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第二章
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しおりを挟む途中のコンビニでパンと水を買い、イートインコーナーでそれを食べながら時間を潰した。ある程度の時間になったため、そのまま登校する。
学校は驚くほどに変わらなかった。私に対して暴言を吐く人はいない分、寄ってきてくれる人もいない。
その原因は知っている。私の方から離れたのだ。この人も、あの人も、何だか合わない。何か違う。だから女子特有のグループを転々として行くうちに、気づけば一人になっていた。
それは慣れっこだった。寧ろ、普段通りの生活が戻ってきたことに安心感すら覚える。
朝礼、一時間目、二時間目と授業が進み、昼休みになった。暇になった私は、隣のクラスを覗きに行く。
いつものように、後ろ側の扉から中を覗くと、一番後ろの窓側の席に、複数の男子に囲まれた高羅の姿があった。
「あ、ほら小木。来たよ彼女さん」
一人が気づき、高羅に呼びかけた。高羅も、あっと口を開け、こちらを見ている。同時に、周りにいた男子たちも一斉に振り向いた。
「あ、やっぱり大丈夫! またね!」
私は高羅に手を振り、覗かせていた顔を引っ込める。
残念。話をしているのなら仕方がない。高羅は人気者なのだから。
そう思い、廊下の窓から見える青空を眺めていると、ある発言が耳に入った。
「小木さ、どうしてあの子と付き合ったの? あんまり良い噂聞かないじゃん」
うわ、と思い立ち去ろうとする。だが、その理由は私も気になっていた。なぜ、高羅ほどの人気のある人が、私なんかと付き合ってくれたのだろう。
別に、この学校では頭も良くないし、スポーツだって人並みだ。顔はそこそこに可愛いと言われたことはあるが、特別良いわけじゃないし、学校では完全に浮いている存在。
それのどこを、好きになってくれたと言うのだろうか。
私は息を潜めて、全神経を耳に集中させた。
「うーん、なんでだろうね」
えぇ、と落胆した声が聞こえた。その後、高羅の控えめな笑い声が上がる。
どういうこと?
それ後に何か付け加えの発言があるかと待っていたが、高羅は何も言わなかった。空気を読んだのか、友達が別の話題を始める。
高羅の気持ちがわからなかった。好きになってくれたからとか、どこか一つの部分が気に入ったからとか、何もないのだろうか。何もなくて付き合うのは普通なのか?
黒い雲が、心の世界を覆っていく。外の世界は青空が広がっているというのに、私だけが夜明け前の暗闇に取り残されているような心地だった。
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