしまって悪いと思いながらも。色々と処理しないといけないことがあり、エレノアとの婚約について後回しにしてしまった。兄の処遇や、王位継承に関する諸々の手続きに追われる日々が続いた。

 ようやく時間が取れて会おうと考えた時、ちょっとした気まずさと不安があった。婚約者として向き合うことへの戸惑いがあった。

 でも、さすがにこれ以上は先延ばしにできない。婚約相手になってくれたエレノアに来てもらおう。会って話をしよう。

 彼女が部屋に来た。緊張する。こうやって、時間を取って話をするのは初めてだと思った。いつもは助けに入って、少し話をしたら別れていたから。

 エレノアは、部屋に入ってきてすぐに頭を下げて謝罪してきた。その予想外の行動に、どういうことだと俺は慌てた。

「ごめんなさい、エドガー様。きっと貴方は、王になることを望んでなかったんだと思います。それを無理やり、私が陛下にお願いしてしまったせいで。婚約については、私の方からお断りを――」

 彼女の声は震えていて、顔を上げられずにいた。その姿に胸が痛んだ。

「違うんだ。王になることを嫌だとは思っていない! もちろん、君のことも嫌じゃない!」

 俺は慌てて否定した。たしかに少し前までの俺は、権力闘争を嫌い、裏方に回って自由気ままに生きようと考えていた。兄が去ってしまった結果、自分が前に出ることになってしまい、予定が大幅に狂ったのも確か。だが、それを嫌だとは思っていない。むしろ、新たな使命だと感じていた。

 どうしてそんな勘違いをしたのか聞いてみると、俺がエレノアと会うのを後回しにしてしまったから。会おうとしないのは、この婚約を望んでいないのだと不安にさせてしまった。

 これは、完全に俺のせいだ。自分の不注意で、こんなにも彼女を悩ませてしまったことに後悔の念が沸き上がった。

「すまない。俺が覚悟を決めるのが遅くなって、君との面会を先延ばしにしたせいだ」

 俺は真摯に謝罪した。エレノアはようやく顔を上げ、少し安堵の表情を見せた。

「いいえ、私の方こそ。勝手に勘違いして、慌ててしまって」

 こうして、私たちの関係は少しギクシャクした状況から始まった。だけど、失敗を繰り返さないために、その日のうちに話し合うことにした。

 二人で向き合って、今回のような勘違いが起きないように、しっかりと話す時間を持った。

「今後は、お互いの気持ちや考えを勘違いしないように、しっかり話し合おう。なんでも話して、何でも聞くようにしよう。まずは、君のことを教えて欲しいエレノア」

 俺は真剣な眼差しで、彼女を見つめた。エレノアも、少し緊張した様子ながらも、微笑みを浮かべて答えた。

「はい。私も、エドガー様のことについて知っていきたいです」

 それから俺達は、時間を掛けて話し合い、お互いのことについて理解していった。部屋の灯りが暖かく二人を包み込む中、少しずつ打ち解けていく会話が続いた。

 この時間が、俺たちの新たな関係の始まりだった。未来への不安は残っていたが、同時に希望も芽生えていた。

 これからエレノアと共に歩む道は、明るいものになりそうだ。そんな予感がしていた。
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