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第11話 私が中心※イザベラ視点
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鏡の前で、私は新しいドレスに身を包んだ自分を見つめていた。
深紅のベルベット生地に、宝石を散りばめた豪華な装飾。袖口には金糸の刺繍が施され、スカートの裾には真珠が縫い付けられている。ヴァンデルディング公爵家の威光に相応しい、最高級の一着。王室御用達の仕立て屋に特注した、世界に一つだけのドレス。
こんな素晴らしいドレスを着られるのも、私が公爵家の婚約者になったから。今のお姉様には絶対に手が届かない、この特別な輝き。
鏡に映る自分は、完璧に輝いていた。
「ふふ、やっぱり私、綺麗」
自分の美しさに見惚れながら、ゆっくりと回転してみる。スカートが優雅に広がり、宝石がキラキラと光を反射する。完璧。本当に完璧だわ。
無事に、私の計画は大成功した。望む通りのものを全て手に入れた。何度噛み締めても飽きない、この勝利の味。
お姉様の評判。お姉様の婚約者。そして、公爵夫人という未来の地位。
全部、私のもの。全部、私が手に入れた。
「セラフィナお姉様は、所詮運が良かっただけ」
独り言のように呟く。
先に生まれて、先に社交界でチャンスを掴んだ。それだけのこと。実力で言えば、私の方が上に決まっている。可愛さだって、愛嬌だって、私の方が断然上。なのに、評価されていたのはいつも姉の方だった。
でも、もう違う。
その間違いが、ようやく正されていく。これが正しい世界。私が中心にいる、あるべき姿。
鏡の中の自分にウインクしてみる。完璧な勝者の表情。これから、もっともっと輝いていくのよ。私は。
――婚約が正式に発表されて、数日後。
社交界の集まりで、私は取り巻きの貴婦人たちに囲まれていた。
午後のティーパーティー。王都でも名高い、ブランシュフルール伯爵夫人邸のサロン。天井の高い優雅な部屋に、華やかなドレスを着た貴婦人たちが集まり、優雅にお茶を楽しんでいる。銀の食器がカチャカチャと上品な音を立て、高級な香りの紅茶が注がれる。
その中心に、私がいる。
以前なら、こういう集まりに招待されることもなかった。でも今は違う。ヴァンデルディング公爵家の婚約者として、私は注目の的。みんなが私に話しかけてくる。みんなが私の言葉に耳を傾ける。
これが、本来あるべき姿。
「イザベラ様、そのドレス、本当に素敵ですわ」
お茶会の参加者の一人が、羨望の眼差しで言った。彼女は私の一番の取り巻き。男爵令嬢で、いつも私に媚びを売ってくる。便利な存在。
「ありがとう、ヴィオレット。あなたのドレスも素敵よ」
私は優雅に微笑んだ。もちろん、彼女のドレスなんて私のに比べたら安物だけど。褒めておけば、もっと私に尽くしてくれるもの。簡単ね。
「まあ、恐縮ですわ。でも、イザベラ様には到底及びませんわ」
ヴィオレットが謙遜する。当然よね。比べるのも失礼なくらい、格が違うもの。
「ところで、セラフィナ様のこと、皆様ご存知でしょう?」
私は声を潜めて、周囲の貴婦人たちに話しかけた。わざと悲しげな表情を作りながら。眉を少し下げて、目を伏せ目がちにする。
「実は……私のアイデアを、ずっと盗んでいたんですの」
その言葉に、周囲がざわめいた。扇子で口元を隠しながら、ひそひそと囁き合う声が聞こえる。色々な場で積極的に、例の噂を広めていく。もちろん、今日のお茶会でも話に出すのを忘れない。
「まあ! その話、本当だったのですか?」
一人の貴婦人が、驚いた顔で身を乗り出してきた。子爵夫人だったかしら。名前は覚えていないけれど、どうでもいいわ。
「噂には聞きましたけれど……酷い話ですわね」
別の貴婦人も、同情的に頷く。
「ええ、本当なんです」
私は涙を浮かべるような演技をした。声を震わせて、今にも泣き出しそうな表情。鏡の前で練習した、完璧な泣き顔。
「本当は言いたくなかったんです。姉妹ですもの。血を分けた家族なのに……でも、真実は明らかにしなければと思って」
目元を押さえる。実際には泣いていないけれど、そう見えるように演技する。
「まあ、お気の毒に……」
「イザベラ様は、なんて優しいお方なの」
「姉に裏切られるなんて……」
周囲の貴婦人たちが、次々と同情の言葉をかけてくる。完璧。みんな、私の演技に引き込まれている。誰も疑っていない。
中には、まだ半信半疑の顔をしている者もいる。でも、それでいい。異を唱える者はいない。なぜなら、ヴァンデルディング公爵家という後ろ盾があるから。私が堂々としておけば、それが真実として広がる。
公爵家が私の味方である以上、誰も私に逆らえない。たとえ疑問に思っても、口に出すことはできない。それが、貴族社会の掟。
「でも、イザベラ様。あなたは本当に強い方ですわ」
ヴィオレットが、感心したように言った。ナイスアシスト。
「そんな辛い思いをされたのに、こんなに明るく振る舞って」
「私だったら、耐えられませんわ。姉に裏切られるなんて」
別の貴婦人も、目に涙を浮かべて同情してくれる。
「いいえ、もう過去のことですから」
私は優雅に微笑んだ。ハンカチを仕舞い、背筋を伸ばして。悲しみを乗り越えた強い女性――そんな印象を与えるように。
「これからは、私が本当の実力を示す番ですわ。お姉様が偽りの評判で築いてきたものを、私が本物の才能で塗り替えていきます」
その言葉に、周囲から拍手が起こった。
「素晴らしいですわ、イザベラ様!」
「応援していますわ!」
「次のパーティー、ぜひ成功させてくださいね」
賞賛の言葉が次々と飛んでくる。その全てが、心地よく耳に響く。
ああ、これが私のいるべき場所。これが、私が受けるべき評価。
深紅のベルベット生地に、宝石を散りばめた豪華な装飾。袖口には金糸の刺繍が施され、スカートの裾には真珠が縫い付けられている。ヴァンデルディング公爵家の威光に相応しい、最高級の一着。王室御用達の仕立て屋に特注した、世界に一つだけのドレス。
こんな素晴らしいドレスを着られるのも、私が公爵家の婚約者になったから。今のお姉様には絶対に手が届かない、この特別な輝き。
鏡に映る自分は、完璧に輝いていた。
「ふふ、やっぱり私、綺麗」
自分の美しさに見惚れながら、ゆっくりと回転してみる。スカートが優雅に広がり、宝石がキラキラと光を反射する。完璧。本当に完璧だわ。
無事に、私の計画は大成功した。望む通りのものを全て手に入れた。何度噛み締めても飽きない、この勝利の味。
お姉様の評判。お姉様の婚約者。そして、公爵夫人という未来の地位。
全部、私のもの。全部、私が手に入れた。
「セラフィナお姉様は、所詮運が良かっただけ」
独り言のように呟く。
先に生まれて、先に社交界でチャンスを掴んだ。それだけのこと。実力で言えば、私の方が上に決まっている。可愛さだって、愛嬌だって、私の方が断然上。なのに、評価されていたのはいつも姉の方だった。
でも、もう違う。
その間違いが、ようやく正されていく。これが正しい世界。私が中心にいる、あるべき姿。
鏡の中の自分にウインクしてみる。完璧な勝者の表情。これから、もっともっと輝いていくのよ。私は。
――婚約が正式に発表されて、数日後。
社交界の集まりで、私は取り巻きの貴婦人たちに囲まれていた。
午後のティーパーティー。王都でも名高い、ブランシュフルール伯爵夫人邸のサロン。天井の高い優雅な部屋に、華やかなドレスを着た貴婦人たちが集まり、優雅にお茶を楽しんでいる。銀の食器がカチャカチャと上品な音を立て、高級な香りの紅茶が注がれる。
その中心に、私がいる。
以前なら、こういう集まりに招待されることもなかった。でも今は違う。ヴァンデルディング公爵家の婚約者として、私は注目の的。みんなが私に話しかけてくる。みんなが私の言葉に耳を傾ける。
これが、本来あるべき姿。
「イザベラ様、そのドレス、本当に素敵ですわ」
お茶会の参加者の一人が、羨望の眼差しで言った。彼女は私の一番の取り巻き。男爵令嬢で、いつも私に媚びを売ってくる。便利な存在。
「ありがとう、ヴィオレット。あなたのドレスも素敵よ」
私は優雅に微笑んだ。もちろん、彼女のドレスなんて私のに比べたら安物だけど。褒めておけば、もっと私に尽くしてくれるもの。簡単ね。
「まあ、恐縮ですわ。でも、イザベラ様には到底及びませんわ」
ヴィオレットが謙遜する。当然よね。比べるのも失礼なくらい、格が違うもの。
「ところで、セラフィナ様のこと、皆様ご存知でしょう?」
私は声を潜めて、周囲の貴婦人たちに話しかけた。わざと悲しげな表情を作りながら。眉を少し下げて、目を伏せ目がちにする。
「実は……私のアイデアを、ずっと盗んでいたんですの」
その言葉に、周囲がざわめいた。扇子で口元を隠しながら、ひそひそと囁き合う声が聞こえる。色々な場で積極的に、例の噂を広めていく。もちろん、今日のお茶会でも話に出すのを忘れない。
「まあ! その話、本当だったのですか?」
一人の貴婦人が、驚いた顔で身を乗り出してきた。子爵夫人だったかしら。名前は覚えていないけれど、どうでもいいわ。
「噂には聞きましたけれど……酷い話ですわね」
別の貴婦人も、同情的に頷く。
「ええ、本当なんです」
私は涙を浮かべるような演技をした。声を震わせて、今にも泣き出しそうな表情。鏡の前で練習した、完璧な泣き顔。
「本当は言いたくなかったんです。姉妹ですもの。血を分けた家族なのに……でも、真実は明らかにしなければと思って」
目元を押さえる。実際には泣いていないけれど、そう見えるように演技する。
「まあ、お気の毒に……」
「イザベラ様は、なんて優しいお方なの」
「姉に裏切られるなんて……」
周囲の貴婦人たちが、次々と同情の言葉をかけてくる。完璧。みんな、私の演技に引き込まれている。誰も疑っていない。
中には、まだ半信半疑の顔をしている者もいる。でも、それでいい。異を唱える者はいない。なぜなら、ヴァンデルディング公爵家という後ろ盾があるから。私が堂々としておけば、それが真実として広がる。
公爵家が私の味方である以上、誰も私に逆らえない。たとえ疑問に思っても、口に出すことはできない。それが、貴族社会の掟。
「でも、イザベラ様。あなたは本当に強い方ですわ」
ヴィオレットが、感心したように言った。ナイスアシスト。
「そんな辛い思いをされたのに、こんなに明るく振る舞って」
「私だったら、耐えられませんわ。姉に裏切られるなんて」
別の貴婦人も、目に涙を浮かべて同情してくれる。
「いいえ、もう過去のことですから」
私は優雅に微笑んだ。ハンカチを仕舞い、背筋を伸ばして。悲しみを乗り越えた強い女性――そんな印象を与えるように。
「これからは、私が本当の実力を示す番ですわ。お姉様が偽りの評判で築いてきたものを、私が本物の才能で塗り替えていきます」
その言葉に、周囲から拍手が起こった。
「素晴らしいですわ、イザベラ様!」
「応援していますわ!」
「次のパーティー、ぜひ成功させてくださいね」
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ああ、これが私のいるべき場所。これが、私が受けるべき評価。
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