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第12話 ご報告
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やることをやって屋敷に戻ってきた私は、父が居る執務室に直行する。
「お父様、ご報告したいことが」
「入れ」
扉をノックして、呼びかける。部屋の中から父の声が聞こえたのを確認してから、入室した。
「夜分遅くに失礼します」
「アンリエッタ。どうやら面倒なことが起きたみたいだが、お前の口からも報告してくれ」
「はい。では、確認も踏まえて説明いたします」
すでに、パーティーでの騒動について知っているらしい父に改めて、先ほど起きた出来事の詳細を報告した。パーティー会場で、ランドリックが私との婚約を破棄することを大勢の前で宣言したこと。
婚約を破棄したという事実を証拠に残すため、精霊の契約書にサインさせたこと。その契約書と、契約の証である左手首に現れる金色の輪も見せながら説明する。
そして、メディチ公爵家から多額の慰謝料を受け取る契約も結んだことも伝えた。
「これを上手く利用して、バロウクリフ家の発展に役立ててもらいたいと思います」
「お前はまた、そんな重要なことを勝手に決めて……」
父が眉間に皺を刻んだまま、深く息を吐いた。事前に相談せず、勝手に動いたことは申し訳ないと思っている。両親を嫌っているわけじゃない。むしろ、とても感謝している。ここまで育ててくれたことを、心からありがたいと思っていた。
それなのに、バロウクリフ家から除籍されるような流れを自ら作ってしまった。
家から出ていく。そのことで、父の期待を裏切ってしまうようなことをしたのは、心苦しい。だけど、これは譲れなかった。貴族の身分を捨てるために。それを認めてもらうために。
事前に話していたら、絶対に止められていただろう。だから、何も言わずに行動を起こした。
婚約の破棄は、向こうから言い出したことだし。どちらにしろ、婚約破棄になっていた。
一度婚約を破棄された令嬢は、次の相手を探すのに苦労する。その苦労を、父にはさせたくないと思った。
バロウクリフ家を離れる前に少しだけでも貢献できるように、どんな形であれ、これからのバロウクリフ家に役立つ形にしておきたかった。それが、メディチ家からの慰謝料。
「お父様。ご不快に思われたのなら、申し訳ありません」
「アンリエッタ。これからお前は、どうするつもりだ?」
私の謝罪はスルーして、今後について問われる。それについては、考えがあった。今度は隠さず伝えておく。
「カフェを開いて、静かに暮らそうと考えています」
「……カフェ?」
首を傾げられた。でも、本気だ。貴族の社会から離れて、商売人の世界へ飛び込むつもりであることを私は伝えた。
「お父様、ご報告したいことが」
「入れ」
扉をノックして、呼びかける。部屋の中から父の声が聞こえたのを確認してから、入室した。
「夜分遅くに失礼します」
「アンリエッタ。どうやら面倒なことが起きたみたいだが、お前の口からも報告してくれ」
「はい。では、確認も踏まえて説明いたします」
すでに、パーティーでの騒動について知っているらしい父に改めて、先ほど起きた出来事の詳細を報告した。パーティー会場で、ランドリックが私との婚約を破棄することを大勢の前で宣言したこと。
婚約を破棄したという事実を証拠に残すため、精霊の契約書にサインさせたこと。その契約書と、契約の証である左手首に現れる金色の輪も見せながら説明する。
そして、メディチ公爵家から多額の慰謝料を受け取る契約も結んだことも伝えた。
「これを上手く利用して、バロウクリフ家の発展に役立ててもらいたいと思います」
「お前はまた、そんな重要なことを勝手に決めて……」
父が眉間に皺を刻んだまま、深く息を吐いた。事前に相談せず、勝手に動いたことは申し訳ないと思っている。両親を嫌っているわけじゃない。むしろ、とても感謝している。ここまで育ててくれたことを、心からありがたいと思っていた。
それなのに、バロウクリフ家から除籍されるような流れを自ら作ってしまった。
家から出ていく。そのことで、父の期待を裏切ってしまうようなことをしたのは、心苦しい。だけど、これは譲れなかった。貴族の身分を捨てるために。それを認めてもらうために。
事前に話していたら、絶対に止められていただろう。だから、何も言わずに行動を起こした。
婚約の破棄は、向こうから言い出したことだし。どちらにしろ、婚約破棄になっていた。
一度婚約を破棄された令嬢は、次の相手を探すのに苦労する。その苦労を、父にはさせたくないと思った。
バロウクリフ家を離れる前に少しだけでも貢献できるように、どんな形であれ、これからのバロウクリフ家に役立つ形にしておきたかった。それが、メディチ家からの慰謝料。
「お父様。ご不快に思われたのなら、申し訳ありません」
「アンリエッタ。これからお前は、どうするつもりだ?」
私の謝罪はスルーして、今後について問われる。それについては、考えがあった。今度は隠さず伝えておく。
「カフェを開いて、静かに暮らそうと考えています」
「……カフェ?」
首を傾げられた。でも、本気だ。貴族の社会から離れて、商売人の世界へ飛び込むつもりであることを私は伝えた。
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