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21話 依頼
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活気に溢れる商店街に、マルグリットと五十鈴の姿はあった。
冒険者ギルドのギルドマスターなだけに有名人で、すれ違う人々や商店の店主らに声をかけたりかけられたりしている。
ザッカスに着いて歩くより、ゆっくりしたもので、あまりキョロキョロしないで周りを見る事も出来る。
ザッカスの言い付け通りフードを目深に被り、声は出さないのが賢明だとマルグリットにも言われて、その通りにしている。
マルグリットは、次々と五十鈴の為に必要な物を購入していく。支払いはザッカスが置いて行った小袋の中に入っていた貨幣。
どうやら、この世界では紙幣は使われてはいない事を知る。
女性用の下着についてマルグリットに尋ねると、胸袋と呼ばれる乳房を納めるものがついた丈の長いシュミーズぐらいで、基本穿くタイプの下着はなく、今の五十鈴やマルグリットの様に男性用の下穿きを穿くしかないようだった。
買い物はマルグリットのおかげですんなりと終わり、五十鈴の希望で街が見下ろせる丘へと移動して、街並みが一望できる位置へと2人して、柔らかい草の上に座っていた。
「粗方必要な物は買ったけど、イスズは何か欲しい物はないのかい?」
「あー…いえ、特には……ザックさんのお金を使っている身としては、欲は言えないですからね。それに、出来るだけ身軽の方が多分いいと思います」
「それでも、何か1つぐらいは欲しい物は好きに買ってもいいんじゃないかい?買ったって、あの男は気になんかしやしないさ」
そう言われても、やはり気が引けてならない。
いくらザッカスの庇護下に居て仕える者でも、自分はザッカスに負担になる様な事は、なるべく避けたい。
ふと、先程買った肩に斜めがけが出来る大きめのなめし革のバッグを買った店にあった物が頭の中に浮かぶ。
「あっ、1つだけ欲しいかも……んーーでもやっぱり自分の稼いだお金じゃなから止めときます」
「ふーん。じゃあ、こうしないかい?あたしがイスズに依頼をしようじゃないか。ここに金貨1枚ある」
取り出された1枚の金貨を五十鈴の方へ差し出されて、何だろう?とそれを見た。
「これでイスズが欲しい物を買ってきて、それとお釣りをあたしに渡す。報酬は、五十鈴が買ってきた物…なんてのはどうだい?まぁ、ちょっと変わったお遣いの依頼にはなるけど、実際にもっとつまらんお遣いの依頼とかあるんだよ」
「雑事みたいな依頼もあるんですね。でも、いいんですか?会ってまだ1日も経ってない…どこの馬の骨かわからない様な私相手にそこまでして…」
「いろんな人間を見てきたからね。それなりに人を見る目はあるつもりだよ。伊達でギルマスなんかやってるんじゃないって事さ。確かに、イスズがどういう素性でどういう訳ありか知らないけど、ギルドにゃ脛に傷があるヤツらは多いし、どうって事はないのさ。何よりあたしがあんたを気に入ったのさ」
彼女なりの気遣いが嬉しくありがたく、胸がいっぱいになり溢れる。
五十鈴の目から大粒の涙がぽろぽろと落ちると、マルグリットは優しく微笑んで抱きしめる。
「イスズ、あんたはいい子だよ」
かわいそう。気の毒。不憫。哀れ。
そんな下手な同情めいた言葉は言われたくはない。子供の頃から周りの大人たちは遠巻きからそれを言うだけで、厄介ごとは御免だ、関わりは持ちたくないと手を差し伸べてくれなかった。
それを言うことなく損得抜きで、手を差し伸べてくれたザッカスやマルグリットの存在が嬉しい。
母親の様に抱きしめてくれた胸の中で、一頻り泣いた五十鈴はゆっくりとマルグリットから離れ、指で目元を拭いながら微笑む。
「ありがとうございます、マルグリットさん。その依頼、是非受けさせて下さい」
「じゃ、早速街に戻るとするかい」
腰を上げて立つマルグリットに続いて立ち上がる五十鈴は、深呼吸をし大きく背伸びをすると「はいっ!」と返事をした。
冒険者ギルドのギルドマスターなだけに有名人で、すれ違う人々や商店の店主らに声をかけたりかけられたりしている。
ザッカスに着いて歩くより、ゆっくりしたもので、あまりキョロキョロしないで周りを見る事も出来る。
ザッカスの言い付け通りフードを目深に被り、声は出さないのが賢明だとマルグリットにも言われて、その通りにしている。
マルグリットは、次々と五十鈴の為に必要な物を購入していく。支払いはザッカスが置いて行った小袋の中に入っていた貨幣。
どうやら、この世界では紙幣は使われてはいない事を知る。
女性用の下着についてマルグリットに尋ねると、胸袋と呼ばれる乳房を納めるものがついた丈の長いシュミーズぐらいで、基本穿くタイプの下着はなく、今の五十鈴やマルグリットの様に男性用の下穿きを穿くしかないようだった。
買い物はマルグリットのおかげですんなりと終わり、五十鈴の希望で街が見下ろせる丘へと移動して、街並みが一望できる位置へと2人して、柔らかい草の上に座っていた。
「粗方必要な物は買ったけど、イスズは何か欲しい物はないのかい?」
「あー…いえ、特には……ザックさんのお金を使っている身としては、欲は言えないですからね。それに、出来るだけ身軽の方が多分いいと思います」
「それでも、何か1つぐらいは欲しい物は好きに買ってもいいんじゃないかい?買ったって、あの男は気になんかしやしないさ」
そう言われても、やはり気が引けてならない。
いくらザッカスの庇護下に居て仕える者でも、自分はザッカスに負担になる様な事は、なるべく避けたい。
ふと、先程買った肩に斜めがけが出来る大きめのなめし革のバッグを買った店にあった物が頭の中に浮かぶ。
「あっ、1つだけ欲しいかも……んーーでもやっぱり自分の稼いだお金じゃなから止めときます」
「ふーん。じゃあ、こうしないかい?あたしがイスズに依頼をしようじゃないか。ここに金貨1枚ある」
取り出された1枚の金貨を五十鈴の方へ差し出されて、何だろう?とそれを見た。
「これでイスズが欲しい物を買ってきて、それとお釣りをあたしに渡す。報酬は、五十鈴が買ってきた物…なんてのはどうだい?まぁ、ちょっと変わったお遣いの依頼にはなるけど、実際にもっとつまらんお遣いの依頼とかあるんだよ」
「雑事みたいな依頼もあるんですね。でも、いいんですか?会ってまだ1日も経ってない…どこの馬の骨かわからない様な私相手にそこまでして…」
「いろんな人間を見てきたからね。それなりに人を見る目はあるつもりだよ。伊達でギルマスなんかやってるんじゃないって事さ。確かに、イスズがどういう素性でどういう訳ありか知らないけど、ギルドにゃ脛に傷があるヤツらは多いし、どうって事はないのさ。何よりあたしがあんたを気に入ったのさ」
彼女なりの気遣いが嬉しくありがたく、胸がいっぱいになり溢れる。
五十鈴の目から大粒の涙がぽろぽろと落ちると、マルグリットは優しく微笑んで抱きしめる。
「イスズ、あんたはいい子だよ」
かわいそう。気の毒。不憫。哀れ。
そんな下手な同情めいた言葉は言われたくはない。子供の頃から周りの大人たちは遠巻きからそれを言うだけで、厄介ごとは御免だ、関わりは持ちたくないと手を差し伸べてくれなかった。
それを言うことなく損得抜きで、手を差し伸べてくれたザッカスやマルグリットの存在が嬉しい。
母親の様に抱きしめてくれた胸の中で、一頻り泣いた五十鈴はゆっくりとマルグリットから離れ、指で目元を拭いながら微笑む。
「ありがとうございます、マルグリットさん。その依頼、是非受けさせて下さい」
「じゃ、早速街に戻るとするかい」
腰を上げて立つマルグリットに続いて立ち上がる五十鈴は、深呼吸をし大きく背伸びをすると「はいっ!」と返事をした。
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