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39 緊急事態
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そんな暢気なことをしていたからなのか、いきなり警報音が鳴った。
防護スーツの通信機だ。
= こちらマクガイ。こちらマクガイ。リュウ聞こえるか? 緊急事態だ。至急、基地に戻ってくれ。
調査隊のチャネルだ。緊急事態だと?
= こちらリュウ。了解した。すぐに帰投する。
途中で別れたマクガイたちの方向を見たら、そこでも水が噴き上がっていた。
どうやら温泉を掘り当てたらしい。
俺たちは来た時のルートを逆に辿って基地へと戻って行った。
途中、マクガイたちがボーリングしていた現場を通ったが、既に噴き上げていた熱水は止まり誰も居なかった。
ただし、帰ってみたら今度は日本基地で熱水が噴き上げていた。
間欠泉より盛大に噴き上げている。
見ると、そこは生活棟があった場所だった。だが、生活棟はそこになかった。
どうも地下から吹き出した熱水の爆風で上空に投げ出されてしまったようだ。生活棟の地下構造が湾曲しているせいもありロケットの噴射口のような働きをしたらしい。
生活棟は水蒸気ロケットに吹き飛ばされた訳だ。
* * *
= 酷いな。どうしてこうなった。
俺は、現場で指揮をしているマクガイの隣に降りて言った。
= おお、リュウ。帰ったか。全員いるな?
= ああ。問題ない。
= そうか。良かった。
= 何が起こった?
= ボーリングで熱水が出たんだが、止めたらこっちに噴き上げた。
= 地下で繋がってたのか。
= たぶんな。それより生活棟だ。
= ああ。落ちてきたら、やばいな。
= ユメノが、あの中に取り残されている。
= なに? あの生活棟にか?
= そうだ。地表に落下する前に何とかしないとまずい。
俺は上空を見上げた。
生活棟はくるくると回転したまま上昇している。重力の弱いガニメデなのでゆっくりと上昇しているが、落下すればかなりの衝撃になるだろう。
= どうするんだ?
= 何とか脱出させようと思っている。今、タイミングを計算している。
= すぐ追いかけよう。
俺は思わず言った。
= いや、追い付けないんだ。
= なに?
= ロケットじゃないと無理だ。だが、すぐに発射できるロケットはない。
= そうか。なら、俺たちが行く。
= 何? ああそうか。出来るのか?
マクガイは驚いた顔で固まったが、よく考えると可能なことに気が付いたようだ。
= 多分な。だろ? レジン。
= 急ぎましょう。
レジンは真顔で頷いて言った。思ったほど簡単ではないのか?
= よし! 行くぞ。話は通信で。
そう言って俺たちは飛び出した。
話を聞いていた俺たちのチーム全員がガニメデから離れつつある生活棟を追って飛び出した。
= こちら、リュウ。ユメノ聞こえるか?
調査隊の通信で呼びかけてみたがユメノからの応答はない。生活棟じゃ、仮眠してたのか?
= マクガイ。こちらリュウ。ユメノは応答したか?
= こちらマクガイ。まだ、一度も応答してない。だが、緊急信号も出ていないので問題ない筈だ。
= そうか。了解。
* * *
俺たちは全速で生活棟を追っているが、あまり大きくなっていない。本当に近づいているのか?
= レーダーでは、少しづつ距離は短くなっていますね。
レジンが冷静に観測して言った。
= ガニメデの脱出速度には程遠いので、慌てることはありません。捕まえてゆっくり脱出させればいいでしょう。
= なるほど。了解。
確かに、いくら重力が弱くても脱出速度に達するのは大変な筈だ。
であれば、自由落下での衝突さえ避ければ問題ない。ガニメデでは、地表でも気圧ゼロだし、上空に行ったからといって何も問題はない。
* * *
= こちらリュウ、ユメノ応答せよ。
俺は呼び続けた。
= こちらユメノ。どうしたの?
なんだか、暢気な応答が帰って来た。事態を把握していないのか?
= よく聞け。基地の地下から熱水が噴き上げて、生活棟はいま、上空に放り出されている。ユメノのいる場所だ。俺たちは今、全力で追いかけている。助け出せるから慌てなくていい。お茶でも飲んで待ってろ。
ま、お茶は無理か。
= りょ、了解。玉露を煎れて待ってるね。
うん。いい調子だ。
本当に玉露があったら、ご馳走になるとしよう。
防護スーツの通信機だ。
= こちらマクガイ。こちらマクガイ。リュウ聞こえるか? 緊急事態だ。至急、基地に戻ってくれ。
調査隊のチャネルだ。緊急事態だと?
= こちらリュウ。了解した。すぐに帰投する。
途中で別れたマクガイたちの方向を見たら、そこでも水が噴き上がっていた。
どうやら温泉を掘り当てたらしい。
俺たちは来た時のルートを逆に辿って基地へと戻って行った。
途中、マクガイたちがボーリングしていた現場を通ったが、既に噴き上げていた熱水は止まり誰も居なかった。
ただし、帰ってみたら今度は日本基地で熱水が噴き上げていた。
間欠泉より盛大に噴き上げている。
見ると、そこは生活棟があった場所だった。だが、生活棟はそこになかった。
どうも地下から吹き出した熱水の爆風で上空に投げ出されてしまったようだ。生活棟の地下構造が湾曲しているせいもありロケットの噴射口のような働きをしたらしい。
生活棟は水蒸気ロケットに吹き飛ばされた訳だ。
* * *
= 酷いな。どうしてこうなった。
俺は、現場で指揮をしているマクガイの隣に降りて言った。
= おお、リュウ。帰ったか。全員いるな?
= ああ。問題ない。
= そうか。良かった。
= 何が起こった?
= ボーリングで熱水が出たんだが、止めたらこっちに噴き上げた。
= 地下で繋がってたのか。
= たぶんな。それより生活棟だ。
= ああ。落ちてきたら、やばいな。
= ユメノが、あの中に取り残されている。
= なに? あの生活棟にか?
= そうだ。地表に落下する前に何とかしないとまずい。
俺は上空を見上げた。
生活棟はくるくると回転したまま上昇している。重力の弱いガニメデなのでゆっくりと上昇しているが、落下すればかなりの衝撃になるだろう。
= どうするんだ?
= 何とか脱出させようと思っている。今、タイミングを計算している。
= すぐ追いかけよう。
俺は思わず言った。
= いや、追い付けないんだ。
= なに?
= ロケットじゃないと無理だ。だが、すぐに発射できるロケットはない。
= そうか。なら、俺たちが行く。
= 何? ああそうか。出来るのか?
マクガイは驚いた顔で固まったが、よく考えると可能なことに気が付いたようだ。
= 多分な。だろ? レジン。
= 急ぎましょう。
レジンは真顔で頷いて言った。思ったほど簡単ではないのか?
= よし! 行くぞ。話は通信で。
そう言って俺たちは飛び出した。
話を聞いていた俺たちのチーム全員がガニメデから離れつつある生活棟を追って飛び出した。
= こちら、リュウ。ユメノ聞こえるか?
調査隊の通信で呼びかけてみたがユメノからの応答はない。生活棟じゃ、仮眠してたのか?
= マクガイ。こちらリュウ。ユメノは応答したか?
= こちらマクガイ。まだ、一度も応答してない。だが、緊急信号も出ていないので問題ない筈だ。
= そうか。了解。
* * *
俺たちは全速で生活棟を追っているが、あまり大きくなっていない。本当に近づいているのか?
= レーダーでは、少しづつ距離は短くなっていますね。
レジンが冷静に観測して言った。
= ガニメデの脱出速度には程遠いので、慌てることはありません。捕まえてゆっくり脱出させればいいでしょう。
= なるほど。了解。
確かに、いくら重力が弱くても脱出速度に達するのは大変な筈だ。
であれば、自由落下での衝突さえ避ければ問題ない。ガニメデでは、地表でも気圧ゼロだし、上空に行ったからといって何も問題はない。
* * *
= こちらリュウ、ユメノ応答せよ。
俺は呼び続けた。
= こちらユメノ。どうしたの?
なんだか、暢気な応答が帰って来た。事態を把握していないのか?
= よく聞け。基地の地下から熱水が噴き上げて、生活棟はいま、上空に放り出されている。ユメノのいる場所だ。俺たちは今、全力で追いかけている。助け出せるから慌てなくていい。お茶でも飲んで待ってろ。
ま、お茶は無理か。
= りょ、了解。玉露を煎れて待ってるね。
うん。いい調子だ。
本当に玉露があったら、ご馳走になるとしよう。
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