異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう

文字の大きさ
95 / 189
南北大陸編

95 神界の鬼教官現る1

しおりを挟む
 ついに来た。
 神界教育神高等教官様から連絡があったのだ。もちろん頭の中に。

 それで、指定された時刻に執務室で待っていたのだが……来ない! いや、教官なんだから時間厳守でしょ普通。電車遅れてないよ?

 今日は来ないのかと思ったら、一時間くらい過ぎてから来た。

 ぽっ

「ごっみ~ん、待った?」何こいつ。そりゃ、待ってるよ。
「いえ、今来たことろ……のわけないし。俺んちだし」
「だよね~っ。ごめんって」

 なんだろう、妙に馴れ馴れしい。ま、いっか。

「はいはい。じゃ、始めてください」
「了解。はいこれ。神界ルールブックと教化ドリンク」
「教化ドリンク?」魔法ドリンクなら知ってるが。神界って、なんでもドリンクにするの流行ってる?

「別に流行ってないよ」何故、心を読める?
「教官だから」
「特権なの?」
「うん。今だけね」
「了解」

「で、まずは教化ドリンク飲んじゃって」
「これ、怪しいものじゃないですよね?」
「教官を疑うの?」
「だって、思いっきり疑わしい教官だし」

「なになに? 遅れてきたら?」
「いえ、ゴスロリだから」

「あれ~っ? そなの。これ君に合わせて着たつもりだったんだけど変?」
「あ~、それってタブレット見て来たってこと?」
「そう、それで遅くなっちゃって」それ、単にアニメ見てて遅れただけなんじゃ?

「なんだ、アリスも言っといてくれればいいのに。あ、それと、あの中にあるからと言って俺の趣味とは限りませんからね? 単に、集めてただけなので」
「あ、そうなんだ。ふ~ん。これ、嫌いなの?」
「いや、そういうわけでは」
「好きなんだ」
「もういいから、始めてください」

「だから、早くドリンク!」
「分かりました。ぐびっぐびっ。ふ~、まずい~っ。二度と飲まない!」
「うん、思いっきり不味いよね」

 何で不味いままなんだろ。クレーム入れないからか?

「二度目はないから安心して」

 そう言うことね。新米神を労わる気持ちはないのか? まぁ、そのあと数千年も神やるから、そのくらい何でもないのか。

「ドリンクを飲んだところで、まずは私の紹介ね。名前は;あlsk23。どう? ちゃんと聞こえたでしょ?」

「あ、はい。でも、;あlsk23って、ああ、言える。でも、なんか変だな」これ、ドリンクの効果なのか?

「うん、神界標準語だからね。こっちの言葉では、ちゃんと発音できないし」
「こんな言語知らなかったなぁ」

 っていうか、発声しない言語なのか? 脳内パターンと言うべきかも。
 これはたぶん感情も表現するっぽい。言語で感情を表現するのは難しいが、これなら表現できるようだ。
 まぁ、そりゃ音声にならないな。つまり、脳の左右両方を使う言語ということだ。嘘をつくことが難しいという意味では、神に相応しい言語かも知れない。

「君は多言語の世界から来たんだよね? でもこの言葉は人間の言葉じゃないから発音出来ないんだよ。頭の中の会話でしか使えないようなものなんだ。一応疑似的に発声できるようにしてるだけ」

「なるほど。こう言うことだったんだ。これなら、系統以外の神と会話しない意味がわかる。音声だけでは、不十分な訳ですね。神としては」

 人間じゃないというか、動物でもない気がする。もとは宇宙生命体の言語だったとか?

「そうね。特に、君みたいに系統外の神様や使徒と会話しようとすると不便かもね」

「究極の縦割りか。系統外の神様と話さないんですか?」
「ああ、普通は共通上位神まで遡って話すのよ」

 上位神が中継するのかよ。

「うわっ、そうなると大事な事しか話せないな」
「そうね。三つ上の上位神と話す時なんか、緊張するわよ」
「でしょうね」

「でも最近神魔フォンが出来たから、違ってきたけど」
「ああ、そういえば、そんな事言われたかも。別の神様と話せなくて不便だったって」
「うん、だから、この神魔フォンは革命なんだよ! 私も使ってる。神界標準語を音声に変換できないところが残念ね」

 教官は、ポケットから出して俺に見せた。
 確かに使い込んでそう。ストラップまで付いてるし。

「疑似的に発声してる名前じゃ通じないんじゃ?」
「ううん、一応通じるよ。疑似音を覚えてるから。ただ、ちょっと分かりにくいよね。音声だと」

 そう言いことなら、神界用の神力フォンは改良の余地があるな。
 神力で会話できるなら神力でそのまま接続出来そうだけど、女神カリスや女神キリスが言わないところを見るとなにか難しい理由があるんだろうな。

「俗名流行りそう」
「もう流行ってるよ。ルセ島で特に」まじか。

「あ、そうだ。地上界で遊ぶなら俗名付けます?」
「へ? あ、そうね。うんいいね」
「ええと、クリスの次だから、女神ケリス様で」
「教育の女神ケリスか。わかった」

「あ、それで俺の教育は?」
「うん? 能力は一覧に追加されてるでしょ?」
「あ、なるほど。あまり変化はないっぽいな。あ、『神の継承』って知らない」

「ああ、それは神の能力の象徴だね。眷属を作る力。下位の神ならば配下に、人間なら使徒に出来る。神力リンクの操作や神力の視覚化もこの力ね」

「ああ、『眷属化』は使いました。『神の継承』の機能なんだ。なるほど。使徒の時、これが無かったのに、使徒が作れたのが謎だけど」

「えっ? それ本当? っていうか、眷属化も使えたの? ドリンク飲む前に? そんなはずはないんだけどな」
「えっ? だって、『神眼』って表示されてたし。もう、女神様を眷属化しちゃったし」

「え~っ。それ、私が来た意味ないじゃん」
「あ、でも、だから完全じゃなかったみたいです。『神の継承』を知らなかったし」

「なんか君、変だね? 使徒になる前に既に神の領域に居たとしか思えないんだけど」
「ああ、第一神様も俺を見て『神の筈だ』と言ってましたね」

「そう。なら、そうなんでしょうね」

 女神ケリスは、そういって納得したようだ。いや、それじゃ納得できないんけど? それで、いいの? そこから、神界探偵の仕事が始まったりしないのか?

「はぁ」
「あとは大体分かるんじゃない? 使徒を経験してるから見当はつくでしょ?」

 なんか、ちょっとノリが軽い気がする。

「そうですね。基本、バージョンアップなんですね」
「そう。例えば『神の眼』は視野が広がったでしょ?」
「そう! 千里眼は不便だったんですよ」
「でしょ?」女神ケリスはどや顔で言う。

「『神の検索』は、神界情報の参照権限が強化されてる。第二神だから、制限は殆どない筈」
「そうなんだ」

「『神の透視』のスキャンは、あまり変化ないけど。神界の物にも使えるよ」
「おお、なるほど」

「基本、神に与える能力は神界で使うためのものだから地上界ではあまり使えないものなんだけど、君は使徒を経験してるから特別だねっ」

「神様は、普通地上界に顕現しませんもんね」
「そう。担当神はね。これで大体分かったかな?」

「そうですね。あ、神界のルールとかは?」
「それ、既に頭に入ってるでしょ? 本は形式上残ってるだけだから」

「あ~っ。でも、これ読まないとダメっぽいですね」
「それはそうよ。記憶は必ず感情と共に記録されるから。少しずつ読んでね」

「わかりました。あ、あと名前とか」
「ああ、君の場合はリュウジのままでいいって。その名前で神界評議会で話題にしちゃったからだって」
「なるほど。確かにね。じゃ、逆に俺の場合は俗名が空きになってるんだ。かっこいい名前考えちゃおうかな? 二つ名か?」
「あはは。面白い事考えるね!」

「そうですか?」
「そう、君が始めたこと、みんな面白いよね。俗名もそうだけど。南国のリゾートも面白かったよ! サイクリングとか超楽しかった!」
「そりゃ、良かった」行ったんだ。

「これで、もう教育完了かな?」
「そうですか? あと『神の兆』とかありますけど」
「あ、いっけな~い。危なかった。てへぺろ」

 なんだろ~っ、ちょっとムカついた。

「まぁ、勝手に動いてる能力だから、やることないけどね。説明だけ」

「勝手に?」
「そう、危険を感知して自動的に防御フィールドを展開する能力だよ。ただ、絶対じゃない。ビーム攻撃は仮想物質の体にダメージ与えちゃう」

「仮想物質の体は治癒すればいいんですか?」
「『神の顕現』で造る体だから、作り直すだけ。治癒じゃないのよ。神だから当然不死身だし。ただ、修復するまで多少時間が掛かって使えなくなるから守るのよ」

「なるほど。でも、俺の場合はかなり人間だから治癒も必要ですよね?」
「ああ、そうね。両方必要だね! なるほど勉強になるね!」
「教官が勉強してどうすんですか!」
「ふふふ。これで全部かな?」
「そうですね」


<女神ケリス>

イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。 そして、ショック死してしまう。 その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。 屋敷を逃げ出すのであった――。 ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。 スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

濡れ衣を着せられ、パーティーを追放されたおっさん、実は最強スキルの持ち主でした。復讐なんてしません。田舎でのんびりスローライフ。

さら
ファンタジー
長年パーティーを支えてきた中年冒険者ガルドは、討伐失敗の責任と横領の濡れ衣を着せられ、仲間から一方的に追放される。弁明も復讐も選ばず、彼が向かったのは人里離れた辺境の小さな村だった。 荒れた空き家を借り、畑を耕し、村人を手伝いながら始めた静かな生活。しかしガルドは、自覚のないまま最強クラスの力を持っていた。魔物の動きを抑え、村の環境そのものを安定させるその存在は、次第に村にとって欠かせないものとなっていく。 一方、彼を追放した元パーティーは崩壊の道を辿り、真実も勝手に明るみに出ていく。だがガルドは振り返らない。求めるのは名誉でもざまぁでもなく、ただ穏やかな日々だけ。 これは、最強でありながら争わず、静かに居場所を見つけたおっさんの、のんびりスローライフ譚。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...