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第5話 心からの選択
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真摯な眼差しと共に告げられた言葉に、嘘や間違いはなかった。エドワードの瞳に宿る想いを見つめながら、ヴィクトリアはその真剣さに息を呑んだ。
こんなにも強く誰かに求められたことはない――そう、心の奥で感じていた。
ダミアンとは幼い頃からの婚約者。両親同士の話し合いで決まった関係で、将来は結婚するのが当然の未来だと定められていた。そこに疑問を持つことすらなかった。
それに比べて今回は、選択を迫られた。婚約するかどうか。ヴィクトリア自身が、どうするのか決めないといけない。
一瞬、父の判断を仰ごうかと迷ったヴィクトリア。でも、目の前で真剣に見つめるエドワードの姿に、自分で答えを出すべきだと悟る。彼は私の意思を求めているのだから。
だけど、感情に任せて答えるべきじゃない。まずは冷静に。貴族として、家のためにも慎重に判断しなければ。
「なぜ、私を選んだのですか?」
聞きたかった疑問。一度、婚約を破棄された女性を迎え入れるのなんて、普通は嫌だと思う。そんな自分を婚約相手に選んだ理由を聞かせて欲しい。
特にハーウッド家は軍事貴族として、数々の戦場で戦果を上げて、いくつも勲章を授与されるほどの活躍をしている。王族からの信頼も厚い名門。普通の侯爵家よりも格が高い。婚約を希望する家も多いだろう。婚約相手としての需要も高い。
わざわざ、自分を選ぶ必要なんてない。選んだ理由を詳しく聞きたかった。
「先ほども言ったが、君のことを調べさせてもらった」
「はい」
「そこで、君の優秀さを知った。社交界やパーティーに関する専門的な知識や経験が豊富。そのノウハウを駆使して、ハーウッド家を助けて欲しい」
「なるほど」
つまり、知識と経験を頼りたいから婚約を申し込んだということか。そんな答えを聞いて、ヴィクトリアの心は少しだけ沈んだ。彼が自分に求めているのは、本人ではなく知識と経験。そちらのほうが重視されている。
「ただ」
「え?」
エドワードの話は、まだ終わっていなかった。
「君のことを調べていくうちに、個人的に興味を持った。いつも仕事に真剣で、最後までしっかりとやり遂げて、成功させる真面目さがある。そんな君のことを、もっと知りたいと思った」
エドワードの高評価を聞いて、ヴィクトリアの肩がビクッと反応した。それでも、彼は語り続けた。
「そして今日、直接君に会ってみて思った。私は君に惹かれている。君の雰囲気が、とても好きだ。ずっと一緒に居たいと思うぐらい」
「す、すき……」
あまりにも率直な告白に、ヴィクトリアは顔を伏せて黙ってしまう。心臓が早鐘を打ち、どう応えればいいのか戸惑う。
「少し話をしてみて、君のことを多少は知れたと思う。私は、ヴィクトリアという女性を好ましく思った」
エドワードの言葉には偽りがない。だからこそ、それをストレートにぶつけられたヴィクトリアはときめく。ヴィクトリアは、直接的な行為に弱かった。自覚のない弱点だった。言葉だけで顔が熱くなり、心が震えるほどに。
「どうかな? 婚約を受け入れてくれるかどうか、聞かせてくれないか?」
緊張と期待が入り混じった声音。その言葉に、ヴィクトリアの心は決まっていた。
「は、はい。喜んでお受けいたします!」
互いの顔に、安堵の笑みが浮かぶ。この新しい出会いに感謝した。
婚約を受け入れた瞬間、ヴィクトリアの脳裏にはローズウッド家のことが思い浮かんだ。早く、今回のことを父に知らせないと。それから、婚約の了承を得る。そんな彼女の心配を察したように、エドワードが言葉を継ぐ。
「君のお父様とは、既に話が済んでいる。本人の気持ちを尊重して、受け入れるのであればフレデリック殿も婚約を認めてくれるとおっしゃいていた」
「そうだったのですか」
全ては準備されていた。ただ、ヴィクトリアの本心を聞くために、エドワードはそのことを伏せていたのだ。彼女の自由な意思を尊重してくれていたことに、深い感銘を受ける。
そして、この瞬間をもって婚約は正式に成立した。ヴィクトリアは改めて、婚約者となったエドワードに向き合う。
「私は、エドワード様の婚約者となります。これから末永くよろしくお願いします」
「よろしく頼む、ヴィクトリア」
交わされた握手には、固い誓いと暖かな想いが込められていた。
こんなにも強く誰かに求められたことはない――そう、心の奥で感じていた。
ダミアンとは幼い頃からの婚約者。両親同士の話し合いで決まった関係で、将来は結婚するのが当然の未来だと定められていた。そこに疑問を持つことすらなかった。
それに比べて今回は、選択を迫られた。婚約するかどうか。ヴィクトリア自身が、どうするのか決めないといけない。
一瞬、父の判断を仰ごうかと迷ったヴィクトリア。でも、目の前で真剣に見つめるエドワードの姿に、自分で答えを出すべきだと悟る。彼は私の意思を求めているのだから。
だけど、感情に任せて答えるべきじゃない。まずは冷静に。貴族として、家のためにも慎重に判断しなければ。
「なぜ、私を選んだのですか?」
聞きたかった疑問。一度、婚約を破棄された女性を迎え入れるのなんて、普通は嫌だと思う。そんな自分を婚約相手に選んだ理由を聞かせて欲しい。
特にハーウッド家は軍事貴族として、数々の戦場で戦果を上げて、いくつも勲章を授与されるほどの活躍をしている。王族からの信頼も厚い名門。普通の侯爵家よりも格が高い。婚約を希望する家も多いだろう。婚約相手としての需要も高い。
わざわざ、自分を選ぶ必要なんてない。選んだ理由を詳しく聞きたかった。
「先ほども言ったが、君のことを調べさせてもらった」
「はい」
「そこで、君の優秀さを知った。社交界やパーティーに関する専門的な知識や経験が豊富。そのノウハウを駆使して、ハーウッド家を助けて欲しい」
「なるほど」
つまり、知識と経験を頼りたいから婚約を申し込んだということか。そんな答えを聞いて、ヴィクトリアの心は少しだけ沈んだ。彼が自分に求めているのは、本人ではなく知識と経験。そちらのほうが重視されている。
「ただ」
「え?」
エドワードの話は、まだ終わっていなかった。
「君のことを調べていくうちに、個人的に興味を持った。いつも仕事に真剣で、最後までしっかりとやり遂げて、成功させる真面目さがある。そんな君のことを、もっと知りたいと思った」
エドワードの高評価を聞いて、ヴィクトリアの肩がビクッと反応した。それでも、彼は語り続けた。
「そして今日、直接君に会ってみて思った。私は君に惹かれている。君の雰囲気が、とても好きだ。ずっと一緒に居たいと思うぐらい」
「す、すき……」
あまりにも率直な告白に、ヴィクトリアは顔を伏せて黙ってしまう。心臓が早鐘を打ち、どう応えればいいのか戸惑う。
「少し話をしてみて、君のことを多少は知れたと思う。私は、ヴィクトリアという女性を好ましく思った」
エドワードの言葉には偽りがない。だからこそ、それをストレートにぶつけられたヴィクトリアはときめく。ヴィクトリアは、直接的な行為に弱かった。自覚のない弱点だった。言葉だけで顔が熱くなり、心が震えるほどに。
「どうかな? 婚約を受け入れてくれるかどうか、聞かせてくれないか?」
緊張と期待が入り混じった声音。その言葉に、ヴィクトリアの心は決まっていた。
「は、はい。喜んでお受けいたします!」
互いの顔に、安堵の笑みが浮かぶ。この新しい出会いに感謝した。
婚約を受け入れた瞬間、ヴィクトリアの脳裏にはローズウッド家のことが思い浮かんだ。早く、今回のことを父に知らせないと。それから、婚約の了承を得る。そんな彼女の心配を察したように、エドワードが言葉を継ぐ。
「君のお父様とは、既に話が済んでいる。本人の気持ちを尊重して、受け入れるのであればフレデリック殿も婚約を認めてくれるとおっしゃいていた」
「そうだったのですか」
全ては準備されていた。ただ、ヴィクトリアの本心を聞くために、エドワードはそのことを伏せていたのだ。彼女の自由な意思を尊重してくれていたことに、深い感銘を受ける。
そして、この瞬間をもって婚約は正式に成立した。ヴィクトリアは改めて、婚約者となったエドワードに向き合う。
「私は、エドワード様の婚約者となります。これから末永くよろしくお願いします」
「よろしく頼む、ヴィクトリア」
交わされた握手には、固い誓いと暖かな想いが込められていた。
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