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32話 深夜
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その夜。
最後の細やかな抵抗として、夕飯を終えた後今夜は眠らないぞと意気込んで椅子に座っていたのだが、やる事がない。
ザッカスを相手に他愛のない話をして過ごすのは会話が続かないので到底無理。
自分の持ち物の整理をして無理矢理時間を潰すが、大した量はないのですぐに終わってしまう。
どうしたものかと考えあぐねていると、いつの間にか五十鈴の背後にザッカスが立っていた。
「明日早い。もう寝るぞ」
後ろから耳元に顔を寄せて、冷たい低い声で囁かれ、耳殻を甘噛みされて五十鈴の身体が小さく跳ねて、噛まれた耳を手で押さえ身体を捩らせてザッカスを見る。
「まだやる事があるので、お先にどうぞ」
「……寝るぞ」
見え透いた嘘は当然見抜かられて、ベッドへと連れ込まれてしまう。
眠れない。
部屋の灯りである蝋燭の火を消し、ベッドに横になりどの位経ったのか、隣の部屋から聞こえてくる話し声と物音が大きく眠ろうにも眠れない。
寝返りをうって身体の体勢を変えたいのだが、後ろから腹部にがっしりと腕を回され、五十鈴の身体に添うように密着されて身動き出来ない。
言わば抱き枕状態。
自分の頸辺りに顔を埋めているらしく、微かに規則正しい静かな寝息が聞こえてくる。
よく寝られるなぁ…。
自分にへばり付いて眠るザッカスにある意味感心し、自分も無理にでも眠ってしまおうと、目を閉じて羊を数え始める。
数えた羊が100匹を超えた頃、一度は静かになった隣の部屋からあらぬ音と声が聞こえきた。
ひぇぇ……マジ勘弁して……。
ギシギシと軋む音と喘ぎながらの切なげな女の声。
いやいや、あれはちょっときつめのマッサージをされてるだけかも知れない。きっとそうに違いないと自分に思い込ませようと言い聞かせて、気を取り直し眠ろうと試みる。
次第に激しくなる軋む音に連れて、女の声も嬌声となり激しさも増して、露骨な言葉で何度も相手を求め始めた。
寝れる訳ないやないかーいっ!!
わたしゃ寝たいんだ、早く終わってくれ…。
てか、おっさんよく寝てられるなっ!
心の中でボヤきながら、大きな溜息を吐く。
気持ち良さげに寝息を立ているザッカスに、一瞬苛立ちを感じるが、下手に起きられると面倒な事になりそうな嫌な予感がして、そのまま起きないで欲しいとひたすら願う。
「どうした?」
五十鈴の願いは叶う事はなく、耳元で寝起きの掠れた低い声が響いた。
驚いてビクッと身体が反応するが、この状況を言葉にする事が出来ない。
隣の部屋から聞こえてくる軋む音と嬌声はますます激しくなる。
身体を強張らせて縮こまって返事がない五十鈴の様子からザッカスは、「あぁ…」と小さく呟き納得した。
「ここは連れ込み宿も兼ねてるからよくある。気にするな」
気にするなと言われて、「はい、そうですか」と言える筈もなく黙っていると、再び五十鈴を抱き直したザッカスが溜息を零すのが聞こえる。
やはりザッカスも今だに聞こえてくる音と声が邪魔で眠れなくなったのかと思った。
「抱き心地が悪い」
「えっ、そこ?違うでしょっ!」
思わず身体を起こし、声を出してツッコミを入れてしまい、慌てて自分の口を手で塞いだ。
ザッカスも肩肘をついて半身を起こす。
「こちらの声は聞こえない。力が入っていて抱き心地が悪くて眠れん。気にせず眠れるようにしてやろう」
煩いと壁でも叩いてくれるのかと思いきや、手首を掴まれると引き寄せられ、あっけなくザッカスの下に組み敷かれしまった。
悪い予感が的中したと、五十鈴の顔は引き攣る。
最後の細やかな抵抗として、夕飯を終えた後今夜は眠らないぞと意気込んで椅子に座っていたのだが、やる事がない。
ザッカスを相手に他愛のない話をして過ごすのは会話が続かないので到底無理。
自分の持ち物の整理をして無理矢理時間を潰すが、大した量はないのですぐに終わってしまう。
どうしたものかと考えあぐねていると、いつの間にか五十鈴の背後にザッカスが立っていた。
「明日早い。もう寝るぞ」
後ろから耳元に顔を寄せて、冷たい低い声で囁かれ、耳殻を甘噛みされて五十鈴の身体が小さく跳ねて、噛まれた耳を手で押さえ身体を捩らせてザッカスを見る。
「まだやる事があるので、お先にどうぞ」
「……寝るぞ」
見え透いた嘘は当然見抜かられて、ベッドへと連れ込まれてしまう。
眠れない。
部屋の灯りである蝋燭の火を消し、ベッドに横になりどの位経ったのか、隣の部屋から聞こえてくる話し声と物音が大きく眠ろうにも眠れない。
寝返りをうって身体の体勢を変えたいのだが、後ろから腹部にがっしりと腕を回され、五十鈴の身体に添うように密着されて身動き出来ない。
言わば抱き枕状態。
自分の頸辺りに顔を埋めているらしく、微かに規則正しい静かな寝息が聞こえてくる。
よく寝られるなぁ…。
自分にへばり付いて眠るザッカスにある意味感心し、自分も無理にでも眠ってしまおうと、目を閉じて羊を数え始める。
数えた羊が100匹を超えた頃、一度は静かになった隣の部屋からあらぬ音と声が聞こえきた。
ひぇぇ……マジ勘弁して……。
ギシギシと軋む音と喘ぎながらの切なげな女の声。
いやいや、あれはちょっときつめのマッサージをされてるだけかも知れない。きっとそうに違いないと自分に思い込ませようと言い聞かせて、気を取り直し眠ろうと試みる。
次第に激しくなる軋む音に連れて、女の声も嬌声となり激しさも増して、露骨な言葉で何度も相手を求め始めた。
寝れる訳ないやないかーいっ!!
わたしゃ寝たいんだ、早く終わってくれ…。
てか、おっさんよく寝てられるなっ!
心の中でボヤきながら、大きな溜息を吐く。
気持ち良さげに寝息を立ているザッカスに、一瞬苛立ちを感じるが、下手に起きられると面倒な事になりそうな嫌な予感がして、そのまま起きないで欲しいとひたすら願う。
「どうした?」
五十鈴の願いは叶う事はなく、耳元で寝起きの掠れた低い声が響いた。
驚いてビクッと身体が反応するが、この状況を言葉にする事が出来ない。
隣の部屋から聞こえてくる軋む音と嬌声はますます激しくなる。
身体を強張らせて縮こまって返事がない五十鈴の様子からザッカスは、「あぁ…」と小さく呟き納得した。
「ここは連れ込み宿も兼ねてるからよくある。気にするな」
気にするなと言われて、「はい、そうですか」と言える筈もなく黙っていると、再び五十鈴を抱き直したザッカスが溜息を零すのが聞こえる。
やはりザッカスも今だに聞こえてくる音と声が邪魔で眠れなくなったのかと思った。
「抱き心地が悪い」
「えっ、そこ?違うでしょっ!」
思わず身体を起こし、声を出してツッコミを入れてしまい、慌てて自分の口を手で塞いだ。
ザッカスも肩肘をついて半身を起こす。
「こちらの声は聞こえない。力が入っていて抱き心地が悪くて眠れん。気にせず眠れるようにしてやろう」
煩いと壁でも叩いてくれるのかと思いきや、手首を掴まれると引き寄せられ、あっけなくザッカスの下に組み敷かれしまった。
悪い予感が的中したと、五十鈴の顔は引き攣る。
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