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42 マクガイP
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その日、マクガイチームは朝から外出せず研究棟の中にいた。
その日と言っても地球時間の事だ。ガニメデの一日は地球時間だと一週間と長い。
マクガイチームはこの日、新しい掘削ポイントを試す予定だったが、いつまでたってもぐずぐずしていた。
「そうだ! 仕事も区切りが付いたので、ちょっと記念撮影をしようか?」
マクガイが怪しい事を言い出した。一区切りついたのは俺たちのチームだが。
「いや。ほら、生活棟の拡張で温泉施設を作ったじゃないか。これは絶対後で評価されると思うんだ。完成した直後の映像を残さないのはもったいないだろう?」とマクガイが言う。
そうなのか? って、誰が評価するんだ? 確かにストレス解消にはなるとは思うが。
「まぁ、そうだな」
「じゃ~っ。ほら、発案者と一緒に写そう!」と妙に張り切るマクガイ。
「それでは、私がカメラを担当します」
「いやアスモ。副隊長がカメラマンって変だろう! 俺が撮ってやるよ」
「いや、ダメだ。リュウは絶対入れ。ああ~じゃ、三脚立てよう」とマクガイ。
妙にフットワークが軽い。
「それじゃ、私がナレーションを入れましょう」
「ユウナ、それは後でいいからインタビューしてインタビュー」とユメノが突っ込みを入れる。
「あ、そうか。えっへん。では、リュウさんにお伺いします。どうして、温泉を作ろうと思ったんですか?」
「あ? お前が『温泉があれば、毎日シャワーを好きなだけ使える』とか言ったからだけど?」
「えっ。私? こういう場合どうするの?」
「お前に聞くんじゃないの?」
「そうですね。では、私に誰かインタビューして」
「いや、違うから! リュウに聞くの!」ユメノが更に突っ込む。
「え~っ、そうだった。ええと、なんで温泉が出たんでしょう?」
「お前らが、ボーリングで温泉を掘り当てたんじゃん」
「あ~っ、そうでした」
もうグダグダだ。やっつけ本番でまともに出来る筈もない。
「もう、どうしたらいいの~?」知らんがな。
それからも、彼方此方で記念撮影したりビデオ撮影した。
「これが、飛翔モードです。スペーススーツもここまで来ました!」
エアロックの前でビデオショッピングみたいな事言ってる。これ、CMなの? 売り込みたいの?
「お前ら、なんか怪しいな。何のつもりだ? いい加減に吐け」
「ほら、マクガイがわざとらしいからバレたじゃない」
ここで、ユメノの泣きが入った。いや、全員わざとらしいけど。
「すまん。いや、お前らが転移していなくなったら、俺たちはこの状況を説明できないと思ってな」
さすがに諦めたのか汎用棟に戻るとマクガイが白状した。
「説明できない?」
「そうだ。別世界人が現れて温泉作ってくれましたなんて、普通に説明して信じてくれると思うか?」
「それ、お前の言い方がおかしいから」
「そうだが、結局はそう言うことだからな?」
「そうかなぁ」
「説明のために、なるべく転移を遅らせて欲しいけど、無理なら今の状況を説明するビデオ取るしかないと思ったんだ」とマクガイが釈明した。
「そうそう、私たちは目の前に居るから信じるしかないけど、居なかったら誰も信じないと思う」とユメノ。確かに、それはそうだな。
「そうか、じゃぁ風呂壊すか」
少し考えて俺が応じた。
「それはやめて。絶対やめて。これはガニメデに必要。これないと、もうやっていけない気がする」とユウナ。
ユウナの本気の顔を始めて見た気がする。
「そうね。これは必要よ」とユメノも賛成する。
「これは、このまま名所にすべきよ」ユウナは、ちょっと壊れ始めてるかも知れない。
「確かに、俺たちが居なくなると微妙な物になるんだな。別世界人が作ったとか言う割には中途半端な気がするし。お前らでも頑張れば十分作れそうだしな」
「えっ? いや、そんなことはないと思うぞ」予想外の展開にマクガイ、ちょっと戸惑う。
「じゃ~っ、ここの人間が逆立ちしても出来ないようなものを残しておけば、みんな信じるんじゃないか?」
「オーパーツみたいな?」アスモ、やや不安な顔。
「そ、そ~でしょうか?」とユメノ。
「そうかもしれませんね」ユウナは棒読みで言った。思考停止しているかも。
「あ、これはヤバいパターンでしょうか?」レジンが言う。
「うん、何か企んでる気がする」メリスも気付く。
「遂に来たの?」ユリ、なにそれ。
「これが、全ての原因のような気がするのですが?」シナノがあらぬことを言う。
「うん、これよね」とセリー。
「うむ。転移の素なのじゃ」とツウ姫。なにその調味料みたいなやつ。
「お前らなぁ」
まぁ、転移する気満々だけど?
「で、どうすんの?」
「ん? 普通に重力加速器を作っておく」
「え? でもそれはここで作るのは難しいのでは?」カストが言う。
「それは世界Lの重力加速器だ。世界ゼロの物だったら出来ると思う」
「ああ、あの大型の。確かに、出来るかも知れませんね」
レジンがカストに説明していた時のやり取りから言ってみたのだが、当たっていたようだ。
レジンがこう言う時は、必ず出来る。
「なに? 出来るのか?」
マクガイ、流石に驚いて詰め寄って来る。いや、俺じゃないから。作るのレジンだから。
「出来てしまうんですか?」とアスモ。
「出来ちゃうの?」とユメノ。
「出来ちゃいそう!」とユウナ。何がだよ!
まぁ、世界Lより進んでる点も多い世界だし出来ない筈はないか。
ここガニメデで作れるかどうかだけの筈だ。もっとも、本当に出来なくてもいいと思う。設計図があれば俺たちが居た十分な証拠になるだろう。回転しない生活棟は憧れだから、そのうち完成させるに違いない。
* * *
それから、俺たちは重力加速器の設計と製作に時間を使った。
もちろん、多重世界通信機の作り方も残しておく。転移発光セルは出来ているし特にこの世界でやるべきタスクはもう残っていない。
そして、設計が終わり製作に入った翌日に俺たちは転移した。
その日と言っても地球時間の事だ。ガニメデの一日は地球時間だと一週間と長い。
マクガイチームはこの日、新しい掘削ポイントを試す予定だったが、いつまでたってもぐずぐずしていた。
「そうだ! 仕事も区切りが付いたので、ちょっと記念撮影をしようか?」
マクガイが怪しい事を言い出した。一区切りついたのは俺たちのチームだが。
「いや。ほら、生活棟の拡張で温泉施設を作ったじゃないか。これは絶対後で評価されると思うんだ。完成した直後の映像を残さないのはもったいないだろう?」とマクガイが言う。
そうなのか? って、誰が評価するんだ? 確かにストレス解消にはなるとは思うが。
「まぁ、そうだな」
「じゃ~っ。ほら、発案者と一緒に写そう!」と妙に張り切るマクガイ。
「それでは、私がカメラを担当します」
「いやアスモ。副隊長がカメラマンって変だろう! 俺が撮ってやるよ」
「いや、ダメだ。リュウは絶対入れ。ああ~じゃ、三脚立てよう」とマクガイ。
妙にフットワークが軽い。
「それじゃ、私がナレーションを入れましょう」
「ユウナ、それは後でいいからインタビューしてインタビュー」とユメノが突っ込みを入れる。
「あ、そうか。えっへん。では、リュウさんにお伺いします。どうして、温泉を作ろうと思ったんですか?」
「あ? お前が『温泉があれば、毎日シャワーを好きなだけ使える』とか言ったからだけど?」
「えっ。私? こういう場合どうするの?」
「お前に聞くんじゃないの?」
「そうですね。では、私に誰かインタビューして」
「いや、違うから! リュウに聞くの!」ユメノが更に突っ込む。
「え~っ、そうだった。ええと、なんで温泉が出たんでしょう?」
「お前らが、ボーリングで温泉を掘り当てたんじゃん」
「あ~っ、そうでした」
もうグダグダだ。やっつけ本番でまともに出来る筈もない。
「もう、どうしたらいいの~?」知らんがな。
それからも、彼方此方で記念撮影したりビデオ撮影した。
「これが、飛翔モードです。スペーススーツもここまで来ました!」
エアロックの前でビデオショッピングみたいな事言ってる。これ、CMなの? 売り込みたいの?
「お前ら、なんか怪しいな。何のつもりだ? いい加減に吐け」
「ほら、マクガイがわざとらしいからバレたじゃない」
ここで、ユメノの泣きが入った。いや、全員わざとらしいけど。
「すまん。いや、お前らが転移していなくなったら、俺たちはこの状況を説明できないと思ってな」
さすがに諦めたのか汎用棟に戻るとマクガイが白状した。
「説明できない?」
「そうだ。別世界人が現れて温泉作ってくれましたなんて、普通に説明して信じてくれると思うか?」
「それ、お前の言い方がおかしいから」
「そうだが、結局はそう言うことだからな?」
「そうかなぁ」
「説明のために、なるべく転移を遅らせて欲しいけど、無理なら今の状況を説明するビデオ取るしかないと思ったんだ」とマクガイが釈明した。
「そうそう、私たちは目の前に居るから信じるしかないけど、居なかったら誰も信じないと思う」とユメノ。確かに、それはそうだな。
「そうか、じゃぁ風呂壊すか」
少し考えて俺が応じた。
「それはやめて。絶対やめて。これはガニメデに必要。これないと、もうやっていけない気がする」とユウナ。
ユウナの本気の顔を始めて見た気がする。
「そうね。これは必要よ」とユメノも賛成する。
「これは、このまま名所にすべきよ」ユウナは、ちょっと壊れ始めてるかも知れない。
「確かに、俺たちが居なくなると微妙な物になるんだな。別世界人が作ったとか言う割には中途半端な気がするし。お前らでも頑張れば十分作れそうだしな」
「えっ? いや、そんなことはないと思うぞ」予想外の展開にマクガイ、ちょっと戸惑う。
「じゃ~っ、ここの人間が逆立ちしても出来ないようなものを残しておけば、みんな信じるんじゃないか?」
「オーパーツみたいな?」アスモ、やや不安な顔。
「そ、そ~でしょうか?」とユメノ。
「そうかもしれませんね」ユウナは棒読みで言った。思考停止しているかも。
「あ、これはヤバいパターンでしょうか?」レジンが言う。
「うん、何か企んでる気がする」メリスも気付く。
「遂に来たの?」ユリ、なにそれ。
「これが、全ての原因のような気がするのですが?」シナノがあらぬことを言う。
「うん、これよね」とセリー。
「うむ。転移の素なのじゃ」とツウ姫。なにその調味料みたいなやつ。
「お前らなぁ」
まぁ、転移する気満々だけど?
「で、どうすんの?」
「ん? 普通に重力加速器を作っておく」
「え? でもそれはここで作るのは難しいのでは?」カストが言う。
「それは世界Lの重力加速器だ。世界ゼロの物だったら出来ると思う」
「ああ、あの大型の。確かに、出来るかも知れませんね」
レジンがカストに説明していた時のやり取りから言ってみたのだが、当たっていたようだ。
レジンがこう言う時は、必ず出来る。
「なに? 出来るのか?」
マクガイ、流石に驚いて詰め寄って来る。いや、俺じゃないから。作るのレジンだから。
「出来てしまうんですか?」とアスモ。
「出来ちゃうの?」とユメノ。
「出来ちゃいそう!」とユウナ。何がだよ!
まぁ、世界Lより進んでる点も多い世界だし出来ない筈はないか。
ここガニメデで作れるかどうかだけの筈だ。もっとも、本当に出来なくてもいいと思う。設計図があれば俺たちが居た十分な証拠になるだろう。回転しない生活棟は憧れだから、そのうち完成させるに違いない。
* * *
それから、俺たちは重力加速器の設計と製作に時間を使った。
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そして、設計が終わり製作に入った翌日に俺たちは転移した。
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