貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~

キョウキョウ

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04.第二王子

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 ランベルト王子の執務室を出て、廊下を歩く。この後、実家に帰って今後の予定を考えないといけない。ファシュ家に利益をもたらすためには、どう動くべきなのか。

「エリザベート」
「え?」
「話がある。一緒に来てくれ」
「トルステン様?」

 考え事をしている最中に突然、名前を呼ばれた。顔を上げると目の前に、第二王子であるトルステン様が居た。

「え、あ、ちょっと……」

 彼は、一緒に来て欲しいと言った後、返事も待たずにスタスタと前を歩いて行ってしまった。私は慌てて、見失わないように彼の後を追いかけた。

 王族である彼の言うことを、無視するわけにもいかないから。



「ここだ。入ってくれ」
「……はい」

 会話もなく静かに歩いて、トルステン王子の執務室に到着した。中に入るように、指示される。私は、警戒しながら部屋の中に入った。

「自由に座ってくれ」
「はい」

 部屋の中には、誰も居なかった。2人きりである。ランベルト王子の婚約者だった頃は、余計な誤解を避けるために男性と2人きりにならないよう注意していた。

 特に、他の王族の方々とは接触するのを意識して避けていた。だから、トルステン王子と私の関係は非常に薄い。今まで、何度か話したことがあるぐらい。

 部屋に招かれるような関係ではなかったはず、だけど。とりあえず、言われた通り席に座った。向かいの席に、トルステン王子も座る。

 テーブルを挟んで向かい合うような形で、私たちは執務室のソファに座っていた。私よりも少し年下のはずなのに、威厳があって緊張する。

 トルステン王子とは、どんな人だったかな。私は、必死に記憶を探った。

「貴女に聞きたいことがある。ランベルトと婚約を破棄したと聞いたが、本当か?」
「はい、本当です」

 眉間にシワを寄せたトルステン王子に質問されたので、私は正直に答える。本当だと言いながらコクっと頷いて、その通りだと彼に伝えた。

「ランベルトの方から、婚約破棄を申し出たと聞いたが」
「それも、その通りです」
「そうかそうか!」

 私の返答を聞いて、嬉しそうに笑うトルステン王子。テンションも上がっていた。彼のそんな姿を、私は初め見た。

 そしてトルステン王子は、ポツリと呟く。

「愚かだな、ランベルト」

 私は、聞こえていないフリをした。しばらくしてトルステン王子の表情が、いつものように戻る。それから会話が続いた。

「次に婚約をする相手は、もう決まっているのか?」
「いえ、まだ決まっていません。両親と相談して、適当な相手を探すつもりです」
「そうなのか。ランベルトは婚約を破棄したというのに、次の相手も決めてやらずに後始末していないのか」
「そういうことになります」

 今の状況を聞いて、トルステン王子は呆れていた。普通は、ランベルト王子が婚約破棄の手続きをしたり、次の相手を手配する。なのに彼は、全く何もしなかった。

「まぁでも、ランベルトが怠け者だったおかげで、この話ができる」
「この話?」
「あぁ。エリザベート、俺と婚約してくれ」
「……え?」

 私は、第二王子のトルステンに婚約を申し込まれた。
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