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25 三世界の事情
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「この三つの世界だが、強い連携を保っていられればいいんだが」
お茶を飲んで、ほっとした後に意次がため息交じりに言った。
「仲が悪いんですか?」
上条絹が意外に思ったのか、思わず聞いた。
「ああ? うん、仲が悪いというか、思うようにいってないというか」
意次は、奥歯に物の挟まったような言い方をした。
「このところ、あまり連絡がとれてないんだよ」と意次。
「連絡って、遷移でしょ?」と絹。
「そうだな。そうなんだが、この遷移技術を持ってるのは俺達第一の世界だけなんだ」
さらに、意次は意外なことを言った。
「えっ? どうして?」と俺。
高い文明を維持してる第三の世界はどうしたんだ?
「意外だろ? 俺も不思議で聞いてみたが、もともとこの『共感遷移』は『共感転移』のサブセットなんだそうだ」
『共感遷移』が『共感転移』のサブセット? 世界を渡った技術だよな。
「そうなんですか!」
「元々は『共感転移』で別世界に移動していたんだ。ただ、あるときから『共感転移』が使えなくなった」
「えっ? 第一世界で『共感転移』を使えなくなったんですか?」
「それが違うんだ。全部の世界で使えなくなった。理由は不明だ」
「それは一大事ですね」
「そうだ。そこで俺達が開発したのが『共感遷移』なんだ。これは第一世界の神海族しか使って無い」
「第三の世界でも使えそうだけど。最も高い文明を持っているんでしょ?」と俺は言った。
「そうなんだがな。第三世界ではずっと『共感転移』を回復させる研究をしている。ただ、原因は『原初の星』にあるらしくてな」
意次も良く分からないという顔で言った。
「異常な状態なんでしたっけ?」と俺。
「そうだな」
「『共感転移』を元に戻すために『原初の星』へ行きたいが、『共感転移』出来ないというジレンマに陥ってる訳ですね」
「『共感転移』に必要な何らかのファクターが失われたのかしら?」と上条絹。
「なるほど。『原初の星』に何かあるのかな?」
「そうね。興味深いわね!」と絹。
「それで、第三世界の彼らは共感遷移しないんですか?」
「そうだ。彼らは『共感転移』の回復に集中しているからな。遷移技術は導入しなかった」
「それじゃ、この神海三世界の連携はどうなるんです?」
「第一世界に頼りきりだ。だから風前の灯なんだ」
第一世界の共感エージェントは俺達だけだもんな。意次は、残念そうに言った。
* * *
神海三世界の連携が無くなるということは、つまり故郷の世界の復興は絶望的ということだ。
「いいんですか?」
「いい訳はないだろう。だが、それが現状なんだ」と意次。
見ると、今宮麗華も悲しそうな顔をしていた。夢野妖子にしてもそうだ。
「なんとかしたいわね」と上条絹が熱っぽく言った。ちょっと意外だ。
「うん、俺もほっといていい気がしない」
「そうだな。俺もそう思う。何故だろうな、元々外部の人間だった俺たちが言うのも可笑しいんだが」
意次は苦笑いして言う。
「ああ、私は学術的な興味が第一よ。神海一族への思いは深くないもの」と絹は正直に言った。
さすが、物理科の特待生だけはある。
「俺は……俺も、そういう興味はあるな。それだけじゃないけど」
そう言って、麗華を見た。麗華は微妙に笑った。
「もちろん、私も友達のことは気がかりだよ」と言って上条は妖子を見た。
今度は、妖子がちょっと笑った。
「外部の人達がこんなに言ってくれてるのに、情けないわね」と麗華。
「ホントですね」と妖子。
二人の神海一族の人間はそう言うが、各世界にも思惑があるのだろう。
特に第三世界などは高い技術を維持しているというから『遷移』も出来ない筈はないと思う。
もしかすると俺たちのように直系でない人間を入れたくないのかも知れない。あるいは『転移』技術を失ったことで自信を無くしてしまったんだろうか? その状態でモチベーションを保つのは難しいだろうとは思う。
「まぁ、別世界遷移する度に、その辺の事は話してるんだけどな。担当の者はそれなりにやる気はあるんだが、一族を引っ張るのは簡単じゃないんだろう」と意次は言う。
確かに、集団としての方向性を変えるのは難しいんだろう。
この日のレクチャーは、別世界遷移についてのテクニカルな手順などを教えてもらって終わりとなった。
* * *
そんなことで、別世界遷移については神海三世界の連携自体がミッションであることがわかった。
もともと、別世界であまり依存していないから別世界遷移が必要な依頼も無いからな。それもあって連携が消えつつあるのだが。
「私の研究論文のテーマにしたいくらいね!」
上条絹が息まいた。
何故かやる気になっている。研究者魂に火が付いたのか? まぁ、なんとなく以前からこういう奴だとは思っていた。
「論文にするなよ。まぁ、うちの学園村では受けるけど外に発表はできないからな!」
「それはそうね。そこが残念なところよ」
まぁ、上条絹はそう言うが、これは科学のテーマというより、その前の政治の話、あるいは民族の文化の話だからな。下手なことは出来ないのも確かだ。
「まぁ、民族全体の話は俺達の仕事じゃないだろ」
実際、一族に入ったばかりだし。
「そうね。連絡役はするとして。私達で出来ることと言ったら、研究者の連携の手伝いくらいかしらね」なるほど。
「それは、言ってみてもいいかもな。まぁでも、学生だけど」
「そうね」
とりあえず、民族の運命より学術的な興味が先行する俺達だった。
お茶を飲んで、ほっとした後に意次がため息交じりに言った。
「仲が悪いんですか?」
上条絹が意外に思ったのか、思わず聞いた。
「ああ? うん、仲が悪いというか、思うようにいってないというか」
意次は、奥歯に物の挟まったような言い方をした。
「このところ、あまり連絡がとれてないんだよ」と意次。
「連絡って、遷移でしょ?」と絹。
「そうだな。そうなんだが、この遷移技術を持ってるのは俺達第一の世界だけなんだ」
さらに、意次は意外なことを言った。
「えっ? どうして?」と俺。
高い文明を維持してる第三の世界はどうしたんだ?
「意外だろ? 俺も不思議で聞いてみたが、もともとこの『共感遷移』は『共感転移』のサブセットなんだそうだ」
『共感遷移』が『共感転移』のサブセット? 世界を渡った技術だよな。
「そうなんですか!」
「元々は『共感転移』で別世界に移動していたんだ。ただ、あるときから『共感転移』が使えなくなった」
「えっ? 第一世界で『共感転移』を使えなくなったんですか?」
「それが違うんだ。全部の世界で使えなくなった。理由は不明だ」
「それは一大事ですね」
「そうだ。そこで俺達が開発したのが『共感遷移』なんだ。これは第一世界の神海族しか使って無い」
「第三の世界でも使えそうだけど。最も高い文明を持っているんでしょ?」と俺は言った。
「そうなんだがな。第三世界ではずっと『共感転移』を回復させる研究をしている。ただ、原因は『原初の星』にあるらしくてな」
意次も良く分からないという顔で言った。
「異常な状態なんでしたっけ?」と俺。
「そうだな」
「『共感転移』を元に戻すために『原初の星』へ行きたいが、『共感転移』出来ないというジレンマに陥ってる訳ですね」
「『共感転移』に必要な何らかのファクターが失われたのかしら?」と上条絹。
「なるほど。『原初の星』に何かあるのかな?」
「そうね。興味深いわね!」と絹。
「それで、第三世界の彼らは共感遷移しないんですか?」
「そうだ。彼らは『共感転移』の回復に集中しているからな。遷移技術は導入しなかった」
「それじゃ、この神海三世界の連携はどうなるんです?」
「第一世界に頼りきりだ。だから風前の灯なんだ」
第一世界の共感エージェントは俺達だけだもんな。意次は、残念そうに言った。
* * *
神海三世界の連携が無くなるということは、つまり故郷の世界の復興は絶望的ということだ。
「いいんですか?」
「いい訳はないだろう。だが、それが現状なんだ」と意次。
見ると、今宮麗華も悲しそうな顔をしていた。夢野妖子にしてもそうだ。
「なんとかしたいわね」と上条絹が熱っぽく言った。ちょっと意外だ。
「うん、俺もほっといていい気がしない」
「そうだな。俺もそう思う。何故だろうな、元々外部の人間だった俺たちが言うのも可笑しいんだが」
意次は苦笑いして言う。
「ああ、私は学術的な興味が第一よ。神海一族への思いは深くないもの」と絹は正直に言った。
さすが、物理科の特待生だけはある。
「俺は……俺も、そういう興味はあるな。それだけじゃないけど」
そう言って、麗華を見た。麗華は微妙に笑った。
「もちろん、私も友達のことは気がかりだよ」と言って上条は妖子を見た。
今度は、妖子がちょっと笑った。
「外部の人達がこんなに言ってくれてるのに、情けないわね」と麗華。
「ホントですね」と妖子。
二人の神海一族の人間はそう言うが、各世界にも思惑があるのだろう。
特に第三世界などは高い技術を維持しているというから『遷移』も出来ない筈はないと思う。
もしかすると俺たちのように直系でない人間を入れたくないのかも知れない。あるいは『転移』技術を失ったことで自信を無くしてしまったんだろうか? その状態でモチベーションを保つのは難しいだろうとは思う。
「まぁ、別世界遷移する度に、その辺の事は話してるんだけどな。担当の者はそれなりにやる気はあるんだが、一族を引っ張るのは簡単じゃないんだろう」と意次は言う。
確かに、集団としての方向性を変えるのは難しいんだろう。
この日のレクチャーは、別世界遷移についてのテクニカルな手順などを教えてもらって終わりとなった。
* * *
そんなことで、別世界遷移については神海三世界の連携自体がミッションであることがわかった。
もともと、別世界であまり依存していないから別世界遷移が必要な依頼も無いからな。それもあって連携が消えつつあるのだが。
「私の研究論文のテーマにしたいくらいね!」
上条絹が息まいた。
何故かやる気になっている。研究者魂に火が付いたのか? まぁ、なんとなく以前からこういう奴だとは思っていた。
「論文にするなよ。まぁ、うちの学園村では受けるけど外に発表はできないからな!」
「それはそうね。そこが残念なところよ」
まぁ、上条絹はそう言うが、これは科学のテーマというより、その前の政治の話、あるいは民族の文化の話だからな。下手なことは出来ないのも確かだ。
「まぁ、民族全体の話は俺達の仕事じゃないだろ」
実際、一族に入ったばかりだし。
「そうね。連絡役はするとして。私達で出来ることと言ったら、研究者の連携の手伝いくらいかしらね」なるほど。
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