異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

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神界派閥抗争編

76 リュウジ使徒の力を剥奪される

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 後日、俺は後宮で魔法ドリンクのことを嫁たちに披露していた。

「素晴らしいですわ。効果が一日なのが残念ですけど、これは安全を確保するためですから仕方ありませんわね」セレーネが絶賛してくれた。
「いや、むしろ一日で良かったかも。分かりやすいし、必要なら毎日飲めばいいわけだから」
「確かに、そうですわね。管理しやすいですものね」うん。セレーネは理解が早い!

「でも、魔王化リングがあれば使徒レベルまで強化出来るって、ちょっと一般には出せないかもね?」とニーナ。
「そうなんだよ。簡単に使わせるわけにはいかないかもな。ただ、ある程度制限出来れば、これは革新的な製品になる」

「ちょっと、どんな影響が出るか予想もつきませんわ」とセレーネ。
「そう。そういう意味でも慎重になる必要がある。何処に影響が出るかを十分見極めないと」
「ええ」

「魔王化リングにしても、管理するのは難しいんじゃ?」とニーナ。
「魔王化リングを作れる人は少ないと思うけど、魔道具をいじれる人なら作れるからヤバいね。これ、極秘じこーなんじゃ?」ミルルも心配らしい。
「そうなんだよ」ミルルまでいかなくても作れる人は出るだろうからな。
「そうよね」とニーナも難しそうな顔。

「まぁ、神石が自由に手に入らないから、まだいいんだが」
「えっ? 神魔モジュールに入ってるよね?」とニーナから突っ込みが入る。
「神魔モジュールから神石は取り出せないんだろ?」
「ううん。普通は分解出来ないようになってるけど、やる気になれば出来るよ」とミルル。
「それはそうか。じゃ、作れるな」

 魔王化リングは厳格に管理するとしても、全てを管理することは無理そうだ。逆に制限せずに一般にばら撒いちゃうほうが、悪用されないかも知れない。ただ、急には無理だな。魔法ドリンクが一般常識になってからだろう。

 この話を横で聞きながら、七人の侍女隊は神妙な顔をしていた。現状、魔王化リングの使用を許されているのは、侍女隊だけだからだ。

「我々の責任は重大なのだ」とミゼール。
「そうですね、隊長」とシュリ。
「この指輪。わたくし達、侍女隊にしか許されていないのですわね」ミリスも真剣な顔だ。
「わらし、きんちょ~してきた」パメラもか。
「クレオは、頑張るの」
「わたしも、頑張りますの」とマナ。
「そうだ! 侍女隊に不可能はない! この後宮を守るのだ!」とスノウ。
「そうだな。スノウの言う通りだな」ミゼールの琴線に触れたのか、ひどく感激している。

 いや、後宮専属とか決めてないけど。まぁ、当面の仕事はそれでいいか。

  *  *  *

 ぽっ

 そんな話をしていたらアリスが顕現して来た。

「はぁ。なんだか、雲行きが怪しくなってきたわ」

「どうした?」
「私、例の件で神界評議会に出てたんだけど、地上界に頻繁に顕現している担当神は私情が入るから審議に参加出来ないってことになったの」
「え~っ?」

「もう、強硬派は、とんでもないわね。そりゃ、私情入るわよ。入らない担当神って遊んでるだけじゃない!」まぁ、始めはアリスもそうだったんだけど。
「そうだけど!」やばい、そんな目で見ないで。思わず思っちゃっただけだから。悪気はないから。

「神魔研究所のレポートとか見てもらえたの?」俺は聞いてみた。
「一応はね。でもあまり信用されてない感じ。『下界の研究所』って言い方をされたわ」眉間の血管が浮きそう。神なので白いけど。

「なんだ、そりゃ。結局、真実かどうかじゃなくて、自分たちの主張に合ってるかどうか、だけなんだな」俺もちょっと腹が立ってきた。
「そうみたいね。呆れるわ」いつになくアリスが怒っている。こんなアリス初めて見た。

 ぽっ

「まったく、信じられないわ」えっ? イリス様も顕現して来た。

 ぽっ

「我を、誰だと思ってるのだ!」ウリス様!

 ぽっ

「失礼しちゃうわね! あいつら」エリス様も?

 女神様、みんなですか?

「お姉様達まで?」とアリスも驚く。

「それがねアリス。わたしたち神化リング持ってるでしょ? これを持っている神は、使徒リュウジに加担してるってことになったのよ。全員審議から外されたわ」
「えええっ? そんな!」

 他にもルセ島で神化リングを渡した神様とかいるから、ごっそり評議会から外されたかも。そもそもリゾートに頻繁に顕現してるからダメか? 懐柔作戦が裏目に出たか?

 そこへピルーセが飛び込んで来た。

「大変です。私達、研究室から追い出されます」ピルーセが叫ぶように言った。
「なにっ?」
「反神界の『エネルギー革命の研究』は即刻中止、研究資料は没収、使徒は全員引き上げだそうです。今、執行官達が来ています」とピルーセ。

「すぐ行く。みんなはここに居てくれ。俺は研究室に飛ぶ」
「分かったわ」とニーナ。

 俺はピルーセと、研究室へ飛ぼうとした……が、出来なかった。

「と、飛べない」

 俺が慌てていると、そこへ見知らぬ男が現れた。

「お静かに願います」

  *  *  *

 突然現れた色白で細身の男は、抑揚のない声で言った。

「私は神界評議会執行官シュエルです。これより評議会の暫定措置をお伝えします」

 有無を言わせぬと言うことのようだ。
 イリス様達も固唾を飲んで見守っている。

「神界評議会は以下の通り決定いたしました。『惑星リセットの審査完了まで、使徒リュウジの使徒としての能力をはく奪するものとする。また、リュウジ配下の使徒も同様とする』以上です」
「なっ」
「そんな」とアリス。
「まさか」とニーナ。

 どうやらリミッターをかけたようだ。それで飛べなかったんだ。既に執行されてる訳だ。

 すると、使徒ピルーセがそっと俺の後ろから近づいてきて俺の手に何かを渡した。

「ああ、そうそう、使徒ピルーセ。あなたも即刻神界にお戻りください」見つかってるし。

「わかった。ごめんリュウジさん」ピルーセは、そう言うと神界へ戻っていった。

「それから使徒リュウジの奥方様は全員神界へお招きしろとの事でしたので、準備をお願いします」
「なんだと!」

 俺は思わず叫んでいた。

  *  *  *

 イリス様の使徒テイアさんも思わず嫁達を守ろうと前へ出た。
 侍女隊も嫁達をかばうように回りを囲んで壁を作った。

「なにか? 神界の決定に不服なのですか? 私は、使徒全員に評議会の指示を伝えているだけです」
「ちょっと、あなた。そんな権利はないハズだわ」とイリス様が抗議した。

「おや、これは上級神様とも思えない発言ですね。執行官に対する反抗は、後で問題になりますよ」
「ふざけないでよ。今、大事な時期なのよ。そんなこと執行官だって許されるわけないでしょ」とアリス。
「そうだ、我は絶対に阻止してやるのだ」とウリス様。ちょっと、何かしてるかも。
「絶対許せない!」エリス様もいつも見せない表情で言った。

 俺は手の中のものを見た。そして、封を開け、迷わず飲み込んだ。
 神力がほとんど切れて頼りない感触が消え、体中に魔力がみなぎってくるのが分かった。
 念のため魔王化リングを指にはめ、俺は嫁達の前に出た。
 何かを感じ取ったのか、執行官は二、三歩後退したかと思ったが迷わず何事かつぶやいた。

「俺の嫁には一切、手を触れさせない!」

 嫁達を背に、俺は執行官と対峙した。

「あ、あくまで抵抗するのでしたら、こちらも実力行使となります」執行官は焦った声で言った。
「やってみろっ」俺は手加減しないぞ。

 既に膨大な魔力場が俺の体から吐き出されていた。
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