「ときめかない」ものなど捨てておしまいなさい

megane-san

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番外編 セバスの報告書

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ガイは王宮の自室で、闇魔法における時空間への干渉についての論文をまとめていた。師匠とセバスが時空間の狭間から無事に生還してしばらくした後、魔法協会の会長から時空間と魔道具について論文にしてまとめて欲しいと笑顔で依頼されていた。

「ガイ様、グリモード家の執事から時空間の狭間へ飛ばされた際の報告書が届きました」

「報告書?」

「はい。ガイ様の研究論文の参考にしてほしいということでした」

「そうか (帰還した際に、飛ばされた時の話は聞いたが……)」

ガイは、興味津々でパラパラと報告書を捲った。

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『時空間の狭間での記録』

バルブッシュ暦第11月15の日、王宮の大広間近くの回廊から、魔術師スベルスの闇魔法により、時空間の狭間に飛ばされる。

*魔術師スベルス(闇属性):
経歴:
ガーラ王立高等学院魔術科卒業
在学中に特級魔術試験を受験するが不合格
同年に受験したガーラ国王宮魔術師採用試験も不合格
その後ダリオン国に渡り、専属魔術師としてダリオン国と魔法契約を結ぶ
元サヴィル侯爵からダリオン国宰相へ魔法契約解除の交渉がありガーラ国へ帰国する
その後は、サヴィル侯爵邸に滞在

*時空間の狭間へ引き込まれるまでの経緯
夜会の大広間から出たシルビア様が化粧室に行く際に、侍女1名とクリスティーナ様、そして王弟殿下が付き添われる

シルビア様とクリスティーナ様が化粧室に入られるとすぐに、クリスティーナ様に変化した魔術師スベルスが化粧室から助けを求めて王弟殿下に駆け寄って腕を掴むと、時空間の裂け目に腕を掴んだまま自ら飛び込む

時空間の裂け目に入った瞬間に結界の魔道具が作動。魔道具を持たないスベルス氏は、入った瞬間に体が細長く伸びて時空の川のような流れと共に空間奥へ流されていった。
(王弟殿下と私は結界の作用なのか、川に流されることも無く、無数に交わる光の川の側に立っていた)

クリスティーナ様の魔力を追う魔道具の指輪を作動させると、王弟殿下と私の指輪は正常に作動し光を発するが、それぞれの指輪は違う方向を指していた。そして王弟殿下の指輪が指し示す方向へ向かう。

少し歩くと川の流れの中に王弟殿下の前世の姿が写し出され、王弟殿下が自分に掛けた術式が解ける。

次に私の指輪が指し示す方向へ歩いていくと、今度は川の流れの中に私自身の前世が写し出される。

王弟殿下と私の指輪が次々に違う方向を指し、その光の先で、王弟殿下と私の前世・前々世の姿を見る。そしてそのそれぞれの世界には、今世でも存在する人物が現れた。

王弟殿下と私の指輪の光が指し示す方向が同じになったことに気が付き、光の方に向かって進んでいくと物凄く眩しい光が私達を包み込み、時空間の中からはじき出されて、気が付くと魔の森の滝壷に落ちていた。

*時空間の様子
空気・温度の有無は結界の中からは確認不可。重力については、結界の魔道具無しで引き込まれた魔術師の体が伸びてそのまま空間奥に引き込まれていったことから、空間奥から引き込まれるような何かしらの重力があると考えられる。

真っ暗な空間だが、光の川のようなものが無数に交わって空間奥に向かって流れている。光の川のようなところを覗くと、色々な世界の人の姿が見える。王弟殿下と私の前世と思われる姿も確認。……

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(セバスの前世!? 師匠の前世を見てきたとは言っていたが、セバスも前世を見てきたのか!)

ガイは、報告書を手に持ち、「ちょっとグリモード家に行ってくる」と侍従に告げるとすぐにその場から転移した。

ガイがグリモード家の前に転移してくると、グリモード家の裏庭からワイワイと声が聞こえてきたのでそちらに向かうとノアが野菜の入った大きな籠を持って声をかけてきた。

「ガイ様、どうされたのですか?」

「いや、セバスに聞きたいことがあってね」

「グリモード家の皆様もレイ様もみんなでバーベキューをしておりますので、どうぞこちらへ」

ノアに案内されて裏庭に行くと、皆がガイに気が付いて立ち上がった。

「ガイ様!どうされたのですか?こちらの席にどうぞ!」

クリスティーナはガイの席を準備すると席に座るように促した。

「セバスに聞きたいことがあったんだが……。今日は何の宴会なんだ?」

「今日は商会の従業員に新しく新人が入ったのでその歓迎会なんです」

「従業員の歓迎会?」

「はい。私とレイ様が住んでいた前世の世界では、新しく従業員が入ると歓迎会をすることがあったので、うちの商会でもその習慣を取り入れることにしたんです」

「平民の従業員のための歓迎会……」

「貴族制度も廃止されましたからね」クリスティーナはニッコリと微笑みながらガイに答えた。

グリモード夫妻とレイがグラスを持ってガイとクリスティーナが座っているテーブルに移動して来ると執事のセバスとノアがサッと夫妻とレイの後ろに立った。

久しぶりに会った夫妻と師匠に挨拶をすると、ガイはセバスに報告書にあったセバスの前世について質問をした。

「セバス、報告書にセバスが自分の前世を見てきたってあったけど、どんな前世だったか聞いてもいいかな?」

セバスは「もちろんです」と頷くとチラッとノアに目線を向けた。

「私が前世で住んでいた世界はクリスティーナ様とレイ様と同じ世界線でした。しかし私が見た前世の映像は時間が少しずれておりまして、クリスティーナ様とレイ様が同時に存在していた時間から約200年ほど過去の時代でありました。私は日本という国で甲賀忍者という一族の中で諜報の仕事をしておりました。そしてその私には息子がおり、その息子が前世のノアでした」

「えぇ~!前世でも同じ仕事をしてたのか!そして息子がノア!」

「はい。ノアに初めて会った時に何か妙な懐かしさのようなものを感じたのですが、前世でノアが私の息子だったようで……」

ガイはノアに顔を向けると「ノアは、セバスに初めて会った時に何か感じた?」と訊ねたが、ノアはいつもの無表情で「全く何も感じませんでした。非常に恐い教官としか……」と答えた。

クリスティーナはにこやかにノアに微笑んだ。

「ふふふ、愛ですよ。ノアに才能を見出して、セバスはそれを鍛え上げたのでしょうね。私もセバスの特訓を受けて血だらけになりながらセバスの慈愛を感じたわ~」


それを聞いていた従業員達は、みんな苦笑いをしながら同情の眼差しで新人達を見た。

(((((セバス様の指導は、愛を超えてるから!新人、頑張れよ……)))))

そして新人達は「血だらけ?」と背中に嫌な汗を感じたのであった。
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