最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san

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25. ドラゴン族ファイ

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 ビースト国の国王は、苛立ちながら城の地下へ続く階段を下りていた。

国王はヴァンパイア国から拉致してきた魔具研究所の研究員達に魔獣を従えさせる魔道具を作らせ、そしてさらにドラゴン族も使役できるようにと魔道具を改良することを命令していた。しかし研究員からはドラゴン族を従わせる魔道具を作ることは不可能だと報告が上がってきていた。

地下の研究施設のドアを開けると、中にいた研究員達はビクッとしながらドアの側に立っている国王を見た。

「ドラゴン族を使役することは不可能だと言った奴は誰だ。前に出ろ」

国王がそう言うと、部屋の奥に座っていた年老いた研究員が皆を庇うように前に出てきた。

「国王様、ドラゴン族を使役することは不可能です。魔獣は知能の低い動物が瘴気によって狂暴化したものですが、ドラゴン族は大きい魔力を持ち知能も高い。魔道具等では……ヒィー!」

国王は剣を一振りすると、年老いた研究員は血を流して倒れた。

「誰か、ドラゴン族を使役できる魔道具を作れる奴はここにおらんのか!」

国王が怒鳴ると、震えながら立っていた若い研究員が小さな声で答えた。

「強い魅了を使える者を1人犠牲にしていただければ、可能かもしれません……」

「なるほど。わかったすぐに連れてくる」国王はニヤリと笑うと、振り向きもせずに部屋を出て行った。


国王は執務室に戻ると、侍従にアランをすぐに呼ぶように指示した。アランはヒューマン国から帰国してからはビースト国の諜報部に配属されていた。

しばらくすると国王の執務室をノックして、アランが緊張した面持ちで入室してきた。

「国王様、御呼びでしょうか」

国王は笑顔を作りアランに新しい仕事の内容を伝えた。

「実はな、アランにしか出来ない仕事があって、それをお前にやってもらいたい。魔獣を使役する魔道具が完成したのは知っておるな。それを改良してドラゴンも操れる魔道具を開発しているんだが、なかなか上手くいかんらしい。それで研究員が魅了を使える奴を要求してきている。魅了の力を魔道具で倍増させドラゴンを操るらしいんだが、アランお前やってくれるか」

ヒューマン国の王立学院でクロエに魅了をかけることが出来ずに悔しい思いをしたアランは、国王からの提案をすぐに承諾して地下の研究施設に向かった。

「俺のことを馬鹿にしたあいつらを、倍増した俺の力で潰してやる……」

アランは歪んだ表情でニヤリと笑うと研究施設の中へ入っていった。


* * *


その頃、レイはクロエ達を引き連れ魔国とビースト国の境にあるドラゴン族の元へ来ていた。

「この辺りに族長のファイ殿が居るはずなんじゃが……」

クロエ達は火山口に立って周りをキョロキョロと眺めていると、いきなり火山口の中から20メートルはあるかと思われるドラゴンが飛び上がってきた。

「レイ!久しぶりだなぁ!」

ドラゴンはドスン!とレイの前に着地し、ブワッと炎が上がったかと思うと人型になった美丈夫が現れた。炎のような紅の髪に金色の瞳で2メートルを超える身長に筋肉隆々。クロエは「すごい派手~!」とポカンと口を開けて見つめてしまった。

「ファイ殿!相変わらずお元気そうですな!今日はシエラ王女の娘のクロエ、そしてロア様と儂の孫のルカを連れて参りました」

ドラゴン族の族長ファイがクロエの前に来ると跪いて頭を下げた。

「初めてお会いする。儂はドラゴン族の族長のファイだ。シエラ王女の娘、大きくなられた……」

ファイはクロエにシエラ王女の面影を見つけたかのように目を細めてクロエを見つめた。

「ファイ殿、実は急いで知らせねばならないことがある。隣国のビースト国の国王が魔獣とドランゴン族を従える魔道具を作っているらしいんじゃ。魔獣を操る魔道具は完成してるようだが、ドラゴン族を操る魔道具はまだ開発中らしい。しかし近いうちに奴らがここにやって来るはずじゃ。そしてその魔道具を使ってドラゴン族を操り、ブラウン辺境伯を襲わせようとしている。儂らはそれを伝えに来たんじゃ」

「ふん!魔道具なんかに俺らが操られるわけがなかろう。浅はかだな考えだな。よし!俺の孫に始末させるわ」

ファイは空を見上げて指笛を吹くと、空のかなり上空からファイよりひと回り小さいドラゴンがクロエ達の前に降り立った。するとすぐに人型になり、ファイ似の孫がクロエ達の前に現れた。

「儂の孫のブレイズだ。儂に似て男前じゃろ?」ファイはクロエに悪い笑顔でウィンクした。

「爺様、話は上空で聞いてました。ビースト国の者たちですが、俺らの土地に入ってきてから殺りますか?それとも先にビースト国を潰してきた方がいいですか?」

(((話、早やっ!)))

レイは、「さすがはファイ殿の孫じゃの~」とワッハッハ!と笑いながら、ファイとブレイズに今の状況を説明した。

「そうか、企んでいるのは国王のみか。ビースト国には息子が2人と娘が1人居ったはずだから、国王の首を獲った後は子供らに任せれば問題ないな。そうなると、どうやって国王の首を獲るかだが……」

ブレイズは、全く問題ないという顔で答えた。

「こんなものはサクッと終わらせましょう。国王1人の企みならば、国王だけをとっとと殺ればいい。なにも難しいことはない。俺と部下2人で殺ってきます」

「そうだな、さっさと終わらせた方がいいな。レイ、こっちの方は仕事が終わったら連絡する」

「わかりました。ファイ殿、ブレイズ殿、ビースト国のことはよろしくお願いいたします」レイはにっこりと笑って頭を下げた。

「レイ、仕事の話は終わりだな?久しぶりに会ったんじゃから、今日はうちで宴会するぞ!」

ファイは、火山口にいた全員を連れてドラゴン族が住む場所へ転移して行った。


ファイが皆を連れて転移した先は、光輝くクリスタルの洞窟だった。人型になっているドラゴン族が洞窟の中にある宮殿で宴会の準備をしていた。ドラゴン族は男女ともに燃えるような紅い髪と金色の瞳を持っていた。そして、気が付くとすでにファイとレイは宴会の席に座り盃をかかげていた。

「爺さん達、早えーよ」とロアが呆れた顔をしていると、ブレイズが「俺達はこっちの席に座ろうぜ」と若者だけでテーブルを囲んだ。

「俺のことはブレイズと呼んでくれ。ロアは昔からここに遊びに来てたから良く知ってるが。えーっと、クロエ様とルカ……、あぁー呼び捨てでいいか?」

「あぁ、俺達のことはみんな呼び捨てで呼んでくれ」ロアは早速テーブルに並んだ料理に舌鼓を打ちながらブレイズに言った。

「ロアとクロエは従兄妹同士で、ルカはクロエの婚約者なんだよな」

(凄い、すでに私達の情報は把握してるのね!)

「あぁ、今はな……」ルカはいつもの無表情で答えたが、クロエにはどことなく迷っている様子に見えた。

「ルカはクロエと結婚したらシルバーズ侯爵家の仕事からは外れるのか?シルバーズ侯爵家は裏社会では超一流だからな。他国からも仕事の依頼がくるほどだろ」

「俺は、今は家の仕事からは外れているが……、まだ考え中だ。ビースト国の問題が解決したら、クロエには俺との婚約を解消して自由に生きて欲しいと思ってる」

「えっ……」

「クロエ、俺との婚約はクロエを守るためのものだった。だから、全ての問題が解決したら婚約を解消してクロエの自由に生きていいんだ。俺のことは考えなくていい」

ブレイズはクロエとルカの2人の間の空気を察すると「すまん!初対面でプライベートに突っ込んじまったな」と謝り、ちょっと席を外すと言って呼びに来た部下と一緒に部屋を出て行った。その後、戻ってきたブレイズとロア達はブラウン辺境伯の魔道具の話で盛り上がり、クロエとルカの話には触れなかった。
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