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3話 ザッカス
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その男は、漆黒と言うより闇色と言った方がいいほどの黒いフルプレートを纏い、どっしりとした重量感を見る相手に向けていた。
不思議と汚れらしき物が見当たらなく、射してきた陽の光を受けてもそれを反射してはいなかった。
そして、動いても関節部分が当たる時に生じる筈の音もしない。
オールバック気味にしているが僅かばかり顔に垂れいる髪は、緩やかなウェーブがある長い濡れた様に艶のある黒髪。後ろで結わい紐か何かで、1つに纏めている事がうかがえる。
表情の無い顔は、掘りが深く整った精悍さがある顔立ちで、目元と口元には小さな皺が見てとれる。
そして、無精髭なのだろうか明らかに手入れされていない薄い髭があった。
目は二重で切長ではあるが細くはない。
そして、瞳は黒。
フルプレートと黒髪と同じ闇色の黒。
生気に溢れてる瞳では無いが、どこか異様な光を醸し出している。
年齢は40代の半ばぐらいであろうか、男からは何とも言えない大人の男の色気が溢れている。
五十鈴はその色香に当てられたのか、頰をうっすら赤く染めるが、小さく固唾を飲み込むと、黙したまま自分見つめている男へと口を開く。
「東條五十鈴といいます…。あなたは?」
「ザッカス」
男・ザッカスは、自分の名前を五十鈴に静かに告げた。
そして、また会話が止まる。
まるでザッカスは五十鈴との必要以上の会話を拒絶している様に感じられる。
しかし、五十鈴は意を決して再び口を開いた。
今は情報が欲しい。
ただそれだけだった。
「ザッカスさん…あ、あの私、私は…」
「異世界から来たのだろ?」
「えっ…」
言葉を遮られる様にザッカスの低く冷たい声が響く。
五十鈴は、小さく口を開いたまま目を見開きザッカスを見た。
この人は、私がこの世界の人間では無い事を知っている。
驚きを隠せないまま両手を地面に着けてザッカスへと身体を前にした。
その様を相変わらず無表情なまま見つめていたザッカスは静かに告げる。
「帰る事は出来ない。お前の様に異世界から来た者は極稀にいたが、誰1人として帰る事は出来なかった。おそらく一方通行なのだろう。だから諦めろ」
元の世界に帰る事は出来ないと、告げるザッカスは冷たく無慈悲なものに五十鈴の耳には聞こえた。
これから自分はどうしたらいいのか、目の前が真っ暗になる。
意図せず異世界に飛ばされてきた自分は、この世界では何の力も知識も無い。
1人でどうやって生きて行けばいいのか、わからない。わかりたくない。
涙が溢れそうになり、唇をきつく噛みしめ、地面に着けていた両手が土を握る。
項垂れる五十鈴の頭の上から、ザッカスの冷たい声が降る。
「俺の庇護下に入れ」
不思議と汚れらしき物が見当たらなく、射してきた陽の光を受けてもそれを反射してはいなかった。
そして、動いても関節部分が当たる時に生じる筈の音もしない。
オールバック気味にしているが僅かばかり顔に垂れいる髪は、緩やかなウェーブがある長い濡れた様に艶のある黒髪。後ろで結わい紐か何かで、1つに纏めている事がうかがえる。
表情の無い顔は、掘りが深く整った精悍さがある顔立ちで、目元と口元には小さな皺が見てとれる。
そして、無精髭なのだろうか明らかに手入れされていない薄い髭があった。
目は二重で切長ではあるが細くはない。
そして、瞳は黒。
フルプレートと黒髪と同じ闇色の黒。
生気に溢れてる瞳では無いが、どこか異様な光を醸し出している。
年齢は40代の半ばぐらいであろうか、男からは何とも言えない大人の男の色気が溢れている。
五十鈴はその色香に当てられたのか、頰をうっすら赤く染めるが、小さく固唾を飲み込むと、黙したまま自分見つめている男へと口を開く。
「東條五十鈴といいます…。あなたは?」
「ザッカス」
男・ザッカスは、自分の名前を五十鈴に静かに告げた。
そして、また会話が止まる。
まるでザッカスは五十鈴との必要以上の会話を拒絶している様に感じられる。
しかし、五十鈴は意を決して再び口を開いた。
今は情報が欲しい。
ただそれだけだった。
「ザッカスさん…あ、あの私、私は…」
「異世界から来たのだろ?」
「えっ…」
言葉を遮られる様にザッカスの低く冷たい声が響く。
五十鈴は、小さく口を開いたまま目を見開きザッカスを見た。
この人は、私がこの世界の人間では無い事を知っている。
驚きを隠せないまま両手を地面に着けてザッカスへと身体を前にした。
その様を相変わらず無表情なまま見つめていたザッカスは静かに告げる。
「帰る事は出来ない。お前の様に異世界から来た者は極稀にいたが、誰1人として帰る事は出来なかった。おそらく一方通行なのだろう。だから諦めろ」
元の世界に帰る事は出来ないと、告げるザッカスは冷たく無慈悲なものに五十鈴の耳には聞こえた。
これから自分はどうしたらいいのか、目の前が真っ暗になる。
意図せず異世界に飛ばされてきた自分は、この世界では何の力も知識も無い。
1人でどうやって生きて行けばいいのか、わからない。わかりたくない。
涙が溢れそうになり、唇をきつく噛みしめ、地面に着けていた両手が土を握る。
項垂れる五十鈴の頭の上から、ザッカスの冷たい声が降る。
「俺の庇護下に入れ」
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