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22. サヴィル侯爵の反逆
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「旦那様、ダリオン国宰相様から手紙が届きました」
執務室にいたサヴィル侯爵が手紙を開くと、ニンマリと笑いながら読み終わった手紙を机に放った。
「王妃への打診は断られたが、宰相は乗ってきたか。あの宰相なら金のことしか考えていないから擁しやすいな。こちらはダリオン国で王宮魔術師となった彼奴さえ手に入ればいい。宰相にはフィリオの粉を渡せば取引成立だ。事後に逃亡する国への根回しも順調だし、私の息子を馬鹿にした王弟に一泡吹かせてやる」
サヴィル侯爵は、王弟のレイノルドと王立高等学院の同期だった。その当時、レイノルドと同じ学年に在籍していたサヴィル侯爵と特級魔術師をめざしていたスベルスは、学年のトップを競い合っていたが、どんなに努力してもレイノルドを上回ることが出来ず、二人は全ての分野で才能を発揮するレイノルドを妬んでいた。
レイノルドは常に学年首席の成績を取り、魔術の技術もすでに王宮魔術師をも凌ぐ力を持っていて、剣の腕前も人格も素晴らしく次期国王にと推す声もあったが、自分は兄の補佐をすると宣言して学院を卒業するとすぐに王位継承権を放棄した。
卒業の年に行われた魔法協会が主催する特級魔術試験をレイノルドが受けると知ったサヴィル侯爵とスベルスは共に受験をしたが、レイノルドがオリジナル術式を駆使した魔道具を披露した後の二人の結果は散々に終わった。
レイノルドの構築した術式は、A地点とB地点をドアで繋ぐ、いわゆる『どこでもドア』のようなものだった。今まで、魔道具と大きな魔力を必要とした転移を、このドアで2拠点を繋ぐことにより、魔力がない者でも遠い距離を一瞬で行き来できるものだった。
サヴィル侯爵は土魔法を使った植物の遺伝子組み換えのような術式を発表し、農作物の生産が難しい地域でも育つ植物を作ることが出来るのではないかと一部の審査員には評価されたが、魔術レベルが特級には達していないということで受験は不合格となった。
一方でスベルスは、魔術の技術は特級レベルだが、闇魔術を使用したオリジナルの術式が中途半端だと評価されて不合格となった。彼が披露した術式は、時の歪みの狭間へ穴を開けるというものだった。転移のように空間に干渉する術式は過去にも構築されていたが、時の狭間に干渉する術式は初めてのものだった。しかし、穴を開けて物を投げ入れることは出来るが、そこから取り出すことは不可能だったため、審査員からこの術式をもっと改良してから特級魔術試験に再度挑戦してほしいと言われて不合格となった。
そして、特級魔術試験で不合格になった二人は、その後それぞれ別の道を選択した。
サヴィル侯爵は、自分の領地で植物の掛け合わせを繰り返し、『フェリオの粉』という麻薬を作り出して、各国の裏社会へ繋がりを作りどんどん深みに嵌まっていった。
スベルスは、隣国のダリオン国へ移住し、研究を続けながらダイオン国の王宮魔術師としてダリオン国内で集められた魔力持ちの子供たちを指導していた。
♢*♢*♢*♢*♢*
「スベルス、久しぶりだな」
サヴィル侯爵の屋敷に、ダリオン国との専属魔術師の魔法契約を破棄したスベルスが訪れた。
「エバンズ、何を企んでいる。俺をこの国に呼び戻して何をする気だ」
「レイノルドに一泡吹かせてやりたいと思ってな。この国は改革派が王政と貴族制度の廃止を進めている。奴はその王政廃止後にこの国の首相になるらしい。なぜ奴ばかりが皆から賞賛を浴び続けるんだ?俺達だって優秀だったのに、俺は自領で地味に麻薬を作り続け、お前は隣国で子供の世話だよ。レイノルドが居なかったら、俺達も特級魔術師になれて華々しい生活を送れていたんじゃないか?俺は奴を消したい。俺の家族も奴に馬鹿にされたからな」
「エバンズ、お前はまだそんな思いに囚われているのか?」
「あぁ、囚われてるよ。レイノルドがこの世界にいる限り、俺はこの思いにずっと囚われる。だから奴を消してしまいたい」
「どうやって消すつもりだ」
「スベルス、お前の構築した時空間の狭間にに物を飛ばす術式だよ。あれで奴を飛ばしてほしい」
「対価は?」
「お前の実家の商会の船が襲われて巨大な負債を抱えていると聞いた。その負債をうちで全部負担しよう。金で取引出来るならそれが一番後腐れないからな」
スベルスは、目を瞑って少し考えた後に口を開いた。
「わかった、取引しよう。しばらくこの屋敷に身を隠す。これを実行に移すには綿密な計画が必要だ」
「取引成立だ、すぐに客間を用意させる。レイノルドはグリモード家で匿われている。まったく隙の無い家だから、こちらも動きを読まれないように気を付けてくれ」
スベルスは「グリモード家か……厄介だな。かなり慎重に裏をかく計画を練らねば」と呟くと、顎に手を当ててた。
「私が居る客間には結界を張る。改良した術式を見直すから、部屋には誰も近づかないように執事に言づけてくれ。食事も適当にとるから準備は不要だ」
「よろしく頼むよ、スベルス。俺達の憂いを晴らすんだ」
スベルスは、客間に案内されるとすぐに結界を張り、ベッドに寝転がった。
「ようやく忘れかけてた感情を、エバンズに引きずりだされたな……」
スベルスは、特級魔術試験で不合格になった後、卒業後に希望していたガーラ国の王宮魔術師採用試験にも不採用となっていた。子爵家の三男だったスベルスは、家族から実家で営んでいた商会で働けばいいと言われたが、彼のプライドが許さず、ダリオン国の魔術塔で魔術師を募集しているという話を聞きつけ、ガーラ国に見切りをつけてダリオン国へ向かった。
ダリオン国は魔力を有する者が少なく、魔力持ちを国で囲うために、7歳になった子供は教会で魔力検査を受け、魔力持ちの子供たちは国の魔術塔に集められる。スベルスはその子供たちに魔術の使い方を教える仕事に就いていた。スベルスはその仕事に全くやりがいを感じていなかったが、ガーラ国に戻ることも出来ず、ただひたすらに研究を続けていた。実家の家族からは頻繁にスベルスを気遣う手紙が届いていたが、専属契約を結ぶダリオン国からは出ることが出来ず、何のために研究を続けているのか?何のためにここで生きているのか?スベルスは只々同じような日々を繰り返すことに疲れ、生きることから逃れたいと思うことが多くなっていた。
「レイノルドを時空間の狭間に飛ばしたら、俺も消えよう」
♢*♢*♢*♢*♢*
レイはグリモード家の談話室で、改革派が推し進める王政廃止の原案を確認していた。
「レイ様、旦那様が執務室に来てほしいそうです」
セバスがレイを呼びに来ると、「何か動きがあったのか?」と、セバスと一緒に執務室に向かった。
「レイ様、急にお呼びして申し訳ない。今、サヴィル侯爵について情報が入ったのですが、レイ様はスベルスという魔術師をご存知でしょうか?」
「スベルス……?私の学院時代の同期でスベルスという優秀な魔術師がいたが……、彼が何か?」
「その魔術師が、今サヴィル侯爵家に滞在しているようです」
レイは暫く考えていたが、「……そういうことか。ウィリアム殿、彼らが私を消す方法がわかりましたよ」と難しい表情で顔を上げた。
レイは、サヴィル侯爵とスベルスとの関係、そしてスベルスが構築した術式でレイを時空間の狭間に飛ばそうとしているんだろうということについてウィリアムに説明した。
「サヴィル侯爵もスベルス殿も学院では優秀な魔術師だった。彼らは私を妬んでいたようだったが、それがこれだけの時間が経っても無くならないのか……」
「サヴィル侯爵は財も権力も持っていますが、過去の敗北感はずっと残ったままなのでしょう。レイ様が王政廃止後の首相に推薦されて名が広まったことで、過去の思いが浮上したのかもしれませんね。あっ、それと彼の息子を王宮の牢に一晩入れてましたね~」
「あぁ、そんなこともあったな」と、レイは苦笑いした。
ウィリアムは真面目な顔でこれからのこちらの対策をどうするか考えていた。そして、サヴィル侯爵に対する王宮側での動きについてレイに尋ねた。
「サヴィル侯爵が裏で流しているフィリオの粉ですが、これを基にサヴィル侯爵を拘束することは出来ないのですか?」
「フィリオの粉については、王宮側でも難儀しているものなんだ。この薬は少量であれば気付け薬としてとても効果の高い薬なんだが、用量を超えると麻薬と同じ作用が出る。サヴィル侯爵はこの薬を気付け薬として販売しているが、裏では麻薬として各国の裏社会へ流している。王宮側は、その証拠を押さえられないでいるんだ」
「そういうことでしたか……。薬として輸出されれば、国は何も言えないですからね。そういえば、サヴィル侯爵領への改革後の下請け内容は決まったのですか?」
「サヴィル侯爵領は、薬草の産地だからね。魔法薬に使用する薬草を国に卸してもらうことになっている。彼は改革にまだ反対を唱えているがね」
二人が話をしているところに、ノックをしてクリスティーナが入室して来た。
「お父様、失礼いたします。レイ様がこちらにいるとお聞きしたのですが……。二人とも難しいお顔をされて、何かあったのですか?」
クリスティーナが部屋に入ると、二人の緊張がほぐれたように部屋の空気が軽くなった。
「クリスがいると部屋の空間が浄化されるようだね。無意識に浄化しているんだろな……。そうだ、ウィリアム殿。クリスに先ほどの話をして、彼女の考えを聞いてみたいのですがいかがでしょう?」
「確かに……。クリスなら違う視点から問題を解決できるかもしれないな」
クリスティーナは、サヴィル侯爵家にいる魔術師が、レイを時空間魔法で時空の狭間へ飛ばすことを考えているかもしれないという話を聞くと、「時空間の狭間に飛んだら出られない……ということは……」と、ブツブツと考えに集中していたが、ハッと閃いたように「出る方法を考えたらいいのよ!」と立ち上がりながら叫んだ。
二人は、突然立ち上がって叫んでいるクリスに顔を引きつらせながら首を傾げた。
((出る方法?クリス、何か閃いたのか?))
執務室にいたサヴィル侯爵が手紙を開くと、ニンマリと笑いながら読み終わった手紙を机に放った。
「王妃への打診は断られたが、宰相は乗ってきたか。あの宰相なら金のことしか考えていないから擁しやすいな。こちらはダリオン国で王宮魔術師となった彼奴さえ手に入ればいい。宰相にはフィリオの粉を渡せば取引成立だ。事後に逃亡する国への根回しも順調だし、私の息子を馬鹿にした王弟に一泡吹かせてやる」
サヴィル侯爵は、王弟のレイノルドと王立高等学院の同期だった。その当時、レイノルドと同じ学年に在籍していたサヴィル侯爵と特級魔術師をめざしていたスベルスは、学年のトップを競い合っていたが、どんなに努力してもレイノルドを上回ることが出来ず、二人は全ての分野で才能を発揮するレイノルドを妬んでいた。
レイノルドは常に学年首席の成績を取り、魔術の技術もすでに王宮魔術師をも凌ぐ力を持っていて、剣の腕前も人格も素晴らしく次期国王にと推す声もあったが、自分は兄の補佐をすると宣言して学院を卒業するとすぐに王位継承権を放棄した。
卒業の年に行われた魔法協会が主催する特級魔術試験をレイノルドが受けると知ったサヴィル侯爵とスベルスは共に受験をしたが、レイノルドがオリジナル術式を駆使した魔道具を披露した後の二人の結果は散々に終わった。
レイノルドの構築した術式は、A地点とB地点をドアで繋ぐ、いわゆる『どこでもドア』のようなものだった。今まで、魔道具と大きな魔力を必要とした転移を、このドアで2拠点を繋ぐことにより、魔力がない者でも遠い距離を一瞬で行き来できるものだった。
サヴィル侯爵は土魔法を使った植物の遺伝子組み換えのような術式を発表し、農作物の生産が難しい地域でも育つ植物を作ることが出来るのではないかと一部の審査員には評価されたが、魔術レベルが特級には達していないということで受験は不合格となった。
一方でスベルスは、魔術の技術は特級レベルだが、闇魔術を使用したオリジナルの術式が中途半端だと評価されて不合格となった。彼が披露した術式は、時の歪みの狭間へ穴を開けるというものだった。転移のように空間に干渉する術式は過去にも構築されていたが、時の狭間に干渉する術式は初めてのものだった。しかし、穴を開けて物を投げ入れることは出来るが、そこから取り出すことは不可能だったため、審査員からこの術式をもっと改良してから特級魔術試験に再度挑戦してほしいと言われて不合格となった。
そして、特級魔術試験で不合格になった二人は、その後それぞれ別の道を選択した。
サヴィル侯爵は、自分の領地で植物の掛け合わせを繰り返し、『フェリオの粉』という麻薬を作り出して、各国の裏社会へ繋がりを作りどんどん深みに嵌まっていった。
スベルスは、隣国のダリオン国へ移住し、研究を続けながらダイオン国の王宮魔術師としてダリオン国内で集められた魔力持ちの子供たちを指導していた。
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「スベルス、久しぶりだな」
サヴィル侯爵の屋敷に、ダリオン国との専属魔術師の魔法契約を破棄したスベルスが訪れた。
「エバンズ、何を企んでいる。俺をこの国に呼び戻して何をする気だ」
「レイノルドに一泡吹かせてやりたいと思ってな。この国は改革派が王政と貴族制度の廃止を進めている。奴はその王政廃止後にこの国の首相になるらしい。なぜ奴ばかりが皆から賞賛を浴び続けるんだ?俺達だって優秀だったのに、俺は自領で地味に麻薬を作り続け、お前は隣国で子供の世話だよ。レイノルドが居なかったら、俺達も特級魔術師になれて華々しい生活を送れていたんじゃないか?俺は奴を消したい。俺の家族も奴に馬鹿にされたからな」
「エバンズ、お前はまだそんな思いに囚われているのか?」
「あぁ、囚われてるよ。レイノルドがこの世界にいる限り、俺はこの思いにずっと囚われる。だから奴を消してしまいたい」
「どうやって消すつもりだ」
「スベルス、お前の構築した時空間の狭間にに物を飛ばす術式だよ。あれで奴を飛ばしてほしい」
「対価は?」
「お前の実家の商会の船が襲われて巨大な負債を抱えていると聞いた。その負債をうちで全部負担しよう。金で取引出来るならそれが一番後腐れないからな」
スベルスは、目を瞑って少し考えた後に口を開いた。
「わかった、取引しよう。しばらくこの屋敷に身を隠す。これを実行に移すには綿密な計画が必要だ」
「取引成立だ、すぐに客間を用意させる。レイノルドはグリモード家で匿われている。まったく隙の無い家だから、こちらも動きを読まれないように気を付けてくれ」
スベルスは「グリモード家か……厄介だな。かなり慎重に裏をかく計画を練らねば」と呟くと、顎に手を当ててた。
「私が居る客間には結界を張る。改良した術式を見直すから、部屋には誰も近づかないように執事に言づけてくれ。食事も適当にとるから準備は不要だ」
「よろしく頼むよ、スベルス。俺達の憂いを晴らすんだ」
スベルスは、客間に案内されるとすぐに結界を張り、ベッドに寝転がった。
「ようやく忘れかけてた感情を、エバンズに引きずりだされたな……」
スベルスは、特級魔術試験で不合格になった後、卒業後に希望していたガーラ国の王宮魔術師採用試験にも不採用となっていた。子爵家の三男だったスベルスは、家族から実家で営んでいた商会で働けばいいと言われたが、彼のプライドが許さず、ダリオン国の魔術塔で魔術師を募集しているという話を聞きつけ、ガーラ国に見切りをつけてダリオン国へ向かった。
ダリオン国は魔力を有する者が少なく、魔力持ちを国で囲うために、7歳になった子供は教会で魔力検査を受け、魔力持ちの子供たちは国の魔術塔に集められる。スベルスはその子供たちに魔術の使い方を教える仕事に就いていた。スベルスはその仕事に全くやりがいを感じていなかったが、ガーラ国に戻ることも出来ず、ただひたすらに研究を続けていた。実家の家族からは頻繁にスベルスを気遣う手紙が届いていたが、専属契約を結ぶダリオン国からは出ることが出来ず、何のために研究を続けているのか?何のためにここで生きているのか?スベルスは只々同じような日々を繰り返すことに疲れ、生きることから逃れたいと思うことが多くなっていた。
「レイノルドを時空間の狭間に飛ばしたら、俺も消えよう」
♢*♢*♢*♢*♢*
レイはグリモード家の談話室で、改革派が推し進める王政廃止の原案を確認していた。
「レイ様、旦那様が執務室に来てほしいそうです」
セバスがレイを呼びに来ると、「何か動きがあったのか?」と、セバスと一緒に執務室に向かった。
「レイ様、急にお呼びして申し訳ない。今、サヴィル侯爵について情報が入ったのですが、レイ様はスベルスという魔術師をご存知でしょうか?」
「スベルス……?私の学院時代の同期でスベルスという優秀な魔術師がいたが……、彼が何か?」
「その魔術師が、今サヴィル侯爵家に滞在しているようです」
レイは暫く考えていたが、「……そういうことか。ウィリアム殿、彼らが私を消す方法がわかりましたよ」と難しい表情で顔を上げた。
レイは、サヴィル侯爵とスベルスとの関係、そしてスベルスが構築した術式でレイを時空間の狭間に飛ばそうとしているんだろうということについてウィリアムに説明した。
「サヴィル侯爵もスベルス殿も学院では優秀な魔術師だった。彼らは私を妬んでいたようだったが、それがこれだけの時間が経っても無くならないのか……」
「サヴィル侯爵は財も権力も持っていますが、過去の敗北感はずっと残ったままなのでしょう。レイ様が王政廃止後の首相に推薦されて名が広まったことで、過去の思いが浮上したのかもしれませんね。あっ、それと彼の息子を王宮の牢に一晩入れてましたね~」
「あぁ、そんなこともあったな」と、レイは苦笑いした。
ウィリアムは真面目な顔でこれからのこちらの対策をどうするか考えていた。そして、サヴィル侯爵に対する王宮側での動きについてレイに尋ねた。
「サヴィル侯爵が裏で流しているフィリオの粉ですが、これを基にサヴィル侯爵を拘束することは出来ないのですか?」
「フィリオの粉については、王宮側でも難儀しているものなんだ。この薬は少量であれば気付け薬としてとても効果の高い薬なんだが、用量を超えると麻薬と同じ作用が出る。サヴィル侯爵はこの薬を気付け薬として販売しているが、裏では麻薬として各国の裏社会へ流している。王宮側は、その証拠を押さえられないでいるんだ」
「そういうことでしたか……。薬として輸出されれば、国は何も言えないですからね。そういえば、サヴィル侯爵領への改革後の下請け内容は決まったのですか?」
「サヴィル侯爵領は、薬草の産地だからね。魔法薬に使用する薬草を国に卸してもらうことになっている。彼は改革にまだ反対を唱えているがね」
二人が話をしているところに、ノックをしてクリスティーナが入室して来た。
「お父様、失礼いたします。レイ様がこちらにいるとお聞きしたのですが……。二人とも難しいお顔をされて、何かあったのですか?」
クリスティーナが部屋に入ると、二人の緊張がほぐれたように部屋の空気が軽くなった。
「クリスがいると部屋の空間が浄化されるようだね。無意識に浄化しているんだろな……。そうだ、ウィリアム殿。クリスに先ほどの話をして、彼女の考えを聞いてみたいのですがいかがでしょう?」
「確かに……。クリスなら違う視点から問題を解決できるかもしれないな」
クリスティーナは、サヴィル侯爵家にいる魔術師が、レイを時空間魔法で時空の狭間へ飛ばすことを考えているかもしれないという話を聞くと、「時空間の狭間に飛んだら出られない……ということは……」と、ブツブツと考えに集中していたが、ハッと閃いたように「出る方法を考えたらいいのよ!」と立ち上がりながら叫んだ。
二人は、突然立ち上がって叫んでいるクリスに顔を引きつらせながら首を傾げた。
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